更新日 2017.06.26

電気供給業に係る事業税の収入金課税について

第2回(最終回) 電気供給業に係る事業税Q&A

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TKC税務研究所 特別研究員 内田光俊

TKC税務研究所 特別研究員 内田 光俊

電力システム改革が進められ、近年、電気供給業を取り巻く環境が大きく変化しています。
これらの変化に対応するため、電気供給業に係る法人事業税の分割基準の見直しが行われました。
当コラムでは、電力システム改革に触れながら、事業税の分割基準の改正について解説し、TKC税務研究所に寄せられた電気供給業に関する最近の質疑応答について掲載します。

 「事業税は、事業活動と地方団体の行政サービスとの応益関係に着目して、事業に課される物税であることを考えれば、事業の活動量を最も端的に表現するものであることが望ましい」(「事業税逐条解説」地方財務協会刊)とされています。その意味では、所得よりは、いわゆる外形的なものを課税標準とすることがより適当であると考えられ、電気供給業などについては、昭和26年以後、一貫して、外形的なもの、すなわち収入金額が課税標準に取り入れられているところです。一方、最近、電力システムをめぐる環境が大きく変わりつつある中、いわゆる10電力会社以外の法人であっても、例えば、太陽光発電事業が多くの企業等によって新規参入されるようになりました。
 ここでは、TKC税務研究所に寄せられた電気供給業についての代表的なQ&Aについて、いくつか紹介させていただきます。

【質問1】

 法人が、太陽光発電をして電力会社に売電していますが、この場合、当該法人が法人事業税の「電気供給業」に該当しますか。地方税法第72条の2第1項第1号ニには、電気供給業とあるだけで、何ら定義がされていません。この電気供給業とは、電気の販売量に関係なく納税義務者になるのでしょうか。
 「電気供給業」は電気事業法に規定されている規模を想定しているのではないでしょうか。したがって、一定規模以下の売電量しかない事業者は、収入金額課税はされないと考えますが如何でしょうか。

【回答1】

 「地方税法の施行に関する取扱について(道府県税関係)昭和29年7月14日自乙府発第122号」( 以下「取扱通知」といいます。)によれば、「電気供給業の課税標準とすべき収入金額とは、原則として、電気事業会計規則による収入(電気事業会計規則の適用がない場合には、これに準ずる方法により計算した収入)とし、電気事業法(昭和39年法律第170号)第2条第1項第10号に規定する電気事業者であるか否かに拘わらず、定額電灯、従量電灯、大口電灯及びその他の電灯に係る電灯料収入、業務用電力、小口電力、大口電力、その他の電力及び他の電気事業者への供給料金に係る電力料収入(新エネルギー等電気相当量(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法施行規則(平成14年経済産業省令第119号)第1条第2項に規定する新エネルギー等電気相当量をいう。)に係るものを含む。)、遅収加算料金、せん用料金、電球引換料、配線貸付料、諸機器貸付料及び受託運転収入、諸工料、水力又はかんがい用水販売等の供給雑益に係る収入及び設備貸付料収入並びに事業税相当分の加算料金等原則として電気供給業の事業収入に係る全ての収入を含むものである」こととされています(取扱通知4の9の2)。

 また、「一般に所得課税と収入金課税との両部門の事業を併せて行う法人の納付すべき事業税額は、原則として各事業部門毎にそれぞれ課税標準額及び税額を算定し、その税額の合算額によるべきものであるが、従たる事業が主たる事業に比して社会通念上独立した事業部門とは認められない程度の軽微なものであり、したがって従たる事業が主たる事業と兼ね併せて行われているというよりもむしろ主たる事業の付帯事業として行われていると認められる場合においては、両事業部門毎に別々に課税標準及び税額を算定しないで従たる事業を主たる事業のうちに含めて主たる事業に対する課税方式をよって課税して差し支えないものである」こととされています(取扱通知4の9の9前段)。

