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相続対策・遺産整理

生前贈与を活用した対策

相続対策には生前贈与が効果的と聞きましたが、生前贈与の効果的な活用法について教えてください。

ポイント

相続税の課税が免れない人は、贈与税の基礎控除額以上の贈与を着実に毎年実行するようにします。

  • 生前贈与による相続税対策は、数ある節税対策の中でも最もオーソドックスな対策といえます。一回あたりの節税効果は小さいものの、毎年繰り返して実行すればその効果は蓄積され大きなものとなります。
  • この対策は、(1)比較的簡単に実行に移せる、(2)税制改正などの影響も受けにくいなどローリスクである、(3)専門家を必ずしも必要としないのでローコストであるなどの理由で多くの人が生前贈与による対策を実行しています。
  • しかし、毎年110万円(贈与税の基礎控除額以内)の贈与を実行している人がいますが、これは相続税対策としての贈与としては不十分といえます。110万円以内の贈与は、将来相続税が課税されない人が行う対策であって、相続税から免れられない資産家の人は最低でも310万円以上の贈与を実行すべきです。これは、贈与額が310万円以下であれば、贈与税が最低の10%の適用税率の範囲以内での贈与となり、相続税の最低税率も10%であり、贈与税は20万円課税されることとなりますが、軽い贈与税負担で多くの財産を生前に移転することが可能となります。また、470万円(※)を贈与すると47万円(※)の贈与税が課せられますが、贈与した金額に対して10%の税負担で済みます。(※18才以上の直系卑属の場合には530万円の贈与で53万円の贈与税となります。)
  • 令和5年度税制改正によって暦年贈与課税については、相続又は遺贈により財産を取得した方が、その相続開始前7年以内(改正前は3年以内)にその相続に係る被相続人から暦年課税による贈与により財産を取得したことがある場合には、その贈与により取得した財産の価額(その財産のうち相続開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとされます。
  • 令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。具体的な贈与の時期等と加算対象期間は次のとおりです。
贈与の時期 加算対象期間
~令和5年12月31日 相続開始前3年間
令和6年1月1日~ 贈与者の相続開始日
令和6年1月1日~令和8年12月31日 相続開始前3年間
令和9年1月1日~令和12年12月31日 令和6年1月1日~相続開始日
令和13年1月1日~ 相続開始前7年間
  • そのため、相続又は遺贈によって財産を取得しない方(孫や子の配偶者など)に対する贈与については、生前贈与加算の対象とならないことから、贈与する方を上手に選択することがポイントです。
  • なお、60歳以上の父母又は祖父母から18歳以上の子又は孫に対する贈与は、暦年単位による贈与税の課税方法「暦年課税」に代えて、「相続時精算課税制度」を選択することができます。相続時精算課税を選択する場合は、原則として、贈与税の申告書の提出期間内に「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
  • 相続時精算課税を選択した受贈者が、特定贈与者から令和6年1月1日以後に贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、暦年課税の基礎控除とは別に、贈与税の課税価格から基礎控除額110万円が控除され、特別控除(最高2,500万円)の適用がある場合はその金額を控除した残額に、20%の税率を乗じて、贈与税額を算出します。