税理士による開業コラム

税務官公署出身者の開業

「国税時代のことは
一度リセット」

渡辺貞彦先生

税理士 渡辺事務所

税理士 渡辺貞彦(昭和29年生まれ、千葉県木更津市で平成27年に開業)

私は、いわゆるOB税理士です。
定年まで国税の職場に勤務した後に税理士事務所を開業しました。開業時は一人きりの事務所でしたが、その後息子が合流し、数年後に息子が税理士資格を取得しました。開業から8年程過ぎましたが、ゼロからの出発でしたので顧問先はまだまだ多くありません。

開業して気付いた「国税の看板」の大きさ

開業して間もない時期の悩みは、「顧問先をどのようにして獲得するか」の一点でした。
当時は、地域の商工会議所や金融機関などに事務所通信を持参して名前を知っていただくことから始め、いろいろなマッチング集会にも参加して名刺交換をする日々が続いた記憶があります。

国税の職場にいた時は、招かざる客には違いないものの、初めての人でもまじめに話を聞いてもらえました。でも、開業間もない時期に突然訪問しても、表面上は如才ない応対をしてくれるものの、まともに相手になってくれるところは少なく、まして顧問契約に至ることなどありませんでした。
当時私は、「やはり国税の看板は大きかったな」と強く感じたことを覚えています。

「税理士」として仕事に向き合う

そのような状況から私が学んだ事は、「国税時代のことや官職は忘れよう」「一人の税理士として、しっかりとした仕事をすることから始めよう」ということでした。

数少ない顧問先で創業間もない個人事業者や法人経営者と接するときなどは、「税務のことに限らず、自分が対応できることは何でもさせてもらおう」という姿勢で仕事と向き合った覚えがあります。

国税勤務から得た学び

国税勤務での経験について考えてみると、自分では認識していなかったものの多方面に渡っていろいろな経験や知識を学びました。
例えば、各業種、各業界のしきたりとか業界用語など、雑学と言われる分野のことまで知りました。

そのような中でも何より大きかったことは、人と接することに対して何の抵抗もなくなったことです。
初めて会う人に対しても、相手の立場や考えを尊重したうえで自分の考えを伝えることができましたし、意見の異なる人に対しても、自分の考えを理解してもらえるように説明することも学びました。

これらのことは、税務調査や審査請求(争訟)、職場の管理者としての経験などを通じて培えたものだと思っています。
国税での経験は人それぞれで異なります。でも、人との関わりという点においては皆同じであり、どのような国税の職場経験であれ、その人を高める職場だと私は思っています。

国税経験は税理士業に必ず生きる!!

OB税理士は税理士としては間違いなく一年生です。しかし、OB税理士は、雑学を含めた常識や知識は幅広く、一人の人間としての完成度が高いベテランなのだと思います。

開業後、夢中で過ごしてきた8年です。顧問先の数は別として、今となってみれば、それなりに税理士業を営んでいます。顧問先からの要求に対しても、それなりに応えているという自負のようなものも芽生えています。

退官する時期は人それぞれであり、税理士業を続けられる年数も人それぞれでしょう。
けれども、せっかく身に付けた知識、経験です。自分自身のため、周囲の人々のため、ひいては事業経営や税務上の課題を抱えている人たちのためにその能力を活用しないのはもったいないことです。

メッセージ最後にお伝えしたいこと

OB税理士はいい年をした税理士一年生です。
しかしながら、自分に自信を持ち、目の前の仕事に精一杯取り組むことを続けていけば、自ずと道は開けると確信しています。

どうか、あなたも、OB税理士の道を私たちと一緒に歩いてください。TKCでお待ちしています。