 この場合において、「従たる事業のうち「軽微なもの」の判定は、その実態に即して行うべきものであるが、一般に当該事業の売上金額が主たる事業の売上金額の1割程度であり、かつ、事業の経営規模の比較において他の同種類の事業と権衡を失しないものは、これに該当するものとしてみなして差し支えない」ものとされています。

 また、「「付帯事業」とは、主たる事業の有する性格等によって必然的にそれに関連して考えられる事業をいうのであるが、それ以外に主たる事業の目的を遂行するため、又は顧客の便宜に資する等の理由によって当該事業に伴って行われる事業をも含めて解することが適当である」こととされています(以上取扱通知4の9の9後段)。

 なお、「電気供給業を行う法人の事業が所得等課税事業を併せて行っている場合においては、もとより、課税標準の分割計算に基づく課税をなすべきであるが、この場合において両事業部門に共通する収入金額又は経費があるときは、これらの共通収入金額又は共通経費を両事業部門の売上金額等最も妥当と認められる基準によってあん分した額をもって所得等課税標準の付加価値額又は所得を算定するものである」こととされています(取扱通知4-9-5)。

 以上のことから、ご質問にあるような一定規模以下の売電量しかない事業者は収入金課税の対象とならないといった売電量による線引きはしていないと考えます。また、電気事業法の事業者であろうとなかろうと電気供給業を行えば収入金課税の対象となると考えられます。しかしながら、その事業が付帯的なものであれば通常の所得課税として申告納付することも可能であるということです。

【ポイント】

 電気を供給する者は全て収入金課税の納税義務者となり、一定の売電量で線引きしないこととなります。
 ただし、電気供給業の売上金額が主たる事業の売上金額の1割程度である場合は、所得課税として申告することも可能です。

【質問2】

 当社は、甲県において、太陽光発電を行うために、資本金4億円で設立された法人です。当社の定款、登記簿謄本、設立届出書には太陽光発電事業のみが記載されており、甲県に事業税の申告をする予定です。当社の第1期の事業年度においては、発電設備が建設中で売電収入がなかったので事業税申告書の6号様式別表6の収入金額欄に電力売上高0円と記載して甲県税事務所に申告したところ、売電収入がない期間は電気供給業とは認められないので、所得割、資本割、付加価値割課税で申告すべきであるとの指摘がありました。当社における太陽光発電開始前の事業年度における事業税は、電気供給業として収入割課税となるのか、あるいは外形標準課税対象法人として所得割、資本割、付加価値割課税となるのか、いずれが正しいのかご教授ください。

【回答2】

 ご質問の場合について、地方税法上特段の規定はなく、また、地方税に関する取扱通知(道府県税)、行政実例、質疑応答にも見当たりません。となりますと、各団体がどのように判断するかということですが、道府県のホームページによりますと、多くの道府県が甲県と同じ取扱いにしているようです。例を掲げます。

(愛知県のホームページから)

  1. 収入金額課税について

     電気供給業を行う法人の法人事業税は、各事業年度の収入金額を課税標準として課される収入割により申告することとなります。
     電気供給業とは、需要に応じて電気を供給する事業及びこれらの事業者に電気を供給する事業をいいます。現に電気を供給しているという実態のある事業をいい、電気事業法に基づく許可等を要する事業であるか否かを問いません。
     電力会社が行う電気供給業のほか、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス等を利用する再生可能エネルギー売電事業も該当します。
     電気供給業を行う予定であるが、まだ準備段階で現に電気供給を開始していない事業年度については、所得割(資本金1億円超の法人は付加価値割及び資本割を含む。)により申告してください。

(栃木県のホームページから)

Q3
 電気供給業を行うために設立された法人ですが、発電施設の建設を行っているだけで、まだ、電気供給を開始していない事業年度の課税はどうなりますか?
A3
 現に電気の供給を行っていない間は、法人事業税における「電気供給業」には該当しません。所得割(資本金1億円超の場合は、付加価値割及び資本割も含む。)により、申告してください。
 また、今はホームページに載せていませんが、今後、ホームページ及びパンフレットに同趣旨の説明を加える予定であるとの団体もあります(取扱いは両県に同じ)。となりますと、各都道府県の取扱いは同じであるものと思われます。また、これらの取扱いについて、これを覆すだけの根拠もないように思います。したがって、所得割、付加価値割、資本割による申告をしていただくことが妥当であるということになります。

