TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

トピックス

無償による役務の提供に係る寄附金と受贈益の取扱いの問題点
株式会社TKC 顧問 税理士 朝長 英樹

株式会社TKC 顧問
税理士 朝長 英樹

平成22年度税制改正による完全支配関係法人間の寄附金・受贈益の取扱いは、法人税法において最も重要な22条による寄附金・受贈益の取扱いと密接に関係するものですが、同改正における同条の解釈には疑問があり、難しい問題が存在する状態となっています。この問題に関する法人税法の条文解釈の論点と実務対応の考え方について朝長英樹先生に解説していただきました。

はじめに

 WEBコラム「法人税の所得計算の基本構造(第1回:益金の額)」において、法人税法22条2項の解釈に関し、役務の提供を無償又は低廉で受けた場合には益金の額を計上しないこととされていること、そして、本来は役務の提供を無償又は低廉で受けた場合にも益金の額を計上するべきであることを確認しましたが、平成22年度税制改正によって創設された完全支配関係法人間の寄附金の額及び受贈益の額の全額を損金の額及び益金の額に算入しないとする仕組みは、このような同項の解釈を考慮することなく設けられた可能性があり、それが無償又は低廉による役務の提供を行った場合の取扱いに関して難しい問題を生じさせています。
 この問題は、法人税法において最も重要な規定である22条の解釈に密接に関係するものであり、また、法人税法において非常に広い概念で用いられている「役務」に関するものであるため、関心を向けざるを得ません。
 なお、近年は、特に、日本の親会社と外国の子会社との間における従業員の出向や出張などの「役務」の提供に係る負担金に関して「国外関連者に対する寄附金の損金不算入」の規定である租税特別措置法66条の4第3項の規定の適用の是非が問題となっていますが、本稿においては、内国法人間で出向や出張などの「役務」の提供が行われていることを前提として、法人税法の関係条文の解釈について解説を行うこととしています。

1.法人税法における寄附金・受贈益に関する規定

 最初に、現行の法人税法における寄附金・受贈益に関する規定を確認しておきます。

(各事業年度の所得の金額の計算)
第22条

2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

  1. 一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
  2. 二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
  3. 三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
(受贈益)

第25条2 内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人から受けた受贈益の額(第37条(寄附金の損金不算入)又は第81条の6(連結事業年度における寄附金の損金不算入)の規定を適用しないとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入される第37条第7項(第81条の6第6項において準用する場合を含む。)に規定する寄附金の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

2 前項に規定する受贈益の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてされるかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)を受けた場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。

(寄附金の損金不算入)

第37条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2 内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(第25条の2(受贈益の益金不算入)又は第81条の3第1項(第25条の2に係る部分に限る。)(個別益金額又は個別損金額の益金又は損金算入)の規定を適用しないとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上益金の額に算入される第25条の2第2項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。

 既に周知のとおり、上記の法人税法25条の2は「益金の額」の定めである22条2項の「別段の定め」となっており、37条は「損金の額」の定めである22条3項の「別段の定め」となっています。

2.平成22年度税制改正前における無償による役務の提供の取扱い

 親会社が100%の資本関係にある子会社に無償による役務の提供を行ったというケースを想定し、平成22年度税制改正によって法人による完全支配関係にある法人間の寄附金・受贈益の取扱いが変更される前にどのような取扱いとなっていたのかということを仕訳の形式を用いて示すと、次の図のとおりとなります。

  <親会社>   <子会社>
費 用 ××× / 現 金     ×××  
寄附金 ××× / 費用負担金収入 ×××    税務処理なし〔法法22②・③(注)〕
〔法法22③(注)・37①〕 〔法法22②〕  

(注)法人税法22条3項においては、同条2項とは異なり、「無償による資産の譲渡又は役務の提供」「無償による資産の譲受け」において「損金の額」を計上する旨の定めは設けられていませんが、上記の仕訳の形式で示した処理をさせるためには、本来は、同項のように、「無償による資産の譲渡又は役務の提供」「無償による資産の譲受け」において「損金の額」を計上する(無償による役務の提供を受ける場合には22条2項と平仄(ひょうそく)を合わせて「損金の額」を計上しない)旨を規定した上で、「無償による資産の譲渡又は役務の提供」を行った法人に37条の寄附金の損金不算入の規定を適用する、ということにしなければなりません。

