注目の判例

2018年

2018.11.13
接見妨害等国家賠償請求事件 new
LEX/DB25449764/最高裁判所第一小法廷 平成30年10月25日 判決 (上告審)/平成29年(受)第990号
拘置所に被告人として勾留されていた上告人X1及びその弁護人であった上告人X2が、上告人X1が刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして保護室に収容中であることを理由に拘置所の職員が上告人X1と上告人X2との面会を許さなかったことにより、接見交通権を侵害されたなどとして、被上告人に対し、慰謝料及び遅延損害金の支払を求め、被告人が保護室に収容中であることを理由として被告人と弁護人との面会を許さない措置の違法性につき、上告人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求をいずれも棄却したため、上告人が上告した事案で、拘置所において刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして保護室に収容されていた被告人である上告人X1との面会を求める本件申出が、その弁護人である上告人X2からあったのに対し、同拘置所の職員は、本件申出があった事実を上告人X1に告げないまま、保護室に収容中であることを理由として面会を許さなかったもので、上告人X1は、本件申出の前後にわたり保護室において大声を発していたが、当時精神的にどの程度不安定な状態にあったかは明らかではなく、意図的に抗議行動として大声を発していたとみる余地もあるところ、本件申出があった事実を告げられれば、上告人X2と面会するために大声を発するのをやめる可能性があったことを直ちに否定することはできず、上告人X1の言動に係る事情のみをもって、特段の事情があったものということはできないとし、原判決中、上告人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求に関する部分を破棄し、特段の事情の有無等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例(補足意見あり)。
2018.11.13
危険運転致死傷,道路交通法違反被告事件 new
LEX/DB25449766/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月23日 決定 (上告審)/平成29年(あ)第927号
被告人は、夜間、片側2車線道路で、第1車線を進行するA運転の普通乗用自動車(A車)のすぐ後方の第2車線を、普通貨物自動車(被告人車)を運転して追走し、信号機により交通整理が行われている交差点を2台で直進するに当たり、互いの自動車の速度を競うように高速度で走行するため、本件交差点に設置された対面信号機の表示を意に介することなく、本件信号機が赤色を表示していたとしてもこれを無視して進行しようと考え、Aと共謀の上、本件信号機が約32秒前から赤色を表示していたのに、いずれもこれを殊更に無視し、Aが、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約111kmで本件交差点内にA車を進入させ、その直後に、被告人が、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速100kmを超える速度で本件交差点内に被告人車を進入させたことにより、左方道路から信号に従い進行してきたB運転の普通貨物自動車(C、D、E及びF同乗)にAがA車を衝突させて、C及びDを車外に放出させて路上に転倒させた上、被告人が被告人車でDをれき跨し、そのまま車底部で引きずるなどし、B、C、D及びEを死亡させ、Fに加療期間不明のびまん性軸索損傷及び頭蓋底骨折等の傷害を負わせた事故につき、第1審判決は、被告人及びAに対しそれぞれ懲役23年を言い渡したため、被告人両名が控訴し、控訴審判決は、被告人及びAが、いずれも、本件信号機の赤色表示を確定的に認識し、又はそもそも信号機による交通規制に従うつもりがなくその赤色表示を意に介することなく、自車を本件交差点に進入させたものとして、自動車運転処罰法2条5号にいう赤色信号を「殊更に無視し」たことが推認できるとした上、被告人及びAは、本件交差点に至るに先立ち、赤色信号を殊更に無視する意思で両車が本件交差点に進入することを相互に認識し合い、そのような意思を暗黙に相通じて共謀を遂げた上、各自が高速度による走行を継続して本件交差点に進入し、危険運転の実行行為に及んだことが、優に肯認できるとして、A車との衝突のみによって生じたB、C、E及びFに対する死傷結果を含む危険運転致死傷罪の共同正犯の犯罪事実を認定した第1審判決を是認し、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案で、被告人とAは、赤色信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する意思を暗黙に相通じた上、共同して危険運転行為を行ったものといえるとし、被告人には、A車による死傷の結果も含め、自動車運転処罰法2条5号の危険運転致死傷罪の共同正犯が成立するとし、危険運転致死傷罪の共同正犯の成立を認めた第1審判決を是認した控訴審判決の判断は正当であるとし、本件上告を棄却した事例。
