TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

活動事例

「種類株式」で支配権と財産権を分離、早期の相続対策と事業承継を実現

POINT

  • 相続による株式分散の可能性から、早い段階で自社株式の承継が必要
  • 自社株式の承継は早期対策が必要な一方、経営権は中長期的に移譲したい
  • 財産としての株式は早期に後継者へ承継
  • 種類株式(黄金株)・属人的株式を付与することで現社長の支配権は維持

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I社は社長が65歳、兄弟が3人おられる中で次男のY氏を後継候補として決定されました。一方で、社長の財産は会社関係の自社株式や工場敷地などが大半であり、このまま相続が発生した場合には財産が兄弟に分散する可能性が高く、会社経営に支障をきたすことが懸念されました。そのため、親子関係が良好であり、リーマンショックの影響で自社株式の評価額が高くない現段階で、早めの対策を講じる必要がありました。

現社長は、次期社長としてY氏を信頼しているものの、経営者としての教育にはあと5年はかかると考えておられ、株式を譲り渡すことについては時期尚早だと考えておられました。そこで当事務所が立案した対策は、財産としての株式は評価額が低い今のうちに贈与・譲渡によって後継者に相続させ、一方で支配権維持のため、現社長に一定の拒否権を持つ種類株式(いわゆる黄金株式)を発行することでした。

ただし、種類株式を現在の会社で発行することは、現社長が後継者を信用しておらず院政を引くとの意思表示と捉えられかねない懸念がありました。そこで、将来的な相続対策の意味合いも含め持株会社を設立し、その持株会社で黄金株式を発行することとなりました。そのため、黄金株には役員の選解任・増減資などに加えて、子会社株式の議決権行使も付加し、現社長がすべての意思決定に関与する形態を維持できることになりました。また、代表者に対し通常の議決権の10倍の議決権を付与する、いわゆる属人株式を発行しており、承継途中においては現社長が議決権でもマジョリティーを保持できる体制を構築しました。

なお、黄金株式については非常に強力な権利を持つ株式であるため、散逸した場合に大きな問題となります。そのため今回のケースでは1株しか発行せず、なおかつ10年が経過した時、あるいは現社長が認めた時(または死亡時)には会社が一定額で取得し消却する定めとしました。黄金株式と属人株式については、それぞれどちらかではなく、場合によってはそれぞれを組み合わせることで、相続により兄弟に株式が分散する中でも、安定的な経営権を保持できる体制が構築できると考えられます。I社社長もこんな便利な制度が普及すれば、中小企業の事業承継がもっとスムーズに進むだろうというご感想を持たれていました。