2020.07.14
過失運転致傷被告事件
LEX/DB25565713/福岡地方裁判所 令和 2年 5月 7日 判決 (第一審)/平成30年(わ)第585号
被告人が過失運転致傷の罪で禁錮1年を求刑された事案で、主位的訴因について、被害者車両が本件防犯カメラ映像の見切り地点からほぼ直進して衝突地点で停止したとは合理的な疑いなく証明されているとはいえず、本件事故の原因は被告人が前方をよく見ていなかったからであるとの被告人の捜査段階の供述もそのまま信用することはできないから、そのような事実関係を前提とする主位的訴因の被告人の過失は、その余の点について検討するまでもなく認められず、また、予備的訴因について、仮に被告人が本件道路を進行するにあたり、前方左右を注視し、進路の安全を確認しながら進行していても、被害者車両が本件道路の第一車両通行帯の歩道寄りにいったん停止し、その後急加速して第二車両通行帯に車線変更してくることを予見し、同車両と被告人車両とが衝突地点で衝突することを回避することは困難であり、主位的訴因との関係でも、被告人に、本件事故に関し、予見可能性、結果回避可能性があったというには合理的な疑いが残ることから、主位的訴因、予備的訴因のいずれについても、本件の証拠関係を前提にする限り、各訴因の特定に欠けることはないが、本件では、被告人車両が進行していた車線の左側の車線を進行していた被害者車両が、被告人車両が進行していた車線上にある衝突地点に向けて、急加速して車線変更してきた可能性があり、本件事故に関して被告人に過失があると認めるには合理的な疑いが残り、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるとして、刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをした事例。