2018.11.13
著作権侵害差止等請求事件 new
「新・判例解説Watch」知的財産法分野 2月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449723/大阪地方裁判所 平成30年 9月20日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第2570号
ハワイに在住するクムフラ(フラダンスの師匠ないし指導者)である原告は、従前、被告(フラダンス教室事業を営む会社)と契約を締結し、被告ないし被告が実質的に運営するHHAやその会員に対するフラダンス等の指導助言を行っていたが、両者の契約関係は解消され、原告が、被告に対し(1)原告は、被告が、被告の会員に対してフラダンスを指導し、又はフラダンスを上演する各施設で、本件振付けを被告代表者自らが上演し、会員等に上演させる行為が、原告が有する本件各振付けについての著作権(上演権)を侵害すると主張して、被告に対し、本件各振付けの上演の差止めを求め、(2)原告は、被告が、被告の会員に対してフラダンスを指導し、又はフラダンスを上演する各施設で、本件楽曲を演奏する行為が、原告が有する本件各楽曲についての著作権を侵害すると主張して、被告に対し、本件各楽曲の演奏の差止めを求め、(3)原告は、被告が、本件各振付けを上演し又は被告の会員等に上演させた行為及び本件各楽曲を演奏した行為が、原告の著作権を侵害すると主張して、被告に対し、不法行為に基づき、損害賠償金642万2464円(使用許諾料相当額409万2120円及び弁護士費用233万0344円)の一部として250万3440円の支払等を求め、(4)原告は、被告との間で、HHA等が平成26年秋に開催するワークショップ等で被告ないしKHAの会員に対してフラダンス等の指導を行うことを内容とする準委任契約を締結していたところ、被告が同契約を原告に不利な時期に解除したと主張して、被告に対し、損害賠償金385万1910円の支払等を求めた事案において、フラダンスの本件各振付けの著作物性につき、全体として見た場合に原告の個性が表現されており、全体としての著作物性を認め、原告の本件各振付けの上演等の差止請求及び本件各楽曲の演奏の差止請求は、本件振付け6等の上演等の差止めを求める限度で理由があるとして、一部認容した事例。
2018.11.13
住居侵入、強盗殺人、強盗殺人未遂、窃盗被告事件(愛知一家強盗殺傷事件) new
LEX/DB25449775/最高裁判所第一小法廷 平成30年 9月 6日 判決 (上告審)/平成27年(あ)第1585号
被告人が、(1)窃盗事件を起こして検察官から罰金刑に処せられる見込みである旨告げられて、罰金の支払に充てる資金を犯罪によって手に入れようと考え、金品窃取の目的で、A方に侵入して物色中、Aに発見されるや、金品を強取することを決意し、A(当時57歳)をモンキーレンチで殴打するなどして殺害し、Aの二男B(当時26歳)を包丁で突き刺すなどして殺害し、その後帰宅したAの三男C(当時25歳)をクラフトナイフで突き刺すなどして殺害しようとしたが、死亡させるに至らず、その際、金品を強取したという住居侵入、強盗殺人、強盗殺人未遂のほか、(2)携帯電話機や普通乗用自動車を窃取したという窃盗2件から成る事案の上告審において、上記(1)の犯行前は前科がなかったことなど、被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても、被告人を死刑に処した第1審判決を維持した控訴審の判断を是認せざるを得ないとして、本件上告を棄却した事例。
2018.11.06
遺留分減殺請求事件
LEX/DB25449749/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月19日 判決 (上告審)/平成29年(受)第1735号
上告人が、被上告人に対し、本件相続分譲渡によって遺留分を侵害されたとして、被上告人が遺産分割調停によって取得した不動産の一部についての遺留分減殺を原因とする持分移転登記手続等を求め、本件相続分譲渡が、亡Aの相続において、その価額を遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与(民法1044条、903条1項)に当たるか否かが争われ、原審は、上告人は遺留分を侵害されていないとして、上告人の請求を棄却すべきものとしたため、上告人が上告した事案で、共同相続人間でされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する「贈与」に当たるとし、本件相続分譲渡はその価額を遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与に当たらないとして上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2018.11.06
公金違法支出損害賠償等請求事件
