更新日 2010.10.18

グループ法人税制への対応のポイント

第4章 清算所得課税廃止に係る留意点(2/2) グループ法人の欠損金の引継ぎ、清算子会社の消滅損失の特例等

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税理士・公認会計士 中野伸也
税理士・公認会計士 妙中茂樹

グループ法人の欠損金の引継ぎ

(1)連結納税の場合

「清算所得課税の廃止=会社解散は組織再編の一環」という位置づけになったので、連結子法人の残余財産が確定した場合に、連結子法人の次の欠損金は親法人が引き継ぐこととなった。

  1. 連結欠損金:連結親法人と完全支配関係がある他の内国法人の残余財産が確定した場合は、連結欠損金個別帰属額及び特定連結欠損金は、その発生年度において発生したものとして、親会社の連結欠損金とみなす(法法81の9②二)。
  2. 連結子法人の残余財産確定事業年度の欠損金相当額の損金算入:連結子法人の残余財産が確定した場合の欠損金(その確定の日が連結事業年度終了の日である場合を除く。すなわち連結法人としての単体申告で生じた欠損金)については、合併の場合と同様に連結所得の金額の計算上、損金の額に算入する(法法81の9④)。

以上の場合において、解散した法人の株式をグループ内の複数の法人が所有していた場合には、欠損金の引継ぐ額はそれぞれの株式の所有割合による。

(2)グループ法人の場合

完全支配関係がある内国法人の残余財産が確定した場合には、青色欠損金等をその株主に引き継ぐ。ただし、支配関係が5年以内に生じている一定の場合は、その支配関係が生じた事業年度以前に発生した欠損金等は引き継がない(法法57②~④)。解散した法人の株式をグループ内の複数の法人が所有していた場合に、各法人が引き継ぐ欠損金の額はそれぞれの株式の所有割合によることは連結納税の場合と同様である。この場合の欠損金には残余財産確定事業年度に発生した欠損金が当然に含まれるので、効果としては連結納税の場合と同じである。

清算所得課税廃止によるその他の改正点

(1)法人税の還付

仮装経理による過大申告がなされた場合において、その更正により減少する法人税額は原則として還付も行わず、その更正の日の属する事業年度以後に終了する事業年度の所得に対する法人税額から順次控除し、5年内に控除しきれない金額は還付する(法法135)。この繰越控除期間内に解散等が生じた場合は、その時点において還付することとなっていたが、清算所得課税の廃止により通常所得課税が継続するので、解散時に還付は行わず、引き続き税額控除を行い、残余財産確定時に控除しきれなかった税額を還付することとなった(法法135③)。

なお、法人が解散した場合の解散した日の属する事業年度およびその前事業年度において生じた欠損金を繰戻還付請求できる規定(法法80④)については、変更がない。会社を解散した場合、実務上はまずこの規定の適用を考えるべきであろう。

(2)残余財産確定事業年度における事業税の損金算入等

通常の所得課税に移行しても残余財産確定事業年度は翌事業年度がないので、事業税を損金算入できなくなってしまう。この場合の特例として最終事業年度に係る事業税の額をその事業年度の損金の額に算入することが規定された(法法62の5⑤)。

(3)清算子会社の消滅損失の特例

今回の改正で会計上も税務上も意外と影響の大きい改正がこの改正である。従来は損金の額に算入できた100%子会社の消滅損失を、損金の額に算入できなくなったのである。

完全支配関係がある他の法人が解散し、残余財産の分配を受けるなど(残余財産の分配を受けないことが確定した場合を含む)して当該他の法人の株式を有しないこととなった場合、その株式の消滅損失を税務上は計上しない(法法61の2⑯)で、その消滅損失(現物分配された資産の帳簿価額相当額を除く)は資本金等の額から減算する(新法令8①十九)。

なお、適格現物分配がなされている場合は現物分配された資産の帳簿価額相当額(現物分配法人の資本等の金額を除く)を利益積立金に加算する(法令9①四)。以上の場合の会計処理と税務の簡単な設例を別枠に記載した。

(設例1)
(設例1)
(設例2)
(設例2)

「企業集団内の企業から現物配当を受け取った場合には、帳簿価額での受け入れ処理とされていますが(「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」や「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」)、残余財産の分配時の会計処理が現段階では明確でないため、ここでは税務調整の理解を深めるため、時価での受け入れ処理としています。」

本文は『旬刊経理情報(6月1日号No.1249)』に掲載された記事の転載となります。

筆者紹介(中野伸也)

税理士・公認会計士 中野伸也(なかの しんや)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員長

ホームページURL
中野会計事務所

筆者紹介(妙中茂樹)

税理士・公認会計士 妙中茂樹(たえなか しげき)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員

著書
『会社の税金 実務必携』(共著、清文社)

ホームページURL
妙中公認会計士事務所

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TKC全国会は、全国1万名を超える税理士・公認会計士による我が国最大の職業会計人集団です。株式会社TKCでは連結納税制度に対応した連結納税システム(eConsoliTax)を平成15年6月に提供開始し、平成22年6月現在で420グループ4,590社の利用実績があります。

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