【ユーザー事例】地方公会計改革へ
対応システムをいかに選ぶか

新たな地方公会計への対応が急がれる中、早々と「日々仕訳方式」のクラウド型システムの導入を決めた山梨県韮崎市と北杜市。その選定ポイントについて両市担当者に聞いた。

北杜市役所、韮崎市役所、両市担当者

■北杜市役所
企画部財政課財政担当主幹
加藤 寿氏(左奥)
企画部財政課財政担当副主幹
篠原 振一郎氏(左手前)
■韮崎市役所
企画財政課情報推進担当副主幹
平賀 教人氏(右手前)
企画財政課財政担当主任
望月 利人氏(右奥)

 平成29年度までに求められている「統一的な基準による財務書類等の作成」。全ての地方公共団体では、複式簿記の導入にあたり、伝票の入力ごとにリアルタイムで仕訳を行う「日々仕訳方式」と年度末に一括して仕訳を行う「期末一括仕訳方式」のいずれかを選択し、システムの新基準対応を進めていかなければならない。

 そうした中、山梨県の韮崎市と北杜市ではいち早く「日々仕訳方式」による「TASKクラウド公会計システム」の導入を決め、平成29年度からの発生主義・複式簿記の対応を目指している。

選定ポイントは「クラウド」
「日々仕訳方式」「操作性」

 今回、システムを選定するにあたり重視したポイントはどこだったのか。韮崎市と北杜市に伺うと、①クラウド方式、②日々仕訳方式への対応、③操作性に優れたシステム──という答えが返ってきた。

1.クラウド方式

 北杜市では、現在利用しているシステムがOSのサポート期限などによりシステム入れ替えが急務となったことから、次期システムの検討にあたっては「クラウド方式」を優先して考えたという。常に最新の状態で、安心してシステムを使用できるクラウドに大きなメリットを感じたと話す。

 一方の韮崎市では、クラウド方式には固執していなかったそうだ。しかし、すでに基幹システムをクラウド化していることもあり、メンテナンスに関する職員の負荷軽減やBCPの観点から、評価時には自庁に設置する方式よりもクラウド方式の方が心理的に有利に働いたのではないかという。また、地方公共団体専用のLGWAN回線を利用することも「安心」要因の一つであったようだ。

2.日々仕訳方式への対応

 両市が「日々仕訳方式」の採用を決めたのは、なぜだったのか。

 韮崎市では、当初「期末一括仕訳方式」でもいいと考えていたそうだ。しかし、「システム選定を進める中、実際に各社のシステムデモなどを見て両方式を比較すると、『期末一括仕訳方式』の場合、年度末に過去の伝票を見直す作業が必要になることが予想され、かなりの業務負荷になることに懸念を感じた」という。

 また、一つのパッケージで「固定資産台帳整備」から「日々仕訳方式」まで対応できることも、システム決定の際の大きな要因になったと話す。この点は、北杜市も同じ意見を述べている。

 その上で、「『期末一括方式』を採用した場合、国が配布する標準的なソフトウエアも導入することになるが、二つのシステムを運用すると何かトラブルがあった場合、切り分けの問題が発生する」(北杜市)とリスク回避の点も考慮した。「一つのシステムであれば、その提供ベンダーに問い合わせるだけで問題を解決できるため、一番効率的な運用形態であり、職員の負担も少なく、迅速に問題を解決することができると考えた」というわけだ。

3.操作性に優れたシステム

 両市が挙げた選定ポイントで最も重視したのが「操作性」だった。

 北杜市の言葉を借りると「機能面のみを追求しても、日々利用する職員にとって使いづらいシステムでは意味がない」ためだ。

 実際、選定時のデモでは新基準への対応に関して重点的にシステムの動きを確認したという。「提案書を読んでいるだけではどうしても見えない部分がある。システムに触れる時間の長い職員が実際の動きをその目で確認しないと、正しく評価できない」(北杜市)。

 中でも重視したのがデータの連動性だ。「資産の取得を例にすると、日々の伝票入力を起点としてどのように複式簿記の仕訳データが登録されて、どのように資産台帳が登録されるのか──という一連の流れを確認した」と語る。

 北杜市では、これまで公有財産等を別管理しており、それぞれが独立した業務のため異動情報の報告漏れや転記ミスなど履歴管理に常に気を配らなければならない状態にあった。そうした業務の省力化を図るためにも、複数部署による重複管理を解消し公有財産を一元的に管理することで、「入力の手戻りがなく、一つの作業が他の処理とリアルタイムに連携できること」が重要だったわけだ。

 韮崎市も同様の考え方で、選定時にはシステムデモに長い時間を充てていた。「業務ごとにデモを実施することで、最終的に職員が使いやすいシステムを選定できるよう工夫した」(韮崎市)という。

新制度への対応準備では
会計課との連携がカギ

 本誌4月号特集で、有限責任監査法人トーマツの小室将雄氏が述べたように、新たな公会計整備の目的は単に財務書類を作成することではなく、最終的には行政経営に生かすことにある。この「公会計の活用」について、両市はどのように考えているのだろうか。

 韮崎市は、「まずは財政分析のツールとしての活用を検討している。統一的な基準により他団体との比較が正確にできるようになることから、有形固定資産の老朽化比率等も財務書類の中から算出することができる。同規模団体との比較や、また世代間公平の視点も取り入れることで、住民に対して根拠に基づいた説明をすることも考えている」と語る。そのためにも、平成27年度中に固定資産台帳の整備を終えられるように力を入れているとのことだ。

 北杜市は、「峡北地域の8町村が合併して誕生した市のため、現在350超の公共施設を抱えている。だが、合併特例が終了となり、すべての施設をこれまで通り維持・管理していくことが困難な状況になる。これらの整理・統合を含めて今後の公共施設のマネジメントを考える上で、公会計を活用していきたい」と語っている。

◇   ◇   ◇

 さて、システムを選ぶにあたり、忘れてはならない公会計における一つの〝変化〟がある。

 これまでの公会計改革は財務書類の作成など、どちらかと言えば財政担当者がメインで対応できるものであった。だが、これからは違う。この点について、両市は「複式簿記の導入で、伝票を所管する会計課との連携が非常に重要となる」と強調する。そのためにも「システム改修・切り替えも含め、関係部署と協力しながら急ぎ準備を進めることが必要」なのである。