四季ごとに魅力がある『悠の湯 風の季』
宮沢賢治生誕の地として知られる、岩手県花巻市。市内西部にはいくつもの温泉があり、それらを花巻温泉郷と総称して、地元の観光資源として役立てている。なかでも豊沢川沿いの8湯については、「花巻南温泉峡」と呼ばれる場合も多い。
「その〝表玄関〟にあたる場所(松倉温泉)に宿を構えているのが、私たちです」
と話すのは、ガーデンリゾートの佐藤克也社長。『悠(はるか)の湯 風の季(とき)』の屋号で温泉旅館を経営している。この屋号には、「いつまでも続く温泉でありたい」「季節の風に誘われて、お客さまに来館いただきたい」という願いが込められているという。
「春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色と、四季それぞれに違う魅力があります。何度訪れても新しい発見ができると思います」
おもてなしの接客が持ち味
源泉100%の掛け流し温泉の泉質は、美肌効果が高いとされるアルカリ性単純泉。岩手県内のほか、となりの宮城県などからも数多くの宿泊客が訪れるだけの魅力がある。
なかでも特に佐藤社長が自分たちの強みだと考えているのが、接客サービス。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」(旅行新聞新社・主催)の「もてなし部門」に5年連続で入選するなど、おもてなしの心が行き届いたサービスはプロ(全国の旅行会社)も認めるところだ。
「接客で一番大事にしているのが、従業員の〝スマイルサービス〟です。笑顔を絶やさないようにすると同時に、お客さまが気付く前に対応できるような、行き届いたおもてなしができるように努めています」
また、料理にも力を入れており、地元食材をふんだんに使った創作料理を主体にしている。花巻産のブランド牛肉「胡四(こし)の牛王(ぎゅうおう)」を使った肉料理は、そのマイルドな肉質から女性やシニア層にも好評で、宿のうりの一つとなっているという。
信金担当者が〝予習〟できる
そんなガーデンリゾートが、TKCの「モニタリング情報サービス」を活用して自社の財務データをインターネット経由で金融機関に提供するようになったのは、昨年8月からだった。きっかけは、同社の顧問である高橋勝芳税理士と、メインバンクである花巻信用金庫からの提案だった。
花巻信金には、①法人税申告後の決算書②期中の月次試算表を提供している。金融機関にとっては、TKC会員の指導のもとに作成された信頼性の高い財務データをオンラインでタイムリーに入手できるというメリットがある。実は、岩手県内の金融機関の中でも花巻信金はとくにモニタリング情報サービスの利用に積極的であり、融資先企業の経営状況をモニタリングしていくためのツールとして役立てている。
「モニタリング情報サービスを通じて、金融機関との信頼が高まり、スムーズな資金調達が可能になることを期待しています。非常に取り組みやすい環境が整っているなかで、『やらない』という選択肢はどこにもありませんでした」
佐藤社長は以前から、金融機関への情報開示は必要だと考え、信金職員来社時に月次試算表を紙ベースで手渡していた。それが、モニタリング情報サービスを活用することによって、来社前に電子データで提供できるようになった。
高橋税理士は、「これにより信金の担当者は、融資先企業のもとにわざわざ足を運ばなくても、会社の経営状況を知ることができるようになりました。つまり直近の月次試算表を見て〝予習〟してから、融資先企業を訪問できるようになったわけです」と語る。事前に予習をすることで、融資先企業のもとを訪問した際に、より突っ込んだ話ができる状況を作り出しているのだ。
ハード面の充実も図る
ガーデンリゾートが金融機関の融資を必要としているのは、ハード面(施設)の充実を図るための設備資金として使いたいからでもある。これまでも、露天風呂付きの和風スイートルームを新設したり、通常の客室よりもワンランク上の「和風スーペリア」を設けるために、設備投資をおこなってきた。今後は、社名の〝ガーデンリゾート〟の名に恥じないよう、中庭などの景観をより一層魅力的なものにするための設備投資を計画しているという。
「よい景観を用意すれば、お客さまのリラクゼーション効果も高まります。温泉に入って、おいしいものを食べればそれでいいというわけではなく、心と身体をゆっくりと休めてもらうためにも、よいロケーションを用意したいと考えています」(佐藤社長)
また佐藤社長は今後の目標として、おもてなしの最前線に立つ従業員の教育・研修をさらに充実させることや、県外とくに関東圏への積極的なPRを通じて、集客力を高めていくことも掲げている。花巻南温泉峡の表玄関に位置する同社のブランド力が向上すれば、そのエリア全体が活気づく。佐藤社長のさらなる奮闘に地元の多くの人の期待が集まる。