【ポイント】

 電気供給業を始めるに当たって、電気の供給を実際に行っていない間は、法人事業税の所得割により申告納付します。

【質問3】

 当社は資本金1億円の株式会社で専ら太陽光発電事業を行っています。第1期、第2期は消費税の課税事業者でしたが、発電は当期(第3期)から開始したため、当期は消費税の免税事業者となります。法人事業税は電気供給業として収入金課税が適用になり、当期から納税することになります。法人事業税の申告においては、税抜きの収入金額を課税標準にするつもりですが、これでよろしいでしょうか。
 なお当社は消費税等の会計処理については税抜処理を行っており、仮払消費税と仮受消費税の差額は期末において雑収入に計上する予定です。

【回答3】

 電気供給事業に対する法人事業税の課税標準とすべき収入金額については、地方税法、同法施行令に規定されているほか、「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」(平成22年4月1日税都第16号)には、「原則として、電気事業会計規則による収入(電気事業会計規則の適用がない場合には、これに準ずる方法により計算した収入)とし、電気事業法(昭和39年法律第170号)第2条第1項第17号に規定する電気事業者であるか否かにかかわらず、定額電灯、従量電灯、大口電灯及びその他の電灯に係る電灯料収入、業務用電力、小口電力、大口電力、その他の電力及び他の電気事業者への供給料金に係る電力料収入(新エネルギー等電気相当量(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法施行規則(平成14年経済産業省令第119号)第1条第2項に規定する新エネルギー等電気相当量をいう。)に係るものを含む。)、遅収加算料金、せん用料金、電球引換料、配線貸付料、諸機器貸付料及び受託運転収入、諸工料、水力又はかんがい用水販売代等の供給雑益に係る収入及び設備貸付料収入並びに事業税相当分の加算料金等原則として電気供給業の事業収入に係るすべての収入を含むものとすること。」とあります。
 しかしながら、ご質問の消費税額は、そもそも事業収入に当たらないと考えますので、結論としては、料金と併せて収入する消費税の額は、収入金額に含まないところです。

【ポイント】

 電気供給業に係る収入金課税においては、消費税抜きの金額で課税標準額を計算します。電気事業会計規則においては、消費税・地方消費税に相当する金額については、仮払消費税勘定又は借受消費税勘定をもって整理すると、ありますから、この処理に則って電気供給業に係る収入金課税の課税標準額を計算することになります。

(参考)電気事業会計規則(昭和40年6月15日通商産業省令第57号)

 電気事業法 (昭和39年法律第170号)第35条の規定に基づき、電気事業会計規則を次のように制定する。

  • 第五章 消費税等
  • 第三十七条 消費税法(昭和63年法律第108号)の規定による消費税及び地方税法(昭和25年法律第226号)の規定による地方消費税に相当する金額については、仮払消費税勘定又は仮受消費税勘定をもつて整理するものとする。

(注)電気事業法の改正によって、条文等が変更されていますが、内容に変更はありません。

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TKC税務研究所 特別研究員 内田光俊

TKC税務研究所 特別研究員 内田 光俊(うちだ みつとし)

経歴
  • 昭和52年3月 慶應義塾大学経済学部卒
  • 昭和55年4月 自治省(現総務省)入省
  • 平成10年4月 自治体国際化協会ニューヨーク事務所次長(トロント駐在)
  • 平成15年4月 総務省自治税務局都道府県税課税務管理官
  • 平成18年4月 自治医科大学附属病院事務部長
  • 平成22年8月 地方競馬全国協会監事
  • 平成25年6月 (株)TKC税務研究所特別研究員

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