公益法人会計・税務Q&A
公益法人会計でよくある質問と回答をご紹介
公益法人会計・税務Q&A
定期報告
公益目的保有財産を取得した場合の収支相償の計算について
- 【質問】
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- (1) 問題の所在
- 公益法人が公益目的保有財産を取得した場合、その取得価額(仮に1,000万円、耐用年数5年、1年間償却費200万円とします。)は、収支相償の計算上、費用とみなされます。
ところで、この公益目的保有財産の減価償却費200万円は①当該取得事業年度だけ費用のマイナスとするのですか(下記(2)のA)、②それとも取得後5年間にわたり費用計算から除外するのですか(下記(2)のB)。 - (2) 当方の見解
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- (A) 収支相償の考えは、1事業年度の収支相償計算で判定する。
したがって、取得事業年度だけ減価償却費200万円を費用に含めない。取得後の2期目からは正常計算に戻る。 - (B) 公益目的財産取得時に1,000万円を費用に含める計算をしているから、この資産に係る減価償却費1,000万円は遂に償却できない。
- (A) 収支相償の考えは、1事業年度の収支相償計算で判定する。
- (3) 結論と根拠をご教示ください。
- 【回答】
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- 【結論】
- 公益法人の収支相償計算で、公益目的保有財産を取得した場合の取り扱いは、
①公益目的保有財産の取得支出は(結果的に)支出事業年度の収支相償計算に含められますが、②公益目的保有財産の減価償却費は次のとおり計算方法の選択により相違します。- ・別表A(1)を採用する場合は収支相償の支出に含まれます。
- ・別表A(2)を採用した場合は収支相償の支出から除外されます。
- 【理由】
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- (1) 収支相償の計算は、次のとおり収益事業等からの利益の繰入れに応じて計算方法が2通り設けられています(公益認定等ガイドラインⅠ-5(2)(3))。
- ・収益事業等からの利益額の50%を繰入れる場合
損益計算上の公益目的事業会計における経常増減額を基礎に計算し、公益目的保有財産の取得又は売却による調整計算はありません。 - ・収益事業等からの利益額を50%を超えて繰入れる場合
損益計算上の公益目的事業会計における経常増減額を基礎に計算しますが、公益目的保有財産の当期取得支出を費用に加算し、公益目的保有財産の減価償却費を費用から除外し、かつ公益目的保有財産の当期売却収入(帳簿価額+売却損益)を収入に加えます。50%超繰入れでは、損益ベースではなく収支ベースの計算をすることになります。
- ・収益事業等からの利益額の50%を繰入れる場合
- (2) 上記(1)が原則ですが、収益事業等からの利益額の50%を繰入れる場合でも、ある事業年度において剰余金が生じる場合において、当期の公益目的保有財産の取得にその剰余金を充てる場合は、収支相償は満たされているものと扱う(公益認定等ガイドラインⅠ-5(4))という特例が認められています。
- (3) このため、結果的に収益事業等からの利益額の50%を繰入れる場合でも、通常計算で収支相償を満たしていない場合には、公益目的保有財産の取得年度に公益目的保有財産の取得支出を費用とみなして計算することが可能になります。
- (1) 収支相償の計算は、次のとおり収益事業等からの利益の繰入れに応じて計算方法が2通り設けられています(公益認定等ガイドラインⅠ-5(2)(3))。
- 【根拠となる法令等】
- 公益認定等ガイドラインⅠ-5
※当Q&Aの内容は、個別の質問に対する回答であり、TKC全国会公益法人経営研究会及び株式会社TKCは、当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。