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ユーザー事例

株式会社湯原製作所 様

国内外の財務一元化に取り組む部品加工のスペシャリスト

湯原正籍社長

湯原正籍社長

 機械部品加工で高い技術力を持ち、名だたる日本の自動車メーカーのほぼすべてと取引があるという湯原製作所。自動車部品の切削加工業者として1950年に創業以来、徐々に業容を拡大し、最近では航空産業や医療機器分野からの引き合いも来るほど、独自の精密加工技術への各界からの評価は高い。

 3代目の湯原正籍(まさぶみ)社長は言う。

「当社は精密切削加工、パイプ塑性加工、接合技術の3つを柱としています。とくに得意なのが、パイプ塑性加工。つまり金属のチューブを曲げる技術です。均等な厚さを保ちながら管を曲げるという加工技術は思いのほか難しく、他社にはなかなかできない。当社はそれを特殊な工法で行うことで、可能にしています」

 たとえば、寸法公差(最大許される誤差の幅)がわずか100ミクロン(0.01ミリ)の仕事も請け負った実績があるという。

「基本的には、取引先の要請は断らないというのが当社の方針です。トライアンドエラーを繰り返しながら研究開発を進めていく。この姿勢が技術力として積み上がってきたのでは」と湯原社長。

 また、金属と金属の「接合技術」においても早くから専用の「炉」を設備し、銅や銀を媒介とした「ろう付け」技術を高めてきた。結果として、切削だけではない、さまざまなパターンの部品ユニットの製作が可能になり、企業としての付加価値を高めることができたのだという。

 そのような高い技術力には、前述の通り、複数の航空機メーカーからも熱い視線が注がれている。品質の安定しない輸入部品から国産部品への切り替えを志向する航空業界が、湯原製作所に白羽の矢を立てたのだ。それもエンジン周りの極めて高い精度を必要とする部品である。

「当初は無理かなとも思いましたが、非常に熱心にアプローチしてこられたのでテスト加工を行った結果、わりとうまくいった。それではやらせていただきますと……」

 自動車部品は「小物」だが航空機は「大物」。通常なら断るところだが、ここでも湯原社長はチャレンジし、結果を出した。2016年からはこの分野での飛躍的な伸びが期待されるという。

現地法人の本当の姿が…

 とはいえ、湯原製作所の歴史をひもとくと順風満帆とはとてもいえない。たとえば85年のプラザ合意や92年の日米自動車協議。これらを境に、自動車メーカーの部品の海外調達が急速に進んだのだ。同社にとっては寝耳に水。湯原社長は即座に米国に飛び、視察してみた。すると、進出した日系メーカーが、現地での部品調達を行うものの、品質の不安定さに苦労している様子がうかがえた。

 湯原社長は、その日系メーカーに米国進出を促され、迷いつつも、97年に現地法人を設立。2003年から操業を開始。

「社長はこちらから派遣し、経理や総務は現地の日本人を雇い入れたせいか、本社との意思の疎通や管理面でも非常にうまくいきました」という湯原社長。現在ではこの米現地法人だけで約6億円を稼ぎ出している。

 とはいえ、日本や米国は成熟市場であり、今後大きな成長は望めない。次なる海外進出先はと周りを見渡せば、やはりアジアが目に入る。なかでもASEAN諸国は約6億の人口を持ち、経済成長率も高い。

2013年に操業をスタートしたタイ工場

2013年に操業をスタートしたタイ工場

「2010年に米現地法人の借金を完済し、良いタイミングだと決断しました」という湯原社長。2012年、タイに会社を設立し、13年から生産を開始する。

 さて、そのタイ工場。現地の旺盛な需要で売り上げ的には良いスタートを切ったが、ひとつ問題があった。管理部の吉原正二部長はこう言う。

「現地の会計事務所にお願いして財務諸表を作成・送付してもらっていたのですが、その帳表には英語とタイ語が混在し、読んでも何がなんだか分かりませんでした。あるいは、設備台帳を確認したくても理解できないので償却の計画さえ立てられない。なのでこちらでシステムをつくってしまおうかとも考えました。そんなとき、浜村会計の手塚悟先生に、海外ビジネスモニター(OBM)を紹介いただいたのです」

 OBMとは、海外子会社の仕訳データをTKCデータセンター(TISC)にアップロードし、日本の親会社と海外子会社の双方で財務データを閲覧できるクラウドサービスである。海外の会計システムと連携し、親会社の科目体系に変換して現地の会計データを日本語で確認できるのが特徴。

 これは、吉原部長が自社開発を考えていたシステムのイメージとぴったり一致していた。さっそく湯原社長に決裁を仰ぎ、即座に導入決定。現地会計事務所を訪れて指導を行い、数カ月後に稼動にこぎつける。すると、これまで不鮮明だった現地法人の姿が、勃然と浮かび上がってきた。

 たとえばこんなこともあった。従来からタイ現地法人の設備の資産計上は6000バーツ(約1万8000円)からと決めてあったが、実際は300~600バーツでも計上されていることが判明した。これまでは見えていなかった計上ミス。ちなみに、いまでは2000バーツ以上で計上し、来年度にはこれを3000バーツに引き上げる予定だという。

 また、これを機に、月次決算の早期化も実践され、翌月25日までには前月の財務データが明確になる体制も作った。

現場主義とデータ主義の両立

 吉原部長は続ける。

左が吉原正二管理部部長、右が浜村智安顧問税理士

左が吉原正二管理部部長、右が浜村智安顧問税理士

「本部の財務は浜村会計のご指導のもと『FX2』(TKC戦略財務情報システム)を使って管理していますが、OBMのインターフェースは『FX2』とほぼ同じなので操作面で苦労することもありませんでした」

 また、OBMには『FX2』同様、ドリルダウン(データの集計レベルの掘り下げ)機能があり、クリック数回で伝票レベル、つまり仕訳までさかのぼることができる。これこそ財務の「見える化」であり、当然ながら、不正を防ぐ内部牽制(けんせい)にもなる。適時・正確なデータを見ながら、現地法人や現地会計事務所と議論をすることも可能になった。それまでは、議論するためのデータそのものがなかったのだからこの違いは大きい。

 さて、次なる湯原製作所の取り組みは、米現地法人を含めた同社グループの財務管理体制の一元化である。

 湯原社長が言う

「本社と米国法人との一元化はすでにできていますから、これにタイ法人を加え、3社を横に並べて比較しながら時系列で検証したいというのがいまの私の望みですね。そうすれば各法人の強み弱みが明確になり、経営資源をどこに投入すればよいかも分かる」

 この、財務データ管理の一元化は、常々、湯原社長が強く要請してきていたものであり、吉原部長は「2016年3月までには実現したい」と、現在、システムづくりを急ピッチで進めている。

 湯原社長はタイには2~3カ月に1度、米国には年に1~2度、現地法人を訪れる。スタッフたちの雰囲気、営業や管理の体制を肌で感じるためだ。

「データを見て現地を見る。この両立が大事だと思っています。そこに整合性を見いだせれば問題ないし、なんらかの差異を感じればその原因を追究します」

 現場主義とデータ主義の両立。湯原社長の実践するこの手法をより強固にするためにも、OBMを含めたデータ一元化の仕組み作りと効果的な運用体制の構築が待たれる。

会社概要
名称 株式会社湯原製作所 株式会社湯原製作所
創業 1950年4月
所在地 栃木県さくら市氏家1256
売上高 約15億円
社員数 約100名
URL http://www.yuhara.co.jp/

『戦略経営者』2016年2月号より転載

掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、2016年2月現在のものです。
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