神奈川県・伊勢原工業団地の一角を占める三光工業。二代目社長である中辻和夫氏(49)は「好きな言葉は進化」と語るとおり、特許技術に裏打ちされた精密な製品作りを武器に、念願であった自社開発の製品販売を成し遂げる。製品作りと同様、緻密な分析を行っている業績管理の着眼点について中辻社長と顧問税理士の吉野太氏に話を聞いた。

高精度の製品作りに特許技術を投入

三光工業:中辻社長(中央)

三光工業:中辻社長(中央)

――板金を使った製品作りを手がけられているそうですね。

中辻 主にデータを保管するサーバ機の筐体やラックの製造を行っており、業務内容を一言で言えば鉄板を機械加工して製品に作り上げていく仕事です。今年で創業56年目を迎えました。
 当社の特徴点は、精密板金業界ではいち早く最先端の機械を導入し機械化をすすめたことです。溶接組立を行う、大型天吊走行ロボットを保有している中小企業は何社もないと思います。そのような最新の設備と独自技術を組み合わせて、高精度な製品を提供しています。

――独自技術とは…。

中辻 当社製品には軽く剛性に優れた金属でできた角パイプを部品として使用しており、特許技術である「角パイプ一筆書き工法(フィッツ工法)」という工法を取り入れています。
 この工法の優れているところは、一本の角パイプにV字型の切り込みを入れることにより簡単に手で折り曲げられ、他の角パイプとの接続溶接箇所を少なくできる点で、丈夫で精度の高い製品作りにつながっていると自負しています。
 現在の事業の柱はサーバ機やハードディスクを収納する情報機器筐体等の製造で、売上の50%を占める主力製品です。メーンの取引先である日立製作所様より優良協力企業として、昨年感謝状をいただきました。

――基礎技術がしっかりしているから様々な製品づくりに応用できていると…。

中辻 お客様からのオーダーは、ミクロン単位の精度が求められますが、当社にはそのニーズに対応できる精密板金加工技術があります。ただ、特許にも期限がありますから、常に新しい特許技術を生み出して優位性を保っていかなくてはならないと感じています。
 実は3年前に、神奈川産業振興センターから講師を派遣してもらい特許の勉強会を約半年間にわたり、2週間に1回開催してもらいました。その社内勉強会を通して知的財産戦略について学び、新たに特許を出願できる製品開発を始めたのです。
 その成果として完成した新製品が19インチラック「SD-01s」というサーバラックです。時代の流れとして、データをサーバ経由で保存する機会が今後増えていくと考え、今まで培った技術力を活かして画期的な製品に仕上げました。

――どのような点が画期的なのでしょうか。

中辻 使い勝手の良さと耐震性を両立させた点ですね。通常サーバラックは8本の柱で全体を支えていますが、この製品は外側の4本の柱が無い分、省スペースで、かつ配線作業を効率よく行うことができます。また外枠に柱を持たない構造ながら、860キロ搭載で阪神・淡路大震災級の地震の1.2倍にも耐えられる強度を持っています。
 当製品は開発から製造、販売まで一貫して当社で行っており、自社製品を製造することが長年の夢でしたので、それを実現できたことは非常に大きい。採用されている“フレームレス構造”は現在特許出願中の技術です。今後、当社の看板製品としてバリエーションも増やしていきたいですね。

緻密な資金管理の要は日々の正確な伝票入力

――吉野税理士と顧問契約を結ばれたいきさつを教えて下さい。

中辻 当社はコピー機の高精度大型フレームを主力製品として製造していた時期があり、4色のインクが収まった別々のドラムを高速で回転させても色ずれやにじみがでないという革新的な技術を用いた製品でした。
 ピーク時は様々な機種を日産500台ほど量産していましたが、取引先であった大手コピー機メーカーが生産拠点を徐々に海外に移していき、それが引き金となって経営状態は悪化。平成13年に民事再生法の適用申請をするに至りました。吉野先生と出会ったのはその翌年です。
 当時、私は伊勢原青年会議所の理事長を務めていましたが、先生がその一員として熱心に活動をしているのを見て、信頼できると感じ色々と相談をしたことがきっかけです。すでに民事再生終結の決定をいただき事業は立ち直っており、先日ある金融機関の方から「民事再生後、ここまで成功した会社はない」とお墨付きをいただいたほどに業績は順調に回復していったのですが、それは吉野先生による熱心なサポートのお陰でもあります。

――『戦略財務情報システム(FX2)』導入のきっかけは?