LEX/DB25449756/最高裁判所第三小法廷 平成30年10月23日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第185号
鳴門市が経営する競艇事業に関し、市が平成25年度において漁業協同組合である上告補助参加人らに対して公有水面使用協力費を支出したことが違法、無効であるとして、市の住民である被上告人(原告・被控訴人)らが、地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき、上告人(被告・控訴人)を相手に、当時の市公営企業管理者企業局長の職にあった者に対する損害賠償請求及び参加人らに対する不当利得返還請求をすること等を求める住民訴訟の事案の上告審で、市が本件各請求権を放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であるとは認め難いというべきであり、本件議決が市議会の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできないとし、本件議決を受けて、上告人がA及び参加人らに対し、本件各請求権を放棄する旨をそれぞれ通知したことにより、その放棄は有効にされ、同請求権は消滅したものと判断し、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、第1審判決中上告人敗訴部分を取消し、同部分に関する被上告人らの請求をいずれも棄却した事例。
2018.11.06
発信者情報開示仮処分命令申立事件 
LEX/DB25561324/東京地方裁判所 平成30年 9月14日 決定 (第一審)/平成30年(ヨ)第1081号
債権者(「美整顔」と呼ぶフェイスアップ、ほうれい線の解消等の施術を行っている者)が、債務者(インターネット検索サービス等を提供する法人)が管理・運営する地図情報と連動した口コミ投稿サイトに何者かが投稿した記事によって、名誉権を侵害された、ないし業務妨害を受けたと主張して、債務者に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づく発信者情報開示請求権を被保全権利として、上記侵害に係る別紙発信者情報目録記載の各情報の仮の開示を求めた事案において、本件投稿は、債権者の名誉権を侵害するものであるとは認められず、本件投稿が業務妨害に当たるということもできないとして、本件申立てを却下した事例。
2018.11.06
所得税更正及び加算税賦課決定一部取消等請求事件
LEX/DB25561323/東京地方裁判所 平成30年 4月12日 判決 (第一審)
不動産貸付業を営む原告は、平成22年分から平成24年分までの本件各係争年分の所得税について、各確定申告及び各修正申告をしたところ、所轄税務署長から、(ア)本件各修正申告に基づく過少申告加算税の各賦課決定処分1を受けるとともに、(イ)本件各係争年分に係る原告の不動産所得につき、〔1〕必要経費に算入することができない修繕費や修繕積立金等を必要経費に算入したこと、〔2〕不動産の減価償却費を過大に必要経費に算入したこと、〔3〕総収入金額に算入すべき敷金を算入していないことなどから、本件各修正申告後の申告額が過少であることを理由に、各更正処分及びこれらの更正処分に基づく過少申告加算税の各賦課決定処分2を受けたため、原告が、(ア)本件各更正処分は、その根拠とされている上記〔1〕~〔3〕がいずれも誤りであるから違法である、(イ)本件各賦課決定処分1及び本件各更正処分等は、理由附記の不備があるから違法である、(ウ)本件各修正申告に係る修正申告書の提出は「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」(国税通則法65条5項)に行われたものであって、本件各修正申告には同条1項の規定は適用されないから、これに反してされた本件各賦課決定処分1は違法である、(エ)本件各更正処分に基づく税額計算の基礎となった事実につき更正前の税額計算の基礎とされなかったことについて「正当な理由」(同条4項)があるから、同項を適用せずにされた本件各賦課決定処分2は違法であると主張して、本件各更正処分並びに本件各賦課決定処分1及び2(ただし、平成23年分及び平成24年分については平成27年11月4日付け裁決により一部取り消された後のものに限り、かつ、課税の計算の基礎となる金額及び計算方法に争いのない部分を除く。)の取消しを求めた事案において、原告主張の本件修繕費及び本件賃室リフォーム代金を必要経費に算入すべきとするものはその一部(本件会社による修繕及びリフォーム工事等の実施並びにこれらによる原告の費用支払債務の確定が認められる部分)につき理由があるとして、請求を一部認容した事例。
2018.10.30
裁判官に対する懲戒申立て事件
LEX/DB25449743/最高裁判所大法廷 平成30年10月17日 決定 (上告審)/平成30年(分)第1号
