システム活用事例
インボイス・マネジャーを活用したTKCの自社事例

株式会社TKC

ペポルインボイスを採用後、請求書発行業務を99.9%削減!

株式会社TKC(以下「TKC」)は1966年の創業以来、会計事務所と地方公共団体に専門特化したサービスを提供しています。
2023年10月よりインボイス制度が開始され、中小企業から大企業まで経理業務における負担は著しく増加しています。
こうした状況の中、TKCでは、2023年10月以降、請求書の発行を原則として、ペポルネットワークを介したデジタルインボイス(以下「ペポルインボイス」)に切り替えました。
これにより請求書の発行業務にかかる工数を99.9%削減することに成功しています。
今回は、自社で発行する請求書を電子化し、業務効率化を実現した事例とノウハウについて、TKC財務部(当時)の中嶋芳典氏に話を聞きました。

──請求書の発行先を教えてください。

まず、約9,700の会計事務所です。
現在、11,400名超の税理士・公認会計士がTKC全国会に所属しており、全国約9,700事務所に在籍しています。

続いて、約1,140の地方公共団体です。
政令指定都市を含む全国約1,140の地方公共団体(主に市町村)に対し、住民記録や税務などの行政業務を支えるシステムや、マイナンバーカードを活用した住民向けサービスを支援するシステムを提供しています。

次に、約5,300の中堅・大企業です。
TKCでは中堅・大企業の決算や税務申告に関する業務を支援する「TKC連結グループソリューション」を展開しており、上場企業とその子会社の税務業務の適切な履行を支援しています。利用企業は約5,300企業グループを超えています。

加えて、大学などのアカデミック分野のお客様です。
日本の判例、法令、文献などを収録した総合情報データベース「TKCローライブラリー」を提供しており、大学、法科大学院、官公庁、法律事務所、特許事務所、企業法務部などにご利用いただいております。

これら4つの分野のお客様が発行先となります。

制度改正により電子化の波 他社ベンダーと連携を開始

──請求書を電子化したきっかけは?

きっかけは、2019年の消費税率引き上げ(8%→10%)と、それに伴う税制・制度改正の動きでした。
特に、電子的に保存された証憑類が紙と同等に法的に認められるようになったことは、バックオフィス業務の見直しや効率化を進めるうえで、大きな転機となりました。
制度改正をきっかけに社会全体で請求書の電子化が進む中、各ベンダーが独自仕様で電子インボイス(PDF)を発行することでシステム間での相互運用性が確保されず、受領側が電子化のメリットを享受できなくなるという課題が出てきました。
そこで、請求書の発行側・受領側が共通して利用できるペポルインボイスの仕組みを実証、普及促進することを目的として、「電子インボイス推進協議会」(現在のデジタルインボイス推進協議会[EIPA])をベンダー10社と共同で発足しました。

その後、TKCでは2022年12月に、ペポルインボイスの発行・受領に対応した「インボイス・マネジャー」の提供を開始しました。
自社でも実際にペポルインボイスを活用することで、請求業務のデジタル化に関するノウハウを蓄積し、お客様へ展開していく方針を明確にしました。

ペポルインボイスに対応した「インボイス・マネジャー」を
自社で導入

──請求書の電子化システム「インボイス・マネジャー」の概要を教えてください。

インボイス・マネジャーは、電子帳簿保存法に定める電子取引データの保存およびスキャナ保存制度の要件、インボイス制度に対応したクラウドサービスです。
また、販売管理システムのデータと連携して、ペポルインボイスまたは電子インボイス(PDF)を発行できるシステムです。
お客様側でペポルインボイスを受け取れる環境が整っている場合は、ペポルインボイスで発行し、これから環境を整備されるお客様には、電子インボイス(PDF)を発行することができます。
お客様の受領環境に応じて柔軟に発行形式を選択できるため、電子化への移行を進めることができました。

「インボイス・マネジャー」によるデジタルインボイス発行・送信イメージ

紙で発送していた約2万件の請求書、電子化までのステップ

──請求書電子化プロジェクトの体制を教えてください。

請求書の発行先毎にプロジェクトを結成
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請求業務は、全ての事業部門に関わるため、全社を横断する体制でプロジェクトを立ち上げる必要がありました。
プロジェクトの中核を担ったのは、請求書を統括する財務部と、社内システムの設計・改修を担う社内の情報システム部門で、この2部門がプロジェクトマネジメントオフィス(以下「PMO」)の役割を果たしました。
さらに、請求業務は各事業部門の営業活動とも密接に関わるため、事業部門ごとにプロジェクトチームを設置し、現場の視点を反映できる体制を構築しました。
PMOは各事業部門のプロジェクトチームにも加わり、打ち合わせに参加しながら、要件定義や運用方針について議論を重ね、検討を進めました。

──プロジェクトでの取り組みの内容は?