 親会社は、自ら費用を負担して子会社に役務の提供を行っていますが、無償で行っているため、「益金の額」と「損金の額」とが発生し、この「損金の額」が法人税法37条7項の「寄附金の額」に該当することから、同条1項により、損金算入限度超過額が損金不算入となります。
 一方、子会社は、親会社から無償で役務の提供を受けるわけですが、法人税法22条2項においては、「益金の額」が生じないこととされていますので、「受贈益の額」は発生せず、上記の親会社の税務処理に対応する税務処理が行われることはありません。

3.平成22年度税制改正における無償による役務の提供の取扱い

 平成22年度税制改正においては、法人税法37条2項が改正されて「連結完全支配関係がある連結法人」(旧法法37②)に対して支出した寄附金の額だけでなく「法人による完全支配関係にある法人」が他の内国法人に対して支出した寄附金の額の全額が損金不算入とされるとともに、25条の2が新たに創設されて当該寄附金の額に対応する受贈益の額の全額が益金不算入とされています。
 このため、一見すると、条文の規定は、上記2のようなケースにおいては、親会社の寄附金の額の全額が損金不算入とされるとともに、子会社の受贈益の額の全額が益金不算入とされることになっていると想いがちです。
 しかし、法人税法22条2項において無償又は低廉による役務の提供を受けても益金の額(受贈益)が生じないとされていることを踏まえて、25条の2第1項及び第2項、37条2項及び7項の規定を確認してみると、大きな疑問があることが分かります。
 この疑問は、仕訳の形式を用いて取扱いを示した次の図で説明すると、親会社の「寄附金×××」の損金不算入の根拠規定が法人税法37条1項と2項のいずれとなるのか、そして、子会社に「費用負担金×××」と「受贈益×××」を計上することになるのか、もし計上するとすればいずれの規定を根拠としてどのような処理を行うことになるのかというものです。

  <親会社>   <子会社>
費 用 ××× / 現 金     ×××  
寄附金 ××× / 費用負担金収入 ××× 費用負担金 ××× / 受贈益 ×××
〔法法22③・37?〕 〔法法22②〕 〔?〕   〔?〕
(1) 「寄附金の額」(法法37⑦)の定義は変わらず

 平成22年度税制改正においても、法人税法37条7項の改正は行われていませんので、同項の「寄附金の額」には、同改正前と同様に、上記のケースにおいて親会社が子会社に対して役務の提供を行ったことによって親会社に発生した費用の額に相当する金額も含まれることになります。

(2) 「受贈益の額」(法法25の2②)の定義も「寄附金の額」(法法37⑦)の定義と表裏

 平成22年度税制改正によって新たに創設された法人税法25条の2第2項には、「受贈益の額」の定義が設けられていますが、この定義は、その文言から明らかなとおり、法人税法37条7項の「寄附金の額」の定義と表裏の関係となっていますので、上記のケースにおいて子会社が親会社から受けた役務の提供による受贈益の額は、この25条の2第2項の「受贈益の額」に該当することになります。

(3) 文言上は無償により行った役務の提供は法人税法37条2項の適用対象外

 平成22年度税制改正によって改正が行われた法人税法37条2項の適用を受けて損金不算入とされる「寄附金の額」には、括弧書きにより「第25条の2(受贈益の益金不算入)(中略)の規定を適用しないとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額(中略)の計算上益金の額に算入される第25条の2第2項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。」という限定が付されています。
 上記(2)において確認したとおり、上記のケースにおいて子会社が親会社から受けた役務の提供による受贈益の額は法人税法25条の2第2項の「受贈益の額」に該当することになりますが、しかし、上記2において確認したとおり、上記のケースにおいて子会社はこの受贈益の額を「益金の額」に算入することはありません。上記のケースの子会社の受贈益の額は、「第25条の2(受贈益の益金不算入)(中略)の規定を適用しないとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額(中略)の計算上益金の額に算入される」という要件に該当しないわけです。
 このため、文言上、上記のケースにおける親会社は法人税法37条2項の適用を受けない、ということになります。

(4) 文言上は無償により受けた役務の提供は法人税法25条の2第1項の適用対象外

 法人税法25条の2第1項は、「受贈益の額」を「益金の額」に算入しないとする規定であって、「受贈益の額」を「益金の額」とする規定ではありませんので、そもそも「受贈益の額」が「益金の額」となっていないという場合には、当然、適用されることはありません。
 上記2において確認したとおり、上記のケースにおいて、無償により役務の提供を受ける子会社は、「受贈益の額」を「益金の額」に算入することはないわけです。
 このため、文言上、上記のケースにおける子会社は法人税法25条の2第1項の適用を受けることはない、ということになります。