被申立人(高等裁判所の民事事件担当の判事)が、実名が付された自己のアカウントで、高等裁判所で控訴審判決がされて確定した自己の担当外の事件である犬の返還請求等に関する民事訴訟についての報道記事を閲覧することができるウェブサイトにアクセスすることができるようにするとともに、本件アカウントにおける投稿が裁判官である被申立人によるものであることが不特定多数の者に知られている状況の下で行われたものであった本件ツイートをし、上記訴訟を提起して犬の返還請求が認められた当事者の感情を傷つけた事実につき、被申立人である裁判官に対する懲戒申立てをした事案において、被申立人の行為は、裁判所法49条にいう「品位を辱める行状」に当たるとし、被申立人は、本件ツイートを行う以前に、本件アカウントにおける投稿によって裁判官の品位と裁判所に対する国民の信頼を傷つけたなどとして2度にわたる厳重注意を受けており、取り分け2度目の厳重注意は、訴訟に関係した私人の感情を傷つけるものである点で本件と類似する行為に対するものであった上、本件ツイートの僅か2か月前であったこと、当該厳重注意を受ける前の事情聴取の際、被申立人は、訴訟の関係者を傷つけたことについて深く反省しているなどと述べていたことにも照らすと、そのような経緯があるにもかかわらず、本件ツイートに及んだ被申立人の行為は、強く非難されるべきものであるとして、裁判官分限法2条の規定により被申立人を戒告することとした事例(補足意見がある)。
2018.10.30
各放送受信料支払等請求控訴事件
LEX/DB25561275/東京高等裁判所 平成30年 9月20日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第1993号
1審原告において、(1)1審被告らに対し、1審被告らがそれぞれ運営するホテルの客室等合計3万4426か所に遅くとも平成24年1月までに設置した衛星受信機について、平成26年2月28日付け放送受信契約書が提出されたことにより、1審原告と1審被告らとの間において、それぞれ放送受信契約が成立し、1審被告らが当該受信機の設置の月から放送受信料の支払義務を負うとして、平成24年1月から平成26年1月までの期間における放送受信料合計19億2932万1040円の支払を求めた(第1請求)とともに、(2)1審被告ホテルに対し、同1審被告が平成25年10月まで運営していたホテル支店の客室114室に遅くとも平成24年1月までに設置した衛星受信機について、選択的に、〔1〕1審原告による放送受信契約の申込みが1審被告ホテルに到達した時点で、放送受信契約が成立したとして、平成24年1月から平成25年10月までの期間における放送受信料563万9580円の支払、又は,〔2〕1審被告ホテルは放送受信契約を締結しないことにより、法律上の原因なく1審原告の損失により放送受信料相当額を利得しているとして、不当利得返還請求として上記同額の支払を求めたところ、原審は、1審原告の上記(1)の請求を全部認容し、上記(2)の各請求をいずれも棄却し、1審原告及び1審被告らが敗訴部分を不服として双方が控訴した事案(なお、1審原告は、当審で、上記(2)に関する訴えを変更し、主位的に、1審被告ホテルは、放送法64条1項に基づき、1審原告からの放送受信契約の申込みを承諾する義務があるとして、当該承諾の意思表示をするよう求めるとともに、これにより成立する放送受信契約に基づく放送受信料として563万9580円の支払を求め、予備的に、上記(2)〔2〕の不当利得返還請求を維持した(第2請求))で、1審原告の第1請求を認容した原判決は相当であるとし、1審被告らの控訴を棄却し、1審原告の当審における第2請求の主位的請求を認容した事例。
2018.10.30
工作委託料等請求控訴事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 12月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449701/大阪地方裁判所 平成30年 8月29日 判決 (控訴審)/平成30年(レ)第57号
被控訴人が、控訴人に対し、被控訴人が控訴人に協力するという内容で締結された「別れさせ工作委託契約」と称する契約について、着手金として80万円、上記契約の目的が達成されたときは成功報酬として40万円を控訴人がそれぞれ支払う旨の約定があったと主張して、残金70万円等の支払を求めた本訴請求と、控訴人が、被控訴人に対し、本件契約及びこれに付随する調査委託契約が公序良俗に反し無効であるなどと主張して、不当利得返還請求権に基づき、本件契約等に基づいて支払った既払金等の支払を求めた反訴請求からなる事案の控訴審において、本件契約等の目的達成のために想定されていた方法は、人倫に反し関係者らの人格、尊厳を傷付ける方法や、関係者の意思に反してでも接触を図るような方法であったとは認められないなどとして、本件契約等が公序良俗に反するとまではいえないなどとして、原判決を相当であるとし、本件控訴を棄却した事例。
2018.10.30
殺人、商標法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(今市事件控訴審判決)
LEX/DB25561023/東京高等裁判所 平成30年 8月 3日 判決 (控訴審)/平成28年(う)第983号
