株式会社黒田電気商会

黒田電気商会は千葉県内で電気工事業を40年以上にわたり営む企業。2017年5月には本社を移転し、新社屋を竣工した。金融機関から円滑に設備投資資金を調達できた背景には、巡回監査に基づく信用力の高い決算書が欠かせなかったと黒田佳孝社長は明かす。

信頼関係を積み重ね地域の電気工事に注力

──ことし8月に45期を迎えたそうですね。

黒田佳孝社長

黒田佳孝社長

黒田佳孝社長 私の父である黒田幹夫会長が船橋市で電気製品販売店を興したのが当社のはじまりです。商品の取り付け、施工工事から事業を徐々に広げ、会社を千葉市に移転した後は、市内の公共工事も請け負うようになりました。

──近年の主な施工実績を教えてください。

社長 規模の大きい案件としては、地元の学校の冷暖房設備や照明設備に関わる電気工事、動物公園内の電気工事などに携わりました。その他、自動車販売店の高圧ケーブル改修、電話設備工事など民間企業からの受注もあります。工期はだいたい4カ月から長くて半年ほど。公共工事は民間工事に比べると利益を見込めやすいとはいえ、景気が上向いていた時期よりも利益額が縮小しています。そのため、適正価格で入札できるよう、地元の同業者組合が主催する講習会に社員も参加し、積算技術を磨いています。

──公共工事の割合は高いですか。

社長 従来は7~8割を占めていましたが、民間工事の比率を高めている最中で、前期は5割ぐらいに引き下げられました。従来のメインの受注ルートは、施工実績を評価いただいた取引先からの紹介や入札でした。幸い、堅実な仕事ぶりが評価され、先代社長の時代からお付き合いをしているお客さまも少なくありません。営業による受注活動の強化が今後の課題です。

──講習を受講した効果は?

社長 積算基準に関する最新の知識を学び、理解がいっそう深まりました。私自身、スプレッドシートを活用して簡単な積算ソフトを組んだりしていますが、数字の裏側にある根拠を読み解くという点で、会社経営に通じる部分があると思います。

──もともと会社を継ぐ意志はありましたか。

会社外観

社長 幼いころから自宅に職人さんが出入りしたり、働く父の背中を見て育ったので、いずれ電気工事をしてみたいという気持ちはありましたね。入社後、現場で父や先輩社員からいろいろな指導を受けながら、電気工事の技術を身につけてきました。当時は地場の工務店からの依頼もまだ多く、住宅や店舗の内外装工事、地元小学校の改修工事などを行いました。
 現場では工事が終われば感謝の言葉をかけてもらえるし、それがやりがいにつながっていました。でも現場の仕事と会社経営は全く別物です。現場作業が好きだったため、ずっと現場で働きたいと思っていましたが、父が60歳を迎えたのを機にバトンタッチされました。2005年のことです。

──当時の経営状況は?

社長 ひとことで言うと、どんぶり勘定。自分なりに現場ごとに発生する人件費や材料費などの原価を管理していたつもりでしたが、工事が完成すると予想ほど利益を確保できなかったケースも多々ありました。経営状態を直感で判断し、給与や取引先などへの支払いに追われるような状態でした。

税理士事務所との関係を一変させた月次巡回監査

──2014年に顧問税理士を変更されたと聞きました。

社長 地元の法人会に税理士を探していると相談したところ、内藤和夫先生を紹介されました。従来の顧問税理士は決算申告時に面会するぐらいで、当時使用していた会計ソフトの入力方法に関する質問も電話やファクスによる対応が主でした。

黒田友美子経理担当

黒田友美子経理担当

黒田友美子経理担当 立て続けに税務調査に入られた時期があり、やましいことは何もしていないのに、なぜターゲットにされるのか釈然としないところがありました。税務調査があるとさまざまな対応に追われ、1カ月くらい業務がストップしてしまうんです。

内藤和夫顧問税理士 会計ソフトへの入力は当時から黒田友美子経理担当が行っていましたが、決算申告をこなすための単なる入力ソフトという位置づけでした。数字を毎月確認して、経営に生かすという発想はなかったわけです。

──それで、内藤先生と顧問契約を結ぶと同時に『FX2』に切り替えたわけですね。

社長 はい。毎月内藤先生に巡回監査に来ていただき、会社の業績や税に関する知識をわかりやすく説明してもらっています。《変動損益計算書》で常に最新業績を把握でき、売上高を前年同月と比較するなど、会社の数字に対して以前よりも敏感になりました。

