【ユーザー事例】 番号制度を視野に、自治体クラウドを共同運用

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埼玉県町村会 参事 縄田 聡氏 / 情報システム共同化推進室 ITアドバイザー 市瀬英夫氏

縄田 聡参事

縄田 聡参事

──クラウドによる基幹系システムの共同利用に至った経緯を教えてください。

縄田 埼玉県町村会(以下、町村会)は、町村事務の円滑な運営と地方自治の振興発展を図ることを目的に大正7年に設立され、現在は23町村で構成しています。

 基幹系システムの共同調達は、平成23年7月の役員・政務調査合同会議において、ある首長から提案があったことに端を発しています。これを受けて担当者レベルの研究会が発足し、先進事例の調査研究とともに共同利用の課題点などを整理し、県内町村に適した自治体クラウドの形態を考えました。その成果を踏まえ、平成24年5月に町村会で共同化の推進を決定し、埼玉県町村情報システム共同化推進協議会(以下、協議会)を設立しました。

業務範囲など短期集中で検討

──共同調達に向けて、どのように準備を進められたのでしょうか。

縄田 協議会では、平成24年10月を目標年次とした「基本計画」を策定し、この間に共同調達に向けた対象業務範囲や機能要件などの具体的検討を行うこととしました。検討に時間をかけすぎれば、システム更新などの兼ね合いから参加を見送らざるを得ない団体が現れることも懸念されました。そうなると、共同化による「割り勘効果」を生かすこともできなくなります。そのため最終ゴールを決めて、スピード感を大切にしました。その際、急ぐだけではなく先進事例の検討期間と同程度の期間を確保することで、質的にも十分な検討が行えることも確認していました。平成27年度には番号制度の導入を控えていることもあり、短期集中で内容の濃い議論を行うことができました。

 また事前に研究会で実施した費用削減効果調査の結果などから、まず基幹系システムの共同利用を目指すこととしました。短期間でも確実にシステムを調達し稼働させるため、基幹系の中でも住民基本台帳、税、国保、介護といった重要な業務に絞り込みました。対象外となった業務も完全に共同化の対象から除くのではなく、決定事業者のシステムを利用できるなど、柔軟な方針としています。

 そして、想定される費用負担額をもとに各団体に共同調達へ参加するかどうかの意思決定をしていただき、最終的には18団体が参加表明をしました。

──18団体が共同で運用する基幹系システムの機能要件をまとめるのは、大変だったのでは?

市瀬 一般財団法人全国地域情報化推進協会の標準仕様書をもとに各団体の業務主管課が業務上欠かせない機能を追加する方法でまとめました。7月には、これをRFI(情報提供依頼書)として提示しています。そして、これに対するベンダーからの回答と各団体の意見を事務局が取りまとめ、RFP(提案依頼書)の機能要件では「必須機能」と「要望機能」に区分けして提示しました。

選定で重要な利用者視点

──システム選定では、どんな点に留意されたのでしょうか。

市瀬英夫ITアドバイザー

市瀬英夫ITアドバイザー

市瀬 平成24年11月に、公募型プロポーザル方式による事業者選定を実施しました。選定では「安かろう、悪かろう」を避けるため、総合評価に準じた方式を採用しました。また、コスト面では上限額と下限額を設け、公平・公正な視点で選定できるようにしました。さらに審査は、企画提案書と機能、帳票、価格を評価する第一次審査、デモンストレーションとプレゼンテーションを評価する第二次審査の二段階で行いました。

 特徴的なのは、機能要件の策定や機能評価へ各団体の業務主管課に参加してもらったことです。これは実際にシステムを利用する担当者が十分に納得できるよう工夫したもので、およそ300名の職員が関わりました。自治体クラウドの導入では、この「誰が決めるか」という点がとても重要だと思います。特に、今回の調達ではカスタマイズは極力行わない方針としていたため、担当者も真剣に各社のシステムを見比べていましたね。

──今回、TASKクラウドサービスをご採用いただきましたが、選定理由は何だったのでしょうか。

縄田 総合評価の結果、TKCが最も評価点が高かったということです。事前に徹底した情報収集を行われたのでしょう。われわれの目指すところを十二分に汲み取った提案内容だと感じました。

 また、今回の調達ではサポートに対する配点を高くしました。やはり、町村の場合は担当者の人数も限られるため、システムを円滑に立ち上げるにはベンダーのきめ細やかなサポートが必要不可欠となります。その点でも、TKCは定期的な巡回訪問を通して十分なサポート体制を構築することを表明するなど、評価が高かったですね。

──今後の予定について教えてください。

縄田 「TASKクラウドサービス」は今年10月から稼働した2団体を皮切りに、27年4月までに全18町村で段階的に運用がスタートします。運用段階を迎えた自治体クラウドの共同利用では最大規模となるだけに、国や全国の市町村もその成果を見守っています。そのためにも、まずは全団体をきちんと立ち上げることですね。

 また今後、基幹系システムに続いて情報系システムも共同利用できるのか検討していく予定です。さらに参加を見送った町村が共同利用を希望した場合のことも考えておく必要があるでしょう。

 最大の課題は、番号制度への円滑な対応です。番号制度と共同化をどう結びつければ町村にとってよりよいものとなるのか、いまだ明確な答えはありません。町村会には情報化の推進だけではなく、各種情報を収集・提供し町村の情報政策を支援していくことも期待されていると考えています。そうした期待に応えるためにも、TKCさんには一層の協力をお願いしたいですね。