ユーザーインタビュー

株式会社するが加工 様

株式会社するが加工 様

左から畑義治税理士、坂田一樹するが加工社長夫妻、
内藤一徳 畑会計監査部長(自社工場前の茶畑から)

情報開示で多彩な戦略可能にした
ティーバッグメーカー

株式会社するが加工 坂田一樹 社長
畑会計事務所 畑義治税理士

 地球の丸みを感じる広大な太平洋のパノラマと白亜の洋式灯台が印象的な静岡・御前崎。そのほぼ突端に位置する株式会社するが加工は、お茶や紅茶などを簡単にいれることができる「ティーバッグ」の生産メーカー。月産約800万個を誇っている。

 創業は1972年。電気店からスタートし、自動車部品の下請け工場に転身。しかし、その事業も次第にじり貧となり、次に先代(坂田正昭氏)が目をつけたのがティーバッグだった。20年近く前のことである。時を同じくして、専務(社長の実弟)がティーバッグの自動包装機メーカーに就職。納品する会社とのつながりを持ったことで事態が急変。専務のするが加工入社とともにティーバッグ製造に事業の柱を移し、再出発をはかる。そこからは需要の増加と、取引先の急成長が相まって、右肩上がりだ。とはいえ、成長市場での戦いは、競合との戦いでもある。そこでどう勝ち抜いてきたのか。

 坂田一樹(いつき)社長はいう。

「当社は不良品が少ないのが特徴です。来る依頼は断らないという姿勢を貫くため、リスクを恐れず設備投資を行い、その上で、チェックシートを徹底し、日報をつけさせるなど品質管理に万全を期しました。また、顧客への提案には写真を添付したり、間違いないような仕様書もつくったりと、丁寧で確実な仕事を心がけました。もちろん、従業員やパートさんの教育にも力を入れています」

 そのような地道な努力が功を奏し、一社依存の事業形態から、現在は北海道から沖縄まで全国に取引先網を広げている。

 われわれが工場見学させていただいた際にも、衛生服をはおり、入り口で埃(ほこり)等を風で吹き飛ばすクリーン施設を通過。中に入ると、17台もの多彩な包装・計量器がずらりと並んでいた。高いものでは数千万円もする高価なものだ。

「機械が増えるにつれて、原料仕入れから加工・包装まで、顧客の多様なニーズにワンストップで応えることができるようになってきました。ここも強みですね。ほぼ1年に1台ずつ増やしてきた勘定になります」

 こう見ると、同社のビジネスはいわば設備産業。思い切った投資をいかにできるかが、成否を分ける。その意味では法人成り前から財務・経理を見ている畑義治会計事務所の存在が大きかったと坂田社長は言う。

 畑会計事務所では、当初から同社に自計化(企業自身が会計ソフトを使用して会計処理を行うこと)システム『FX2』を導入。畑税理士はこう述懐する。

「もともと先代は数字に強い方でしたから、現場を子供たち(現在の社長、専務)に任せ、ご自分は計数管理をきっちり行われていました。そのおかげで、会社の財布の中身が分かり、積極的な設備投資ができたのだと思います」

 現在、会社の舵(かじ)取りをまかされている坂田社長にしても同様だ。決算報告会を毎年開催し、次年度の予算を組む。そこにはもちろん設備投資の金額も入っている。さらには、その数字を『FX2』に落とし込んで毎月の予算実績管理を徹底している。坂田社長はいう。

「リアルタイムの会社の実態が見えない状態では、これまでのような設備投資はできなかったと思います。やっぱり怖いですからね」

株式会社するが加工 様

(左)工場に入る前のクリーン装置(中)17台の機会がずらりと並ぶ(右)ティーバッグが次々とつくられる

取引銀行を1行から複数に

 そんなするが加工だが、財務状況は極めて良い。有利子負債はほとんどないし、設備投資もほぼ自己資金でまかなってきた。それでもメーンバンクの地銀には3カ月に1回程度、紙ベースで試算表を提出し、信頼を勝ち得てきた。しかし、今後、飛躍するためにはさらなる設備投資や人員の増加も考えられることから、顧問の畑税理士は「取引銀行は1行だけではなく複数にしておくべき」と主張。そこで、当の畑税理士から紹介されたのが島田信用金庫(島田信金)だった。

「島田信金さんは、TKC静岡会会員税理士と顧問契約を結び、TKCの財務会計システムを利用している先に低利で融資する『TKC経営者ローン』という商品を顧客に提供していますが、その融資をおすすめしたのが取引の始まりでした。するが加工さんが新しい工場を建てた後ですから、3年くらい前のことです。いくら業績がよくても取引銀行が1行だけだと、金利などが相手の言い値になってしまう危険性もあるし、資金調達の選択肢が限られるわけですからなにかあった時不安です」(畑税理士)

