税理士事務所開業前に
すべきこと
1.税理士として、どのようなサービスを提供するのか
システムに“こだわり”がない場合、「今まで使い慣れている」システムを選択すると思います。
ですが、どのようなサービスを提供したいかによって、使うシステムを選択した方が良いです。
たとえば、記帳代行のニーズは完全にはなくならないと思いますが、単純な事務作業だけならば、AI(人工知能)に取って代わられるかもしれませんし、単純な事務作業だけならば、税理士という職業は社会的価値が凋落していくかもしれません。
10年後、20年後も税理士として活躍するために、どのようなサービスを提供するか・したいのか、によってシステムを選択した方が良いです。
システムに求めることは何か?
それはイコール、税理士としてどのような仕事・サービスを提供するのかと同じかもしれません。
2.複数のシステムを比較検討してみる
事務所で利用するシステムは、実際にご自身でシステムの画面や仕様を確認してから選択します。
開業する前に、急いで決めずに、できれば複数のシステムを比較検討します。
事前に、友達や知り合いの税理士からオススメのシステムを聞いたり、ネットでの評価など見ながら、どのシステムを比較検討するか、気になるシステムを3~4社ピックアップしましょう。
そして、システムを提供しているベンダーに問合せして、実際にシステムを見てみます。
システムを選択するポイントは、後述していますので、そちらをご確認ください。
ここで、大切なのは、ベンダーがどのようなビジョンを持っているか、聞いてみることです。
税理士の将来を見据えているか、事務所の成長・発展に役立つか、という視点で話を聞きましょう。
3.関与先企業に推奨するシステム
独立当初は、システムに“こだわり”がなかったとしても、顧問先が増えて、職員も増えてきたら、データを一元管理する必要性が生じます。
また、いろいろなシステムが事務所内で混在すると、職員がすべてのシステム操作を覚えなくてはならないなど、さまざまな問題が生じてきます。
そのため、職員を1名採用するときまでに、どのシステムにするかを決めた方が良いです。
事務所が関与先企業へ推奨するシステムを決めておくことで、事務所から提供するサービスを標準化することができます。
よく、新規のお客様が使い慣れているシステムをそのまま使うケースがあります。
ですが、お客様は意外とそのシステムに“こだわり”がなかったりするものです。
それよりも、お客様のニーズは何か?本当に望んでいるサービスとは何か?を聞いたうえで、システムを決めた方が良いです。
「その会計システムは、会社の経営に役立っていますか?」と関与先に聞いてみましょう。
もし、お客様が「会計で会社を強くする」システムがあること知ったら、それを選択するでしょう。
4.システム選定のポイント
上記のことを踏まえ、システムの選定ポイントを整理しておきます。
事務所の「ビジョンと戦略」を実現するため、事務所の武器となるシステムを選択しましょう。
- 1 関与先へ提供したいサービスと合致するか
- 2 関与先のニーズを満たすことができるか
- 3 事務所体制は標準化できるか
- 4 事務所の生産性は高まるか
- 5 事務所の業務品質は高まるか
- 6 費用対効果はどうか
- 7 サポート体制は整っているか
- 8 税法改正等へ迅速に対応しているか
- 9 最新の技術(DX対応等)で進化していくか
- 10 事務所経営は発展するか
会計・税務に加え、経営助言など将来の業務範囲を広めたいとお考えであれば、事務所と関与先のシステムがシームレスに連携するかが重要なポイントとなります。
多くのシステムでは、開業税理士向けの特典がありますので、ご確認ください。
特に、TKCは新規開業税理士の皆さまの支援に力を入れています。
TKC全国会は、開業税理士が独立して3年間で事務所経営を軌道に乗せていただくためにニューメンバーズ・サービス委員会を設置しています。当委員会は、全国各地で活躍する約300名の税理士・公認会計士で構成されています。当サイトの記事は、この委員会で制作された独立開業ノウハウの書籍・セミナー資料をもとに執筆・編集しました。
編集責任者(執筆者) 株式会社TKC
秦 勝行(はた まさゆき)
昭和50年生まれ。千葉県出身。専修大学大学院経営学研究科経営修士課程修了。平成10年、TKCに入社。平成23年、独立行政法人中小企業基盤整備機構に出向。令和3年10月現在、SCG営業本部在籍。