2018年4月号Vol.110

【寄稿1】サービスデザイン思考による行政サービス改革

株式会社三菱総合研究所 社会ICTイノベーション本部 主席研究員 村上文洋

行政サービス改革で、にわかに注目されるようになった「サービスデザイン思考」。システム開発をはじめ“ものづくり”の観点では広く浸透している考え方だ。多くの市区町村にとって未知の世界といえるサービスデザイン思考について考える。

 2018年1月16日に閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」では、政府として初めて「サービスデザイン」の正式な導入が示された。
 これまでの電子行政の取り組みは、どちらかといえば提供者目線で、縦割り、紙前提の既存の制度の見直しを十分に検討しないまま、しかも「行政手続き」という断面のみを切り取って電子化を考えていた。これに対し、今後は利用者(国民や事業者など)の立場に立って、より便利なサービスを提供しようとあらためて宣言したのが今回の実行計画である。
 具体的には、「サービスデザイン思考を導入し、利用者中心の行政サービス改革を推進」し、「一連のサービス全体における利用者の体験(ユーザーエクスペリエンス)を最良とするサービスの実現を目指す」として、「サービス設計12箇条」が示された。
 提供者目線ではなく利用者目線で考えるこのような取り組みは、国だけでなく地方公共団体でも今後積極的に推進すべきであるが、その際、行政サービスの中だけで閉じて考えないことが肝要である。

サービスデザイン思考をいかに身につけるか

サービスデザイン12箇条

 われわれの生活や企業活動は、多くの民間サービスの中で行われており、行政との接点よりはるかに多い。
 例えば引っ越しをする場合、これまでの電子行政の検討では、転出・転入・転居届といった、行政手続きをいかにオンラインでワンストップ化するかが考えられてきた。しかし、引っ越しする人の立場に立って考えてみると、引っ越し先の地域や住まいの選定から住宅の契約手続き、引っ越し業者の選定、家具の購入や粗大ごみの始末、電気・ガス・水道の手続き、銀行やクレジットカード、携帯電話、運転免許証の住所変更など、行政関係だけでなく民間サービスに関わるものがたくさんある。これら官民にまたがるさまざまな作業や手続きを、時間軸に沿っていかに便利にするかがポイントになる。
 また、行政が提供するオンラインサービスには、使い勝手のよくないものも少なくない。日々、競争にさらされている民間サービスの方が圧倒的に使い勝手がいい。これからは行政の自前主義はやめて、民間サービスを積極的に活用するようにした方がいい。行政手続きをワンストップ化するのではなく、「民間サービスのついでに行政手続きも済ますことができるようにする」のが、本当の意味でのサービスデザインである。
 サービスデザイン思考を身につける方法はさまざまで、関連書籍も多数発行されているが、最も効果的な手法の一つとして、利用者を巻き込んだワークショップの開催が挙げられる。
 その方法はいろいろあるが、例えば内閣官房IT総合戦略室が開催したサービスデザインワークショップでは、「子育て」「引っ越し」「死亡・相続」の各テーマでグループに分かれ、約4時間かけて、「ペルソナ設定」→「サービス分析」→「サービスデザイン」→「発表・講評」の流れでワークショップを行った。
 今後はさまざまなサービスがAPI(Application Program Interface:人手を介することなくコンピューター同士がデータをやり取りするなどしてサービスを自動化すること)でつながるようになる。民間サービスでは既にさまざまな分野でAPIによる連携が進みつつある。このようなAPIでつながったサービス群を「APIエコノミー」という。これからはAPIエコノミーの中のどこに、どのような形で行政サービスを組み込むか、組み込んでもらうかを考える必要がある。

提供者目線から利用者目線へ

まずは利用者目線で全体を俯瞰することから

 人口減少社会では、社会全体の働き手が減少し、行政職員も不足する。行政サービスを維持するためには、行政職員の大幅な生産性向上が不可欠である。小規模な生産性向上であれば職場のカイゼン活動などでも実現できるが、大幅な生産性向上の実現には、大胆な発想の行政サービス改革が必要である。
 そのためには、以下の3点が重要となる。
1. 利用者目線のサービスデザイン思考(加えてAIでもIoTでも使える技術は何でも総動員)
2. 自前主義からの脱却(民間サービス経由での行政サービスの提供)
3. APIエコノミーへの参加(APIでつながったサービス群にいかに行政サービスを組み込んでもらうか)

 常に利用者の立場に立ち、全体を俯瞰して、全体最適の視点でものを考えることが、サービスデザイン思考を習得する第一歩である。

※掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、取材当時のものです。

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