 ところで、坂田社長が、経営の信念のひとつにしているのが「透明性」である。46名(パート含む)の従業員には、決算後に棒グラフを貼りだして会社の業績を報告するのだという。

「当社は人がメーンで動いていると考えています。ですから彼らには正直に業績を開示して不安感を取り除いてあげることが重要なのです」(坂田社長)

 その考え方は、同じステークホルダーである金融機関への姿勢にも通じる。坂田社長は続ける。

「とくに、島田信金さんとはこれまで取引がなかったので、まずは当社のことを知ってもらいたいという思いがありました」

 昨秋、島田信金との間で「TKCモニタリング情報サービス」をいち早く導入したのも、坂田社長の「知ってもらいたい」という意思が働いていた。同サービスは、TKC会計事務所による巡回監査と月次決算の終了直後に、金融機関に対して月次試算表などのデータをインターネット経由で提供するというもの(『戦略経営者』2017年6月号P21参照)。これまでのような紙ベースでの提出では、手間がかかるし、タイムラグも発生する。同サービスを活用すれば、それらが一挙に解決するというわけだ。

 とはいえ、金融機関に業績を、しかもオンラインでさらけ出すことに抵抗を感じる経営者がいることも確か。畑会計事務所の内藤一徳監査部部長はこういう。

「業績を開示することで優遇を受けられるのであれば開示した方が絶対にいい。せっかく透明性を意識する経営をやってこられているのですから、するが加工さまのような企業は、〝日の目を見る権利〟があると思います」

 ちなみに畑会計事務所で同サービスを導入済みの関与先は約50社と極めて多い。「意外なことに開示を拒否する経営者はあまりありません。というのも、適切で嘘(うそ)のない決算書さえつくっていれば、金融機関にしっかり開示することはメリットでしかないはずですから」と内藤氏はいう。これは、畑会計事務所が真正な記帳と適切な経営指導を普段から実践している証左であろう。

月次データをネット送信

 さて、金融機関側は同サービスをどのようにとらえているのか。

島田信金御前崎支店の鈴木博幸支店長(左)と和田卓巳支店長代理

島田信金御前崎支店の鈴木博幸支店長(左)と和田卓巳支店長代理

 するが加工との関係構築に深く関わった島田信金御前崎支店・和田卓巳支店長代理はいう。

「当庫でも、するが加工さまにいろいろとヒアリングしながら、融資の可能性を探っていくなかで、ちょうど畑先生からTKCの新たな取り組みであるモニタリング情報サービスの導入をすすめられました。そのタイミングが見事に合致したという感じです。同サービスのおかげで以前より早く、タイムリーに毎月の試算表が把握でき、圧倒的にデータ収集のスピードが早くなりました。単純にありがたかったですね」

 実は、するが加工には、今年の3月に、新たな機械導入のための設備投資の案件があった。従来なら、もちろんメーンバンクの地銀へ融資を依頼していただろう。しかし、今回は島田信金を加え、二つの選択肢から選べた。そして、TKCモニタリング情報サービスを導入していた島田信金の方が、融資の決裁が早く、金利も他行と比べて低かった。結果として、同庫からの融資によって、設備投資が行われたという。

 鈴木博幸支店長が強調する。

「自計化、月次巡回監査などできちんと経営指導されている畑会計の関与先さまは安心ですが、中小企業には、まだまだ数字の重要性を知らない経営者が多いというのが実感です。だから、なぜ赤字になったのかが分からない。業績の振るわない企業こそリアルタイムの計数管理がより必要であることを知ってもらいたいですね。その意味でもTKCモニタリング情報サービスは、われわれにとっては、とてもありがたいものです」

 とはいえ、同サービスによって、顧客と疎遠になってしまっては意味がないと和田支店長代理は強調する。

「当庫は地域の企業を潰(つぶ)してはいけないというのを大前提にしています。なので、地道に顧客を訪問して経営相談を行う。その際に、最新の財務データを持っていれば話が早いですよね。同サービスはそこに非常に有効に機能すると考えています」

 つまり、地域金融機関である島田信金にとっては、地道なアナログ的活動のなかで顧客への適切なアドバイスのツールとしてTKCモニタリング情報サービスを活用したいというのである。

 いずれにせよ、するが加工の企業としての価値は、その透明性の増大によってより上昇してきたといえるだろう。企業の実態を隠す時代は終わり、できうる限り開示する時代が到来していることは確実である。

 資金繰りや経営管理に不安がなくなったするが加工。坂田社長は今後の目標について「下請けに甘んじるのではなく、せっかく販路があるのだから自社ブランドの最終製品を手がけたい。すでにその準備は整っています」と力強く語る。

株式会社するが加工
創業
1972年4月
所在地
静岡県御前崎市白羽5519-17
売上高
2億6,000万円
社員数
46名(パート含む)
HP
http://www.surugakakou.com/

『戦略経営者』2017年6月号より転載