【ユーザー事例】 番号制度を見据え、
住民サービスと業務の一層の改革をめざす

基幹系ソリューション > 栃木県大田原市

大田原市 総合政策部長 黒﨑博孝氏

住所
栃木県大田原市本町1-4-1
電話
0287-23-1111
面積
354.12平方キロメートル
人口
75,678人(平成26年9月1日現在)
URL
http://www.city.ohtawara.tochigi.jp/
黒﨑博孝部長

黒﨑博孝部長

──マイナンバー制度に向けた準備状況を教えてください。

黒﨑 大田原市では総合計画『新大田原レインボープラン』で掲げた基本政策の実現を目指し、「市民サービス向上と地域活性化の推進」と「電子自治体の推進」の視点からなる『大田原市地域ICT総合推進計画』(平成25年8月策定)を進めています。マイナンバー制度への対応もその一つに位置づけられます。

 マイナンバー対応についてはかなり早い段階から検討してきましたが、これを全庁的な取り組みとすべく5月30日に市長を本部長とする「電子市役所推進本部」を発足しました。主要メンバーは各部の部長で、情報企画監として外部の専門家にも参加してもらっています。ここでの意思決定に基づいて、マイナンバーの対応準備も進める方針です。また、その実務の中心となるのが総合政策部です。政策推進課が業務プロセスの見直しや条例改正等の準備を、情報政策課が推進本部の事務局および技術的な側面からの支援を担当し、関係部門と連携し取り組みを進めています。

業務プロセス見直しのチャンス

──業務への影響は、いかがでしょうか。

黒﨑 マイナンバーは、業務プロセスを見直す絶好のチャンスだと捉えています。

 市区町村では、これまでにも業務の効率化を目的として情報化を進めてきました。しかし、その根底には“紙文化”が根強く残っていて、本当の意味での業務改善・効率化には至っていなかったと感じています。この点、マイナンバーでは組織の枠を超えたデータ連携が前提となります。当然、住民サービスや業務プロセス、あるいは情報セキュリティー対策なども、これまでとは大きく変えていかなければなりません。各課が個々にシステムを調達・整備して、情報化を進めるというやり方では対応できないことも明らかです。現在、推進本部において影響を受ける業務の洗い出しと、業務プロセスの再構築に向けた検討を行っているところですが、マイナンバーを機にシステムや業務処理の統制という点でも劇的に変わるでしょうね。そして、その“道具”となるのがクラウドです。

──大田原市では予定を7カ月前倒しして、今年10月1日から「新世代TASKクラウド(番号制度対応版)」のパイロット運用を開始されます。

黒﨑 クラウドのメリットは、いろいろあると思います。その一つがBCP対策です。東日本大震災で、この一帯も震度6強の揺れに見舞われました。幸いサーバー室に被害はありませんでしたが、この経験から庁舎内で重要なデータを守るのではなく、専用のデータセンターで管理するべきだと考えるようになりました。

 また、作業の手間やコストの面でもクラウドは有効です。少子高齢化に加え、これからは人口減少もどんどん進みます。職員もさらに減っていく中で、行政スケールの縮小は避けようがありません。すでに窓口業務の一部や施設の運営・管理を外部委託しているところもありますが、そのような傾向はますます広まっていくでしょう。そう考えると、もはや庁内でサーバー機器を維持・管理する時代ではないと思いますね。これだけクラウドが普及し、その効果も実証されているのであれば、活用しない手はありません。

──そうした現状を踏まえ、「新世代TASKクラウド」では臨時職員や外部委託者など業務に不慣れな方でも正確な処理が行えるよう、支援機能を強化しました。

黒﨑 その点では大いに期待しています。

 並行してこれからの住民サービスも考えていく必要があると思います。注目しているのは「マイ・ポータル」の活用です。市民がマイ・ポータルから行政機関が個人の情報をいつ、どことやりとりしたのか確認したり、お知らせを受け取るだけでなく、例えば自分が納めた税金がどのように使われているかを確認できるようにすることで、行政への参加意識を高めることにもつながると考えています。

 また、個人番号カードの付加価値をいかに高めるかも重要なポイントです。

 例えば、大田原市では生活習慣病の予防に役立てるため「めざせ300万歩」というウォーキング推進事業を行っています。これはスマートフォンへ専用アプリをダウンロードし万歩計代わりとするものですが、これにポイント制度を付与して個人番号カードで管理できるようにしてもいいかもしれません。あるいは、「子育てチケット」や「デマンド交通(※)などのチケット」での活用も有効だろうと考えています。さらに、これまで行政がばらばらに保有してきたビッグデータの活用なども考えられるでしょう。図書館カードや印鑑登録カード以外にもいろいろと知恵を絞って、より質の高い市民サービスへつなげていきたいですね。
※ デマンド交通=バスやタクシーが利用者のニーズに応じて運行する交通形態

着々と進む「市民参加型行政」の試み

──マイナンバー制度をきっかけに、市民サービスの可能性も広がりますね。

黒﨑 昨今のICTの進化によって、スマートフォンやタブレット型端末を活用した行政サービスへの期待も高まっています。それも単に行政からの一方通行ではなく、市民からの情報提供、情報の共有化を図ることが欠かせません。低コストでも充実したサービスを実現させる「市民参加型行政」の実現です。そこで今年7月に市公式フェイスブックを立ち上げたほか、市民がスマートフォンを活用して道路の補修箇所など身近な課題を情報提供できる仕組みも整備しました。さらに、空き家対策や婚活支援などでもICTの有効活用を検討しています。

 「電子市役所」と言っているだけでは市民に伝わりません。まずは、われわれが率先してICTを利活用していかなければ。そこで、部課長職員を対象にタブレット端末の配布を決めました。これにより会議資料のペーパレス化に加え、庁内外とのコミュニケーション強化や意思決定の迅速化を図れるものと期待しています。とはいえ、行政の中だけで検討してもなかなか新たな発想は生まれません。TKCにもシステムの提供だけではなく、ぜひ行政の片腕としてマイナンバー導入後を見据えた新たな市民サービスの提案を期待しています。