殺人、商標法違反及び銃砲刀剣類所持等取締法違反(いわゆる今市事件)の各公訴事実のうち、原審では、殺人につき、その犯人と被告人との同一性が争われ(商標法違反及び銃砲刀剣類所持等取締法違反の公訴事実については、争いがなく、区分審理された)、本件殺人の公訴事実は、「被告人は、深夜、茨城県常陸大宮市内の山林西側林道で、被害者(当時7歳)に対し、殺意をもって、ナイフでその胸部を多数回突き刺し、同人を心刺通(心臓損傷)により失血死させた」という事実につき、原審検察官の指摘する客観的事実(情況証拠)のみによって被告人の犯人性を認定できるか検討し、結論として、被告人が殺害犯人である蓋然性は相当に高いものと考えられるが、客観的事実のみから被告人の犯人性を認定することはできないとし、原判決は、被告人が検察官に行った本件自白供述につき、任意性を認めた上、本件殺人の一連の経過や殺害行為の態様、場所、時間等、事件の根幹部分に関する供述は、十分に信用することができるとし、原審関係証拠から認められる客観的事実に、同供述を併せれば、被告人が被害者を殺害したことに合理的な疑いを入れる余地はないとし、被告人を無期懲役に処したため、原審弁護人が被告人のため控訴した事案において、原判決が、自白供述の信用性の補助証拠として採用した取調べの録音録画記録媒体により犯罪事実を直接的に認定したことには訴訟手続の法令違反があり、原判示第1の殺人の日時、場所を自白供述に基づき公訴事実どおりに認定したことには事実誤認が認められ、いずれも判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決を破棄した上で、当高裁は、情況証拠によって認められる間接事実を総合すれば、被告人が殺害犯人であることは、合理的な疑いを差し挟む余地なく認められ、当審で予備的に追加された訴因(殺害の日時、場所を拡張したもの)については、直ちに判決をすることができるものと判断し、被告人を無期懲役にするのが相当であるとした事例。
2018.10.23
各損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」商法分野 12月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449731/最高裁判所第一小法廷 平成30年10月11日 判決 (上告審)/平成29年(受)第1496号
東京証券取引所に上場されていた被上告人(1審被告)の株式を募集等により取得した上告人(1審原告)らが、被上告人が提出した有価証券届出書に参照すべき旨を記載された半期報告書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、それにより損害を被ったなどと主張して、被上告人に対し、金融商品取引法23条の2により読み替えて適用される同法18条1項に基づく損害賠償等を求める事案の上告審において、金融商品取引法18条1項に基づく損害賠償請求訴訟で、請求権者の受けた損害につき、有価証券届出書の虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下がり以外の事情により生じたことが認められる場合に、当該事情により生じた損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、民事訴訟法248条の類推適用により、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、金融商品取引法19条2項の賠償の責めに任じない損害の額として相当な額を認定することができるとし、原審の判断は是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2018.10.23
松橋事件即時抗告棄却決定に対する特別抗告棄却決定
LEX/DB25561330/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月10日 決定 (特別抗告審)/平成29年(し)第718号
殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反及び火薬類取締法違反事件(いわゆる松橋事件)につき、被告人に懲役13年に処する旨の判決が言い渡され、控訴、上告をしたものの、これらが全て棄却され、刑の執行を受け終えた後、被告人の法定代理人成年後見人弁護人が、殺人被告事件について無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したとして、再審を請求したところ、再審開始が決定したため、検察官が即時抗告し、即時抗告審も、再審請求審の決定の説示するとおり、巻き付けた布切れに関する新証拠及び使用された凶器に関する新証拠は、被害者殺害の事実について、被告人に無罪を言い渡すべき新規かつ明白な証拠ということができるから、再審請求審の決定には刑事訴訟法435条6号の要件充足の判断を誤ったところはないとし、即時抗告を棄却したため、検察官が特別抗告した事案において、検察官の本件抗告趣意は、刑事訴訟法433条の抗告理由に当たらないとし、本件特別抗告を棄却した事例。
2018.10.23
損害賠償請求事件(「茶のしずく」石鹸 福岡集団訴訟)
LEX/DB25449631/福岡地方裁判所 平成30年 7月18日 判決 (第一審)/平成24年(ワ)第1447号