「インボイス・マネジャー」導入ステップ

「インボイス・マネジャー」導入ステップ
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はじめに、どの取引先に対してペポルインボイスを発行するか、または電子インボイス(PDF)で発行するかといった、電子化の対象範囲を明確にするなど、要件定義を行いました。
次に、要件定義に基づいて社内システムの設計・改修を行いました。
子会社や関係会社、一部のお客様にご協力いただき、運用テストを実施し、設計・改修内容が正しく反映されているか、実際の業務に支障なく対応できるかを確認しました。
テスト結果を踏まえ、請求書の発行方法が紙から電子に切り替わること、移行のスケジュールや留意点について、お客様に対してご案内しました。
また、ペポルインボイスの発行にあたっては、お客様側にて事前にペポルIDを取得いただく必要があるため、営業担当を通じて取得支援も実施しました。

──導入に要した期間を教えてください。

導入には約半年を要しました。
2023年10月の本稼働を目標に、プロジェクトは約半年前の同年3月にスタートしました。
当初は、PMOが各プロジェクトチームに加わり、要件定義や運用方針を検討していましたが、その過程で、お客様への案内方法など、部門をまたいだ連携や調整が必要な課題が次第に明らかになってきました。
そのため、6月からは全社横断での調整を開始しました。
要件定義、システムの設計・改修に加え、請求書電子化に関するお客様への案内・周知を順次進めた結果、予定どおり2023年10月に本稼働を迎えることができました。

「インボイス・マネジャー」導入ステップ


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4,959人時間から4.5人時間へ、
99.9%の工数削減効果と4つのメリット

──請求書電子化によって、どのような導入効果が得られましたか。

導入効果としてまず挙げられるのが、請求書発行業務に関する工数の大幅な削減です。
TKCでは毎月、全国のTKC会計事務所に対して請求書を発行しています。
ペポルインボイス導入前は、全国8箇所の印刷センターで請求書を書面で作成して発送業者に引き渡していました。
具体的な作業内容として、①請求データの受領、②受領データにもとづく請求書の印刷、③帳票の裁断、④請求書の封入、⑤発送業者への引き渡しを実施していました。

これらの業務には計114名が関わり、合計43.5時間を要しており、掛け算した総工数は4,959人時間にのぼっていました。
一方、2023年10月以降、ペポルインボイスおよび電子インボイス(PDF)での発行に切り替えたことで、作業はわずか3名・1.5時間(4.5人時間)で完了し、電子化前の4,959人時間と比べて工数を1,000分の1以下に削減することができました。


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そのほかにも、4つの効果が得られています。
1つ目は、費用削減とヒューマンエラーの削減です。
2024年10月からの郵送料金の値上げを始め、各種費用が上昇する中、請求書の電子化によって、郵送料金だけでなく、印刷代や用紙代などの関連費用も削減することができました。
また、封入・発送時のヒューマンエラーの防止にもつながっています。

2つ目は、テレワーク対応が可能になったことです。
紙の請求書では、封入・発送などの作業を社内で行う必要があり、リモート環境で対応することはできませんでした。
しかし、請求書の電子化によって自宅からでも請求業務を行えるようになり、柔軟な働き方を実現できました。

3つ目は、適格請求書に係る電磁的記録の保管義務に対応できたことです。
インボイス・マネジャーでは、請求書の発行と同時に法的要件を満たしてデータを保管することが可能です。
これにより、請求書の電子化と同時に保存義務への対応も実現できました。

4つ目は、お客様からの評価です。
お客様からは、月次決算を円滑に進めるうえで、請求書をできるだけ早く発行してほしいとのご要望を多くいただいていました。
請求書を電子化したことにより、紙で郵送される請求書よりも1〜2日早く請求書をお届けできるようになり、「社内手続きがスムーズになった」と、お客様からもご好評いただいています。

──今後、請求書の電子化を検討されている企業様へのメッセージをお願いします。

当社では、社内に前例やノウハウがない中で、試行錯誤を重ねながら全社的に電子化を進めてきました。
そのため、導入には約半年を要しましたが、今後取り組まれる皆さまにおかれましては、まずは一部の取引先に限定したり、関係会社間の取引に絞ったりするスモールスタートで、3~4ヶ月ほどで導入いただくことも可能ではないかと考えています。
本事例が、皆さまのご検討の一助となれば幸いです。

会社概要
株式会社TKC
設立 1966年10月
従業員数 2,922名(連結)2024年9月30日時点
売上高 752億円(連結)2024年9月期実績
所在地 栃木県宇都宮市鶴田町1758番地
URL https://www.tkc.jp/

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