税理士事務所
開業後にすべきこと
1.顧問契約書
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1顧問契約は“口頭”ではなく“書面”で
顧問契約書は、顧問先と交わす「業務の委嘱の範囲等を明確にするための委嘱契約書」を指します。
顧問先との委嘱契約は“口頭”で行っている場合がありますが、“書面”にて具体的な委嘱業務事項や報酬額を記載して契約書を交わす方が良いです。 -
2業務範囲を明確に
通常業務において、「できること」と「できないこと」の範囲を明確にしておくことで、トラブルを回避します。
顧問契約書に業務範囲を明確に記載しておくことで、顧問先に税理士の本来業務とは何か、をご理解いただけるようにします。税理士は「何でも屋」ではありません。
開業当初は、「お客様を増やしたい」「喜ばれたい」という一心で、なんでもかんでも「やってあげよう」と、受けてしまいがちです。
良かれと思っていたことが、税理士法違反とならないように注意しましょう。
そのためにも顧問契約書が大切です。ちなみに、税理士法第2条に規定する税務代理を行使するためには、顧問先から代理権を授与される必要があります。
この「代理権の授与がなされたこと」を顧問契約書で明らかにしておきましょう。 -
3顧問契約書の種類
委嘱された業務内容によって、次の2種類の顧問契約書を準備しておきます。
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1継続(更改)契約
税理士事務所で中心となる業務の契約書です。
継続的な顧問を前提として、業務内容・月次報酬・決算報酬・その他年末調整報酬等を定めます。 -
2スポット契約
顧問契約をしていないお客様から、相続税・贈与税・譲渡所得の申告などを依頼され、スポット的な業務として取り交わす契約書です。
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2.報酬規定
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1値決めは経営
稲盛和夫さんの言葉に「値決めは経営」というのがあります。
経営の死命を制するのは値決めであり、「値決めとは、お客さんが喜んで買ってくれる最高の値段を決めること。」と仰っています。これは、税理士事務所も同じです。決して安売りせず、適正な報酬額となるように設定すべきです。
- 値決めによって、事務所経営の安定化、そして職員給与の確保に繋がります。
- 値決めによって、税理士という職業の品位を保ち、業界の魅力に繋がります。
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2提供するサービスごとに作成
報酬規定は、「サービスの内容に応じた報酬」を設定することが重要です。
ここで、捉え方が変わってくるのがサービスごとにどこまで細かく設定するかどうかです。
「無料(ただ)でやっているサービスはありませんか?」という視点が重要です。
報酬規定に明記していなかったために、無料でやってしまい、今さらお客様に請求できないという状況に陥りがちです。
これは職員さんを採用した際に、障害となります。たとえば、このようなケースはございませんか?
- 月次顧問先で、税務届出書類の作成を無料でやっていませんか?
- 所得税申告業務で、医療費控除一覧表の作成を無料でやっていませんか?
- 年末調整業務で、給与支払報告書を市町村ごとに報酬をいただいていますか?
職員さんの作業時間は無料ではありません。
たとえ、10分、20分でできてしまうサービスでも、サービスの対価として、500円、1000円と定めて、提供します。
仮に、報酬規定に書かれているサービスを無料でやったとしても、それは値引きとして表示します。
人件費というコストがかかっているので、無料でやってしまうサービスがないかどうかを棚卸します。棚卸しの度に、報酬規定に盛り込むことが大切です。最後にもうひとつ。
中小企業・小規模事業者の多くも「無料でやっているサービス」を多く抱えています。
顧問税理士である事務所がお手本となることで、お客様の経営も良くなっていくことが理想です。 -
3できる限りわかりやすく
税理士の業務に対する報酬は、単純な時間計算ではありません。
だから、口頭で「だいたい月額3万円で、決算料が・・・」と説明すると、お客様は「なんで、この報酬なんだろう・・・?」と疑問に思います。そこで、報酬規定によって、できる限りわかりやすく提示することで、お客様に安心感を持っていただきます。
また、誰でも簡単に計算できるようにした方が良いです。職員さんが顧問先から質問された場合にもわかりやすく回答できるような報酬規程を用意しましょう。 -
4巡回監査業務の報酬は「時間+責任+保証」
報酬とは、どのように構成されていると考えていますか?
月次巡回監査業務は「時間報酬+責任報酬+保証報酬」の3つの要素で構成されています。
責任報酬と保証報酬は、報酬規定に明記しにくいですが、業務の要素として押さえておきましょう。-
1時間報酬
文字通り、業務に費やす時間にかかる報酬です。
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2責任報酬
税理士の業務は、法律で厳しく責任が課されていますね。
税理士は、その責任のもとで業務を行っています。業務責任に見合った報酬を定める必要があります。 -
3保証報酬
月次巡回監査業務を通して、「信頼性の高い決算書」を作成します。
決算書の信頼性は、会計帳簿の証拠力を意味します。
「中小会計要領」に準拠した決算書を作成すること、申告書に「書面添付」(税理士法第33条の2)を添付することで、税務当局や金融機関などから信頼を獲得することができます。
こうした顧問税理士の業務によって、決算書の確からしさを保証することができます。これが報酬の要素となります。
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TKC全国会は、開業税理士が独立して3年間で事務所経営を軌道に乗せていただくためにニューメンバーズ・サービス委員会を設置しています。当委員会は、全国各地で活躍する約300名の税理士・公認会計士で構成されています。当サイトの記事は、この委員会で制作された独立開業ノウハウの書籍・セミナー資料をもとに執筆・編集しました。
編集責任者(執筆者) 株式会社TKC
秦 勝行(はた まさゆき)
昭和50年生まれ。千葉県出身。専修大学大学院経営学研究科経営修士課程修了。平成10年、TKCに入社。平成23年、独立行政法人中小企業基盤整備機構に出向。令和3年10月現在、SCG営業本部在籍。