税理士事務所
開業後にすべきこと
新規関与先獲得 - ウェブサイト編 -
1.中小企業がウェブサイトを開設する目的
2.税理士事務所がウェブサイトを開設する「目的」
-
1事務所を認知してもらい信頼を獲得するため
開業当初、事務所の認知度はゼロに等しいです。
事務所の認知度を向上し、信頼を獲得することがウェブサイトの目的になります。事務所のウェブサイトを訪問された方に、 所長先生のビジョンや経営方針などをご覧になっていただき、「ちゃんとしている税理士事務所だなぁー」と感じていただくことが大切です。
この目的のターゲットは、見込客だけではありません。
つまり、新規関与先を獲得することが目的ではないので、 顧問先や紹介してくれる方、お世話になるすべての方がターゲットになります。そこで、親しみをもっていただくために、事務所の営業エリア(どの地域をカバーしているか)、税理士の顔写真や事例なども掲載すると良いです。
-
2事務所の強みをアピールするため
「私は税理士です。」と言っても、何ができるのか、何が得意なのか、相手には伝わりません。
中小企業の経営者や金融機関の担当者などは、今まで出会った税理士を見て、税理士の仕事をイメージしていることが多いです。
だから、いま顧問税理士に記帳代行をお願いしている経営者は、「税理士は、記帳代行や税務申告書を作成するのが仕事だ」と思っているかもしれません。そこで、事務所の強みをアピールすることが大切です。これがウェブサイトの目的のひとつになります。
- 「自分はどんな税理士なのか」
- 「どんな仕事ができるのか、していきたいのか」
- 「得意なことは何か」
といった事務所の強みを具体的な言葉で表すと良いです。
また、事務所の強みが分かりやすく伝えられるようなデザインを検討しましょう。
たとえば、資金繰り・経営改善計画を作成している場面の写真を大胆にレイアウトするなどビジュアル(写真やイラスト)で伝える方がわかりやすいです。 -
3新規顧問先を獲得するため
ウェブサイトから直接問合せを受けて、新規顧問先を獲得したい場合は、事務所の強みやサービスに興味を持っていただくことで、リードを獲得することがウェブサイトの目的となります。
リードを獲得するために、「お問い合せ」や「資料請求」といったコンタクトポイントへ誘導する仕掛けづくりが大切です。他には、見込み客や紹介者がウェブサイトを訪れて、事務所を信頼できると思っていただくことで、顧問契約に繋げる場合があります。
特に、既存の顧問税理士がいる場合、顧問契約が決まるまで時間がかかるケースがありますので、ウェブサイトの目的は、見込客と継続して繋がることとなります。 -
4職員さんを採用するため
ウェブサイトの4つ目の目的は、人材採用です。
開業当初は、ひとりで仕事をしていますが、いずれは職員さんを採用します。
採用のタイミングで構いませんので、ウェブサイトには、求人情報を掲載すると良いです。
どのような職員さんと一緒に仕事したいのかメッセージを伝わりやすくすることで採用の効果を高めます。最近では、求職者向けに特設ウェブサイト、「採用サイト」を開設する事務所が出てきていますが、最初のうちは事務所のウェブサイトに求人情報として必要な項目を掲載することで十分だと思います。
3.ウェブサイト開設の「目的の明確化」
-
目的の明確化
事務所のウェブサイトを開設することで、どのような目的を達成したいですか?
他の事務所のウェブサイトも参考にすると思います。デザインや構成、コンテンツの内容を参考にすると同時に、「このウェブサイトの目的やコンセプトはどこにあるか」という点も参考にすると良いです。 -
目標の設定
目的が決まったら、その目的に応じた「目標」を設定します。
- ウェブサイトへのアクセス数
- ウェブサイトからの問合せ数
- 検索エンジンの表示順位
- 情報アップデートの頻度
-
ターゲットの絞り込み
目的と目標値を設定したら、「ターゲット」を絞り込みます。
これから制作するウェブサイトは、主に、誰に向けたウェブサイトにしたいか?を絞り込みます。
ターゲットを絞り込むことで、ウェブサイトのコンセプトやコンテンツが明確になってきます。
結果、狙ったターゲットに届きやすいものが出来上がります。
4.事務所のウェブサイトの「役割」とは?
-
最新情報を提供すること
税務、会計、経営、労務といった中小企業に役立つ「コラム」をウェブサイトに持っていると良いです。専門家として最新情報を収集し、発信していることが分かると信頼度が高まります。
今だったら、国・都道府県・市区町村・金融機関等が、事業者を対象としてコロナ禍におけるさまざまな支援策を講じています。
事業者は、支援策が多すぎて、いったいどれを活用して良いか分からないという声をよく聞きます。
そこで、最新情報は、一覧性があると同時に、探しやすいように発信する工夫が欲しいところです。 -
アップデートする仕組み
はじめにウェブサイトを制作したときは、力が入っているので、最新情報をアップしていますが、1年も2年も更新されておらず、陳腐化した情報がそのままというウェブサイトを見かけることがあります。
これでは、せっかく制作したウェブサイトが逆効果になってしまいます。
コンテンツ・情報はアップデートされているか、税理士事務所のウェブサイトとして重要なポイントです。
そこで、ウェブサイトを制作するときは、アップデートする仕組みを考えておきます。 -
SNSやメルマガとリンク
SNSやメルマガとウェブサイトをリンクすることで、効果が高まります。
ウェブサイトは、一方的な情報提供ですが、SNSは、お客さま・紹介者と双方向のコミュニケーションができます。
メルマガは、お客さまに届けたい情報を、必要なタイミングで発信することができます。ウェブサイトの集客をアップするために、SNSやメルマガを組み合わせて運用します。
また、仲間の他士業のウェブサイトにリンクを掲載してもらうなど、外部サイトから流入を増やすことも考えます。 -
スマホ対応とセキュリティ対応
事務所のウェブサイトは、スマートフォンでも閲覧しやすいようにします。
スマホ対応することで、ウェブサイトへの集客効果が高まります。ウェブサイトを外注で制作するときは、スマホ対応するように依頼しましょう。
自作する場合は、「レスポンシブルデザイン」という機能を覚えておいてください。
これは、ウェブサイトを見ている環境に合わせてレイアウトを自動的に調整してくれるものです。また、ウェブサイトの安全性にも配慮したいので、HTTPS(セキュリティ通信)にしておくことをオススメします。
TKC全国会は、開業税理士が独立して3年間で事務所経営を軌道に乗せていただくためにニューメンバーズ・サービス委員会を設置しています。当委員会は、全国各地で活躍する約300名の税理士・公認会計士で構成されています。当サイトの記事は、この委員会で制作された独立開業ノウハウの書籍・セミナー資料をもとに執筆・編集しました。
編集責任者(執筆者) 株式会社TKC
秦 勝行(はた まさゆき)
昭和50年生まれ。千葉県出身。専修大学大学院経営学研究科経営修士課程修了。平成10年、TKCに入社。平成23年、独立行政法人中小企業基盤整備機構に出向。令和3年10月現在、SCG営業本部在籍。