更新日 2013.01.15
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
公認会計士・税理士 大野 崇、野村 昌弘
公認会計士 稲垣 泰典
上場会社では当たり前になった連結決算。情報開示という面が強く認識されていますが、グループ経営の意思決定のための会計として、時として非上場会社にも連結決算・連結管理会計の導入が必要なのではないでしょうか?
このコラムでは、連結決算を組むメリット、単純合算では見えてこない点、グループ経営のためのキャッシュ・フロー計算書、決算早期化、予測連結、海外子会社の連結等、上場/非上場に関わらず、グループ経営の観点から連結決算を分かりやすく解説します。
前回は、決算早期化のためのソフト面からの解決策を説明しました。今回はハード(システム)面からの解決策として、連結会計システムの導入等について説明します。
(1)連結会計システム導入の検討
親会社、子会社合わせて3,4社程度であれば、各会社から必要な情報を収集し、担当者がExcelなどの表計算ソフトで連結精算表やセグメント資料、予算実績差異分析資料などを作成することは可能です。しかし、管理すべき会社がそれ以上に増えてくると、単なる表計算ソフトでは限界が来ます。連結会社のうち1社でも決算の数値が変われば、連結精算表から種々の管理資料まで変更箇所が多岐にわたります。その場合には、数値の集計、分析、報告まで含めて全ての資料を担当者が独力で修正することになり、修正ミスが起きてしまったり時間がかかってしまう等の可能性が高くなるからです。
①スプレッドシートを使用している場合の決算早期化の阻害要因
Excelなどの表計算ソフトを用いて、連結決算を組んでいる場合のシステム面の課題、決算早期化の阻害要因としては、以下のような点があげられます。
No | システム面の課題(例) |
---|---|
1 | 制度改正時のスプレッドシートのメンテナンス
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2 | 子会社追加・削除時のスプレッドシートのメンテナンス
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3 | 関係会社からのデータ収集
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4 | スプレッドシート間、データ修正後の整合性の確認
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5 | 完成した連結データの正確性の確認
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6 | 監査資料の網羅性、追加対応資料の作成
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②連結会計システムの導入
このような問題に対して、連結決算業務を標準化・効率化させていくためには、連結会計システムの導入を検討する必要があります。
一般的な連結会計システムであれば、通常は個別決算書の入力、連結精算表の作成、マネジメント報告用レポートの出力までデータ整合性を持たせることができ、連結会社数の増減にも対応することができます。このほか、分散入力による作業効率化、マネジメント報告用レポートのカスタマイズ、異なるシステム間のデータ連携など、年々機能が付加され、使い勝手が良くなってきています。
我々がコンサルタントとして連結会計システムの導入支援をさせていただいた複数の会社でも、連結会計システムを導入したことにより決算早期化が図れた、連結決算業務が標準化できた、分散入力により作業が効率化できた等の効果をよくお聞きします。
③グループで統一した個別会計システムの導入
さらに、今後は単体の個別会計システムの連携、グループ経営を意識した個別会計システムの導入がグループ経営を成功させるための大きな鍵になると考えています。
最近の報道等でも、子会社が親会社からの目標達成のためのプレッシャーを感じるあまり、子会社における架空売上や費用の過少計上といった不正事例が頻繁に見受けられます。度重なる不正事例への会計監査の対応策として、平成24年12月21日に企業会計審議会監査部会より「監査における不正リスク対応基準(仮称)の設定及び監査基準の改訂について」の公開草案が公表されました。
このような状況において、システム面の問題点の一つに、子会社では、親会社が使用している個別会計システムとは別の個別会計システムを使用しており、親会社からの見える化が全く出来ていないといった問題点をあげることができます。実態のあるグループ経営を行っていくためには、グループで統一した個別会計システムの導入や親会社経理担当者の定期的チェック等が必要になってくると考えられます。
グループ経営を実行するためのインフラとして、グループで統一した個別会計システムの導入や個別会計システムと連携の取れた連結会計システムを導入し、活用していくことが今まで以上に求められます。
※本記載は、平成24年12月28日現在の情報に基づいています。
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公認会計士・税理士 大野 崇、野村 昌弘
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