各原告が、被告Y社(販売会社)及び被告F社(製造元)が製造した石けん(商品名「茶のしずく石鹸」)を使用したところ、同石けん中に成分として含有されていた、被告K社(小麦グルテン加水分解物(商品名「グルパール19S」)製造会社)によって感作されてアレルギーにり患し、それによりアレルギー症状を発症したと主張して、製造物責任法3条に基づき、本件6名原告らを除くその余の各原告は、被告Y社及び被告F社に対しては上記石けんの欠陥を、被告K社に対してはグルパール19Sの欠陥を原因とする損害賠償請求の一部請求として、各1500万円及び遅延損害金の連帯支払を求め、本件6名原告らは、それぞれ、被告K社に対し、グルパール19Sの欠陥を原因とする損害賠償請求の一部請求として、各1500万円及びこれに対する同各原告のアレルギー発症の日以降の日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求めた事案において、原告14名分については被告3社連帯で認容額を合計約4120万円の支払を命じ、被告Y社と被告F社と和解が成立した本件6名原告らは、被告K社に合計約1615万円の支払を命じた事例。
2018.10.16
請求異議控訴事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 12月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25561114/福岡高等裁判所 平成30年 7月30日 判決 (控訴審)/平成27年(ネ)第19号
国営諫早湾土地改良事業としての土地干拓事業を行う控訴人(国)が、佐賀地裁の判決及び福岡高裁の判決によって、諫早湾干拓地潮受堤防の北部排水門及び南部排水門の開放を求める請求権が認容された者らを被告として、上記各判決による強制執行の不許を求めたところ、原判決は、控訴人の請求のうち、一部の一審被告らに対する訴えを却下し、一部の一審被告らに対する請求を認容したが、その余の一審被告である被控訴人らに対する請求についてはこれを棄却したため、同棄却部分を不服として控訴人が控訴した事案(なお、原判決のうち上記訴え却下に係る一審被告らに関する部分及び上記請求認容に係る一審被告らに関する部分については、いずれも不服が申し立てられなかったため、上記各一審被告らは被控訴人となっていない。)で、控訴人の被控訴人らに対する請求はいずれも理由があるから認容すべきであるところ、これと異なる原判決中被控訴人らに関する部分は不当であり、本件控訴はいずれも理由があるとし、民事執行法37条1項に基づき同法36条1項の処分を命じた事例。
2018.10.16
損害賠償請求事件(「茶のしずく」石鹸 東京集団訴訟)
LEX/DB25560920/東京地方裁判所 平成30年 6月22日 判決 (第一審)/平成24年(ワ)第11529号 等
原告(23名)らが、本件石けんの使用により小麦アレルギーに罹患し、その多くは小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを発症し、小麦摂取の制限や摂取後の日常生活の制限を受けることとなったなどと主張して、上記石けんを製造販売した被告株式会社Y社、上記石けんを製造した被告F社及び上記石けんの原材料の一つとして配合された加水分解コムギ末を製造した被告K社に対し、製造物責任法3条に基づき、連帯して、損害賠償として、原告一人当たり1500万円又は1000万円の包括一律請求での支払を求めた事案において、本件石けんは通常有すべき安全性を欠いているものと認められ、本件石けんには欠陥があるとし、被告Y社は、製造物責任法2条3項3号の実質的製造業者に当たるとしたした上で、、被告Y社、被告F社に対する請求については、請求額を減額した形で一部認容し、原材料の成分であるグルパール19Sが、完成品の製品設計のいかんにかかわらず社会通念上期待される安全性の水準を欠いているとまでは認められず、グルパール19Sには欠陥がないとして、原材料の小麦由来成分を製造した被告K社に対する請求については、棄却した事例。
2018.10.09
納税告知処分等取消請求事件
LEX/DB25449691/最高裁判所第三小法廷 平成30年 9月25日 判決 (差戻上告審)/平成29年(行ヒ)第209号
上告人(被控訴人・原告。権利能力のない社団)が、その理事長であったAに対し、同人の上告人に対する借入金債務の免除をしたところ、所轄税務署長から、上記の債務免除に係る経済的な利益がAに対する賞与に該当するとして、給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を受けたため、被上告人(控訴人・被告。