(5) 文言上は無償による役務の提供は平成22年度税制改正前と同じ取扱いとなる

 上記(3)及び(4)において述べたとおり、上記のケースにおいて、親会社に法人税法37条2項が適用されず子会社に25条の2第1項が適用されないということになると、文言上、上記のケースの取扱いは、平成22年度税制改正以後も、上記2で確認した同改正前の取扱いと同様ということになります。

4.無償による役務の提供をどのように取り扱うべきかという問題は解釈上の大きな難問

 平成22年度税制改正における法人による完全支配関係にある法人間の寄附金・受贈益の取扱いに関する改正の趣旨に関しては、同改正の法案の作成を行った財務省が公表している『平成22年度 税制改正の解説』において、次のように述べられています。

 従来の連結法人間の寄附金については、支出側で全額損金不算入とされる一方、受贈側で益金算入とされており、見方によれば内部取引について課税関係を生じさせているともいえる状態でした。そこで今回、グループ内部の取引については課税関係を生じさせないこととする全体の整理の中で、このグループ内の寄附金についても、トータルとして課税関係を生じさせないこととするものです。(206頁)

 この解説には、資産の無償又は低廉による譲渡の取扱いと役務の無償又は低廉による提供の取扱いが異なることをうかがわせる記述は、全く存在しません。
 このように、平成22年度税制改正による改正条文が同改正の趣旨と明らかに齟齬を来す状態となっており、しかも、同改正の解説においてその齟齬を来す部分について全く何の言及もないということは、同改正が法人税法22条2項の役務の提供に係る規定の解釈を考慮することなく行われた可能性を示唆するものであると考えます。
 一般に、立法に問題がある場合にどのような解釈態度で臨むべきかということは、法令解釈の最たる難問と言っても決して過言ではありません。
 しかも、本件は、法人税法において最も重要な規定である22条の解釈に密接に関係するものですから、なお一層、軽々に安易な結論を出すわけには行きません。

〔備考〕

 WEBコラム「法人税の所得計算の基本構造(第1回:益金の額)」で、法人税法22条2項においては、本来は役務の提供を無償又は低廉で受けた場合にも益金の額を計上することとするべきであると述べましたが、現実には、同項はそのような定めとはなっていませんので、本件のような問題が生ずることとならざるを得ないわけです。
 なお、当然のことながら、無償又は低廉による役務の提供を受けた内国法人の「受贈益の額」を含めて「受贈益の額」の全額を益金不算入とする法人税法25条の2を設けたとしても、22条2項において、無償又は低廉による役務の提供を受けた内国法人の「受贈益の額」が「益金の額」となるという解釈を採り得るようになるわけではありません。

5.実務対応

 例え法令の解釈が難問であったとしても、現実の実務においては、何らかの選択をしなければなりません。
 上記2のようなケースにおいて現実に何らかの選択をしなければならないという状態になった場合には、税負担の軽重を確認することと税務調査で否認されるリスクの大小を判断することが必要となるものと思われます。
 税負担の軽重という点では、上記のケースで言えば、親会社に寄附金の額を計上して全額を損金不算入とし、子会社に受贈益の額(益金の額)と費用負担金の額(親会社に対して支払うもので、損金の額となるもの)を計上して受贈益の額の全額を益金不算入とする方が全体として税負担が軽くなります。このような処理をすれば、親会社で損金の額を計上していた状態から子会社で損金の額を計上する状態に変わることになります。
 平成22年度税制改正前と同様の取扱いとなるということであれば、上記2において確認した税務処理を行うこととなり、親会社において寄附金の損金算入限度額を超過する金額についてはいずれの法人においても損金算入ができないため、その分だけ税負担が重くなります。
 税務調査における否認リスクという点では、上記4において確認した改正の趣旨及び解説の状況に加え、通達等においても資産の無償又は低廉による譲渡と役務の無償又は低廉による提供の取扱いの相違に関して全く触れられていないことからすれば、上記のケースにおいて、親会社に寄附金の額を計上して全額を損金不算入とし、子会社に受贈益の額と費用負担金の額を計上して受贈益の額の全額を益金不算入としたとしても、あまり否認リスクは高くないように思われます。
 いずれにしても、この種の問題においては、税理士は顧客である納税者に情報を正しく伝えることが必要となり、他方、納税者は自らリスクを負担して選択をすることが必要となるという点に、十分、留意しておかなければなりません。

プロフィール

税理士 朝長 英樹(ともなが ひでき)
株式会社TKC 顧問
日本税制研究所 代表理事

ホームページURL
朝長英樹税理士事務所