──仕訳入力などの使い勝手はいかがでしょう。

黒田 以前使用していた会計ソフトの仕訳入力画面と大きな違いはなかったため、戸惑いはありませんでした。何より月次監査で内藤先生に疑問点を直接質問できるし、先生の事務所に電話し操作方法などを尋ねると、職員の方が懇切丁寧に教えてくださるのがとてもありがたいと感じています。

社長 内藤先生とはふだんから気軽にコミュニケーションをとれるため、顧問税理士との関係が緊密になりました。以前と180度変わりましたね。

──『FX2』による自計化の効果をどう感じていますか。

社長 会社を移転するにあたり、土地を購入するためまとまった資金が必要になり、金融機関に融資を申し込みました。月次監査を経た信用力の高い決算書や5カ年経営計画書を提出し、スムーズに資金を調達でき、ことし5月に新社屋が完成しました。内藤先生のご指導により、月次決算体制を構築できたおかげだと感じています。月次監査後の試算表を金融機関に毎月提出し、高い評価をいただいています。

顧問契約1期目から書面添付を連続実践

社内に掲げている書面添付実践の表敬状

社内に掲げている書面添付実践の表敬状

──自計化に加え、書面添付(※)を続けられています。

社長 内藤先生と顧問契約を結んで以降、決算申告時には欠かさず行っています。当社は7月決算で、顧問契約を締結し『FX2』に移行したのが4月。期中でのシステム切り替えになりましたが、申告時には書面添付を行いました。先日「書面添付3年連続」の表敬状をいただいたばかりです。

内藤 顧問契約当初、帳簿の内容を確認したところ、健全な経営を行われていました。税務調査で指摘されていた仕掛品や棚卸しの処理に関しても、翌期での解消を見込めたので、書面添付を行う上で問題はありませんでした。

──毎月巡回監査を行われているからこそですね。

社長 『FX2』に切り替えてから期中に業績を把握でき、経営全般のアドバイスをいただきながら対策を検討できるようになりました。

内藤和夫顧問税理士

内藤和夫顧問税理士

内藤 巡回監査時には『巡回監査支援システム』を活用し、仕訳をもれなく確認するとともに、勘定科目の顕著な増減事項などを報告書に印刷しています。社長が巡回監査に立ち会えないときは、経理担当者から報告書を提示していただき情報共有を図っています。

──抱負をお聞かせください。

社長 現状、現場ごとに発生する費用をスプレッドシートに入力し、個々の工事の損益状況を把握していますが、今後『DAIC2』(建設業用会計情報データベース)で原価管理をおこなう予定です。現場別の損益と会社全体の業績をシステム上で確認できれば、よりリアルな数字を把握できると期待しています。入力担当者の交代時も、スムーズな引き継ぎが可能になるでしょう。受注した仕事を単にこなすだけでなく、地域社会に貢献しているという自覚と誇りを持ち、従業員ともども精進していきたいと思います。

※「書面添付制度」とは

 税理士が申告書作成にあたり次のような項目について、添付書面に記載します。
  1. 関与先にどのような資料、帳簿類が備え付けてあり、どの帳簿類を基に計算し、整理し、申告書を作成したか。
  2. 今期大きく増減した科目の原因及び理由。
  3. 関与先からどのような税務に関する相談を受け、回答したか。
  4. 税理士として関与先の申告書内容について、どのような所見を持っているのか。
 書面添付をすると、調査対象となる前に、税理士に記載内容についての意見を求められることがあります。これを「意見聴取」と言います。この意見聴取で疑問点が全て解決できれば、調査省略となります。また、調査に移行したとしても、既に調査を行うテーマが分かっており短時間で終了するのが殆どであり、税理士・関与先ともに負担が軽減されます。
日本税理士会連合会「書面添付制度をご存じですか?」より引用

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社黒田電気商会
創業 1971年6月
所在地 千葉県千葉市稲毛区穴川町382番地5
社員数 6名
URL http://kurodadenki.co.jp/
顧問税理士 内藤和夫
税理士ないとう事務所
千葉県八千代市勝田台2-6-5 石橋第2ビル3F
TEL:047-486-5352
URL:http://www.tkcnf.com/zeirishi

掲載:『戦略経営者』2017年11月号