国)を相手に、上記各処分(ただし、上記納税告知処分については審査請求に対する裁決による一部取消し後のもの)の取消しを求めた事案の差戻後上告審において、給与所得に係る源泉所得税の納付義務を成立させる支払の原因となる行為が無効であり、その行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたときは、税務署長は、その後に当該支払の存在を前提として納税の告知をすることはできないものと解され、当該行為が錯誤により無効であることについて、一定の期間内に限り錯誤無効の主張をすることができる旨を定める法令の規定はなく、また、法定納期限の経過により源泉所得税の納付義務が確定するものでもないとし、給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について、法定納期限が経過したという一事をもって、当該行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことが許されないとする理由はないというべきであるとし、上告人が法定納期限の経過後に本件債務免除の錯誤無効を主張することは許されないとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるものといわざるを得ない。しかしながら、上告人は、本件債務免除が錯誤により無効である旨の主張をするものの、納税告知処分が行われた時点までに、本件債務免除により生じた経済的成果がその無効であることに基因して失われた旨の主張をしておらず、上告人の主張をもってしては、本件各部分が違法であるということはできないとして、本件各部分が適法であるとした原審の判断は、結論において是認することができるとし、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2018.10.09
保険金請求事件 
「新・判例解説Watch」商法分野 12月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449702/最高裁判所第一小法廷 平成30年 9月27日 判決 (上告審)/平成29年(受)第659号 等
自動車同士の衝突事故により被害を受けた1審原告が、加害車両を被保険自動車とする自賠責保険の保険会社である1審被告に対し、自賠法16条1項に基づき、保険金額の限度における損害賠償金の支払を求めた事案の上告審において、自賠法16条の9第1項にいう「当該請求に係る自動車の運行による事故及び当該損害賠償額の確認をするために必要な期間」とは、保険会社において、被害者の損害賠償額の支払請求に係る事故及び当該損害賠償額の確認に要する調査をするために必要とされる合理的な期間をいうと解すべきであり、その期間については、事故又は損害賠償額に関して保険会社が取得した資料の内容及びその取得時期、損害賠償額についての争いの有無及びその内容、被害者と保険会社との間の交渉経過等の個々の事案における具体的事情を考慮して判断するのが相当であるとし、被害者が直接請求権を訴訟上行使した場合であっても異なるものではないとし、1審原告が直接請求権を訴訟上行使した本件において、1審被告が訴訟を遅滞させるなどの特段の事情がないからといって、直ちに1審被告の損害賠償額支払債務が原判決の確定時まで遅滞に陥らないとすることはできないと判示し、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、344万円に対する平成27年2月20日から本判決確定の日の前日までの遅延損害金の支払請求を棄却した部分を破棄し、同部分につき、本件を高裁へ差し戻し、1審原告のその余の上告、及び1審被告の上告を棄却した事例。
2018.10.02
地位確認等請求事件
LEX/DB25449676/最高裁判所第二小法廷 平成30年 9月14日 判決 (上告審)/平成29年(受)第347号
被上告人(被控訴人・被告。日本郵便株式会社)との間で、有期雇用契約を締結して就労していたが、雇止めがされた上告人(控訴人・原告)らが、被上告人に対し、各雇止めは、解雇権濫用法理が類推適用されることにより無効であると主張し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と、未払賃金及び遅延損害金の支払いを求めるとともに、不法行為に基づき慰謝料の支払いを求めたところ、原判決は、上告人らの労働契約上の地位の確認及び本件各雇止め後の賃金の支払を求める請求をいずれも棄却すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、上告人らと被上告人との間の各有期労働契約が実質的に無期労働契約と同視し得るとして、本件各雇止めが解雇に関する法理の類推によれば無効になるとしながら、本件上限条項によって根拠付けられた適法なものであるとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとしたが、加齢による影響の有無や程度を労働者ごとに検討して有期労働契約の更新の可否を個別に判断するのではなく、一定の年齢に達した場合には契約を更新しない旨をあらかじめ就業規則に定めておくことには相応の合理性があり、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に抵触しないとした上で、本件各雇止めは適法であり、本件各有期労働契約は期間満了によって終了したものというべきであるとし、上告人らの労働契約上の地位の確認及び本件各雇止め後の賃金の支払を求める請求をいずれも棄却すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができるとし、本件上告を棄却した事例。