更新日 2012.10.22
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
公認会計士・税理士 大野 崇、野村 昌弘
公認会計士 稲垣 泰典
上場会社では当たり前になった連結決算。情報開示という面が強く認識されていますが、グループ経営の意思決定のための会計として、時として非上場会社にも連結決算・連結管理会計の導入が必要なのではないでしょうか?
このコラムでは、連結決算を組むメリット、単純合算では見えてこない点、グループ経営のためのキャッシュ・フロー計算書、決算早期化、予測連結、海外子会社の連結等、上場/非上場に関わらず、グループ経営の観点から連結決算を分かりやすく解説します。1.セグメント情報とは
セグメント情報は、売上高、利益(又は損失)、資産その他の財務情報を、事業単位等に集約した情報をいいます。セグメントとは経営者が経営資源(ヒト、モノ、カネ)を配分する単位、あるいは業績を評価する単位であり、経営管理を行う上で極めて重要な情報です。通常、セグメントは“事業”単位で集約しますが、経営管理の目的により“地域”や“顧客”単位で集約することも考えられます。セグメント情報を作成することによって、各社の業績を横並びにした単純合算だけではわからない情報を得ることができます。同じ会社が複数の事業を行っている場合や、製造会社と販売会社を分けている事業構造の場合、各社の財務諸表だけでは事業の収益性まで判断することはできません。事業の収益性を見るためには各社の財務諸表を事業ごとに集約し、セグメント情報を作成する必要があります。
個別決算書、連結決算書、セグメント情報の違いは以下のように表せます。
東京と大阪でスーパーを展開している場合を考えてみます。各スーパーは商品の過不足を調整するために在庫を融通し合っています。東京と大阪がそれぞれ経営管理上独立して採算管理を行っていれば、東京と大阪の取引はセグメント間取引として扱うべきです。逆に、広い意味でスーパー事業として位置づければ、セグメント内取引として扱うべきです。
セグメント情報は法人格にとらわれずに数値を集計する点で個別決算書と異なります。東京のスーパーと大阪のスーパーが同一会社であれ別会社であれ、在庫の融通がセグメント間取引に該当する限りはセグメント情報に集計します。別会社であっても広くスーパー事業として位置づけられるのであれば、セグメント内取引に該当し、セグメント情報に集計されません。
2.セグメント情報の作成
セグメント情報は、横軸にセグメントの区分、縦軸に売上、利益、資産等の財務情報をとり作成します。
まず、親会社、子会社の個別決算書をセグメントごとに区分します。親会社の管理部門費など、セグメントに直接紐づかない費用は調整額の欄に集計します。次に、セグメント内取引、セグメント間取引を集計し、これらをセグメントごとに区分された財務情報から差し引いて外部との取引高を計算します。最後に、各セグメントの数値に調整額を差引した金額(一番右列)を連結決算書に合わせます。この一連の計算は、連結決算書の計算過程(個別決算書の合算、消去)をセグメント別に集計し直したものといえますが、社内セグメント間取引はいわゆる連結消去仕訳に含まれない点が異なります。
3.セグメント情報作成上の留意点
- 冒頭でセグメントの区分の仕方は経営者の必要とする情報や経営管理に合わせた形で行われていると説明しました。すなわち、セグメントの区分方法は経営者が自社の財務情報を見るための視点と整合的でなければなりません。
- セグメント情報をどこまで細かく作成するかは経営管理目的に拠りますが、売上、利益などの損益計算書情報だけでなく、貸借対照表情報まで区分けした方が経営管理により有益な情報を得ることができます。例えば、セグメント情報等の開示に関する会計基準では、開示項目として売上や営業利益だけでなく、減価償却費や減損損失、有形固定資産及び無形固定資産の増加額など、EBITDA(利払前税引前償却前利益:通常、営業利益+減価償却費で表されます)や投資収益率を計算するための財務情報を例示しています。
- 経営意思決定に資する情報をタイムリーに作成するためには、セグメントをキーとして財務情報を適時に集計できるような社内体制の整備や、財務情報の各セグメントへの配賦基準の決定等に留意する必要があります。
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