【ユーザー事例】 クラウドを核に、業務の継続性確保へ取り組む

基幹系ソリューション > 宮城県七ヶ浜町

宮城県七ヶ浜町政策課 情報政策係長兼震災復興推進室主幹 藤井孝典氏

住所
宮城県宮城郡七ヶ浜町東宮浜字丑谷辺5番地の1
電話
022-357-2111
面積
13.27平方キロメートル
人口
19,993人(平成24年12月1日現在)
URL
http://www.shichigahama.com/
藤井孝典氏

藤井孝典氏

──このほど、基幹系システムをクラウドサービスへ移行されました。導入決定までの経緯を教えてください。

藤井 実は、最初からクラウドサービスの利用を考えていたわけではありません。サーバ機器の老朽化などもあって、2年ほど前から基幹系システムのリプレースに向けた検討をしていたところに、東日本大震災が発生したんです。宮城県では沿岸部を中心に甚大な被害に見舞われ、七ヶ浜町でも大津波によって約30%が浸水し3740世帯の家屋が被災するなど大きな被害を受けました。本庁舎は建物に軽微なひびが入った程度でサーバ機器などにも大きな被害はありませんでしたが、近隣団体で庁舎の倒壊や住民データの消失などが発生したのを目の当たりにし、にわかにクラウドサービスを意識するようになりました。

 海抜約60メートルと高台にある庁舎は、水害に見舞われる危険性は低いと思います。しかし、リスクは自然災害だけではありません。例えば震災の二次災害等の火災によって住民データが消失するかもしれない。そうした不測の事態への対応も視野に入れながら、内部検討会でオンプレミス(庁内設置型)とクラウドサービスのそれぞれのメリット・デメリットを洗い出し検討を重ねた結果、現時点で有効な選択肢はクラウドだろうという結論に至りました。

 総務省が「被災地における自治体クラウドの導入支援 (被災地域情報化推進事業)」を決定したのも、クラウド移行の議論を加速させることになりましたね。

大震災を機に進んだクラウド検討

──クラウドを選ぶにあたり、セキュリティ面などは課題となりませんでしたか。

藤井 震災を機に、市町村の意識は「データを預ける不安」から「庁内に持つ不安」へと180度転換しましたよね。もちろん検討の過程では、法務担当者も交えて個人情報保護条例やセキュリティポリシー面での確認を行いました。また、データセンターについては、設備の堅牢性や実際のサービス運用体制なども十分に確かめました。

──その結果、TASKクラウドサービスを採用されたわけですが、決め手は何だったのでしょうか。

藤井 一番はコストでしたね。クラウドサービスを採用する要因の一つには電算コストの削減もありました。そこで、オンプレミスの場合とクラウドへ移行した場合の7~10年間のランニングコストを比較したところ、クラウドサービスを活用した方が安価となることが分かりました。サーバを庁内に置かないことで、これまでかかっていた運用保守にかかる人件費や電気代、セキュリティ対策にかかる経費など見えないコストの削減が期待できる上に、データを安全に保管できる体制も整備されるわけです。

 また、ソフトウェアの変更が伴わないため、使い慣れているシステムという点で移行に伴う職員の業務負荷を極力回避できることもありました。最優先で震災復興へ取り組むなかで、無駄な作業時間は少しでも減らしたいですからね。

 通常のリプレースと違って、今回は被災地域情報化推進事業であったため申請準備に多少時間がかかったものの、結果的に災害に強い情報基盤の整備へいち早く取り組むことができました。

──クラウドで以前と変わった点は何ですか。また導入効果は何でしょうか。

藤井 職員にはシステムが変わったという感覚はないようです。むしろ、クラウドになって以前よりレスポンスが早くなったという声を聞きますね。システムを管理する側としては、サーバが減ったことで管理が楽になりました。OSのバージョンアップ対応なども不要だし、法制度改正の際にもこれからはサーバの容量を気にすることなく的確に対応することだけに集中できるようになります。

 また七ヶ浜町では、これまで情報セキュリティを考慮し庁内ネットワークを「内部事務」と「基幹業務」に分け、それぞれ独立したネットワークとして構築していました。そのため職員によってはパソコンが2台必要など非効率な状況となっていたため、以前からネットワークの一本化を考えていました。クラウドへの移行により、この問題も解決することができたんです。具体的には最新の仮想化技術によるリモートデスクトップを使って、内部事務ネットワークに接続されたパソコンから基幹系システムを操作できるようにしました。これにより余分なパソコンを持つ必要がなくなったことも、クラウドの副次的効果といえるでしょう。

限りなくリスク“ゼロ”へ近づくために

──今後の計画はいかがでしょうか。

藤井 まずは、BCP(業務継続計画)の策定を早急に進めたいと考えています。東日本大震災の教訓を活かし、組織全体として機能不全に備えるための検討を進める計画です。

 これを見越して、基幹系システムのクラウド化にあたっては通信回線が遮断されることを想定して専用回線を二重化するとともに、万一の場合でも「重要業務」を優先して継続・早期復旧できるよう照会発行サーバを設置しました。しかし、電力供給が途絶えれば、情報システムはまったく利用できなくなります。

 そのため、重要業務に与える「リスクの評価と被害の想定」を把握した上で、最低限必要となるリソースには何があり、またシステムを稼働させるためにどの程度の自家発電設備が必要か、などの検討が急がれると考えています。さらに代替施設でも重要業務を継続することができるよう、今後はモバイルカードや衛星電話の利用も検討する必要があるでしょう。

 どれだけ万全な対策を講じても、重要業務が中断するリスクがゼロになることはありません。しかし、限りなくゼロに近づけることはできます。これからも、町民が安全で安心に暮らし続けられることを最優先に、行政サービスの継続性確保へ真剣に取り組んでいきたいと考えています。