更新日 2012.12.17
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
公認会計士・税理士 大野 崇、野村 昌弘
公認会計士 稲垣 泰典
上場会社では当たり前になった連結決算。情報開示という面が強く認識されていますが、グループ経営の意思決定のための会計として、時として非上場会社にも連結決算・連結管理会計の導入が必要なのではないでしょうか?
このコラムでは、連結決算を組むメリット、単純合算では見えてこない点、グループ経営のためのキャッシュ・フロー計算書、決算早期化、予測連結、海外子会社の連結等、上場/非上場に関わらず、グループ経営の観点から連結決算を分かりやすく解説します。
企業経営にとって、経営意思決定に必要な情報をタイムリーに収集できるかどうかは極めて重要です。グループ経営を実行するうえでは月次決算を連結ベースで実施することが望まれますが、連結ベースで決算の正確性を担保しつつタイムリーさを求めることは難しい問題です。今回は、決算早期化のために何が必要となるかを説明します。
決算早期化を実現するためには、連結決算方針やグループ各社の連結決算処理フローを把握し、早期化の阻害要因がどこにあるのか、どのような解決策があるのかを検討します。
(1)決算日の統一
グループ会社の決算日が統一されていない場合、連結決算上はグループ会社の決算日を統一する、親会社の決算日に合わせて子会社が仮決算を行う、決算日の差異を調整せずに連結する、といった対応が考えられます。制度会計上は決算日差異が3か月を超えない範囲で連結決算書に取り込むといった処理が認められています。しかし、グループ会社の決算期がずれていると数か月前の個別決算書を合算して連結決算書を作成することとなり、タイムリーに状況を把握することはできず、そもそも連結決算書が管理会計に役立つ情報を提供できないことになります。
なお、決算日の統一はIFRS適用を考える上でも課題となります。原則主義を採用するIFRSでは決算日差異を調整せずに連結するという考えが基本的にありません。海外子会社では現地の法規制により12月決算しか取りえない場合があり、決算期を変更して各会社の決算日を統一する、あるいは親会社の決算日に合わせて子会社が仮決算を実施するなど、IFRS対応を見据えてグループ会社の決算日を統一する会社も少しずつ出てきました。
決算早期化の阻害要因(例) | 解決策(例) |
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親会社の決算期と合わせるため海外子会社で仮決算を実施したいが、現地の管理水準が低く、決算の締めが遅くなってしまう。 |
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(2)会計方針の統一
俗に、同じ会社の決算書を何人かにそれぞれ作らせてみた場合、違う決算書が人数分出来上がるといわれています。これは、会計の世界では数字の取り方も解釈も人によって幅があり、正解は1つではないことのたとえです。グループ会社が増えてくると、各会社の管理を担う部署も大きくなり、複数の担当者が関わるようになります。この時、各会社によって、あるいは各担当者によって会計処理の方法や勘定科目体系がばらばらだと、会社間の業績を比較することはできません。連結決算書を作成するうえでは、グループ会社の会計処理方法や勘定科目体系を統一しておく必要があります。
決算早期化の阻害要因(例) | 解決策(例) |
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子会社側が引当金未計上で親会社が連結決算時にその調整を行っているなど、会計処理方法がグループ会社間で異なっている。 |
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勘定科目体系が各会社で異なっており、各会社の勘定科目と連結勘定科目のマッピングに時間がかかっている。 |
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(3)情報収集体制
連結決算に必要な情報を子会社からもれなくスピーディに収集するために、連結パッケージを活用することが考えられます。連結パッケージとは、連結決算に必要な情報を入力できるように定型化し、会社ごとにExcelシート等にまとめたものです。勘定科目や集計する項目を事前に指定しておくことで、勘定科目体系をグループ会社で統一しておくことができます。また、グループ会社間の取引高、債権債務残高を照合しやすい形式にしておくことで、差異原因の調査をスムーズに行うこともできます。なお、親会社と子会社で決算前に報告内容と報告期限をすり合わせ、不明点があればスムーズにやり取りできるように体制を整えておく必要があることは言うまでもありません。
実務上使用されている連結パッケージに統一されたひな形はなく、各社ごとに改良を重ねたものが使用されていることが通常です。
決算早期化の阻害要因(例) | 解決策(例) |
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子会社側の経理担当者の知識が十分でなく、連結パッケージの入力に時間がかかっている。 |
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(4)個別決算の早期化
連結決算書は各グループ会社の個別決算を基礎としていますので、グループ会社のうち1社でも決算の確定が遅れるとタイムリーに連結決算を行うことができません。そのためには日常業務の見直しや、システム導入による業務効率化を検討する必要があります。
決算早期化の阻害要因(例) | 解決策(例) |
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売上や原価の確定が遅れがちである。 |
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販売管理システムのデータを会計システムへ入力しなければならず、入力作業が非効率となっている。 |
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月末月初に業務が集中し、決算作業が滞りがちである。 |
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決算早期化を考える場合、最終的には各会社の個別決算をいかに正確かつスピーディに実行することができるかという問題に帰着します。親会社の連結決算担当者が中心となり各子会社と連携して業務の進め方や報告期限、連結パッケージの記入方法等よくすり合わせておくことが重要です。
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