中辻 吉野先生の事務所が毎年開催されている経営革新セミナーに出席し『FX2』の機能について知り、ちょうど私が社長に就任する時期に重なったこともあって導入に踏み切りました。
 『FX2』を利用する前は経理担当の社員が様々な帳表を参考にしながら紙の伝票に取引を記入し、市販の会計ソフトに入力していたので、経理業務の省力化が前々からの課題でした。父親である先代社長は技術力を生かして事業を拡大してきましたが、私は当社の経理担当役員を務めていたころから内部管理体制をしっかり固めることが重要であると考えていました。

吉野 社長は計数管理を非常に重要視されており、ピアツーピアでつないだ『FX2』をもとに日々業績を細かくチェックされています。

――『FX2』で主にチェックしている資料は何ですか。

中辻 《勘定科目残高一覧》の推移表をよく見ています。当社は手形取引を一切行っていないので、資金の流れをしっかり把握することが肝心です。特に注目しているのは人件費と製造原価の動きです。この2つの科目の変動をチェックすることで、次月の損益をおおよそ予測することができます。『FX2』から出力される資金繰り実績表を基に100万円単位の日にちごとの資金繰り表も自社で作成し、毎日の現預金の入りと出を押さえています。

――となると日々のタイムリーな伝票入力が重要ですね。

中辻 奥さんが前日の取引を日々入力してくれています。毎日コツコツ入力することが一番大事で、あらゆる業績分析の基盤です。

吉野 仕訳枚数も相当数ありますが、奥様には非常に正確な伝票入力を行っていただいています。巡回監査支援システムを使って毎月監査をしていますが、仕訳に関する指摘事項で訂正をお願いすることも最近は少なくなり、監査時間が減りました。

全社員対象の会議で最新の業績をオープンに

――巡回監査時はどのような話をしているのですか。

中辻 経営計画に対する進捗具合や業績見通し、新たな計画について話をすることが多いですね。新たに購入する資産の支払方法や資金繰りの見通し、人員計画などです。当初立てた計画通りに業績が推移しているかを「社長メニュー」でチェックしています。毎日『FX2』で最新業績を確認しているので、前日までの業績推移と期首に立てた計画を基に、月末や決算時の着地点はだいたい予想ができますね。

吉野 『継続MAS』の中期経営計画策定メニューで作成した5ヵ年の計画の初年度計画を『FX2』に予算登録し、毎日の伝票入力をしっかり行い予実管理をされています。それが社長の非常に正確な業績予測に結びついています。

中辻 5ヵ年中期経営計画は資金繰りも含めて細かく作っています。設備投資を行う際、資金が不足しないか、売上が伸びそうなので社員を新たに採用しようなどといったことを考えながら、金型販売部門、製造部門など部門ごとの予算を積み上げ、計画に落とし込んでいきます。
 さらに減価償却費の計算や借入金の返済予定などを基に、向こう10年間の経営計画も独自にスプレッドシートを使って作成しています。巡回監査時に限らず、経理上の疑問点や事業計画の内容など、日ごろから先生と電話で相談することが多いですね。

――四半期ごとの業績検討会は開催されていますか。

中辻 特別に四半期ごとには行っていません。毎月、先生が巡回監査で訪問される時に予算と現状の差異を確認し、その打ち手について話し合っているので、それが実質的な業績検討会になっています。
 ただ当社では四半期に1回、全社員を食堂に集めて全体会議を開催しています。その場では「社長メニュー」から参照できる前年対比の月別売上高棒グラフや《変動損益計算書》をスクリーンに映して全社の経営状況について説明しています。
 『FX2』を導入する前は自分で作成した経営状況に関する資料を用いて説明していましたが、『FX2』を利用してからは売上の推移を色つきの棒グラフで表示できるので、プレゼンがしやすくなりました。

――最後に今後の事業展開について教えてください。

中辻 会社として常に進化できる、新しい取り組みを今後も行っていきます。特許出願中の技術で製造したサーバラックもその一つです。リーマンショック以降先行きが見えない厳しい経営環境が続いており、業界では海外での生産比率をあげるという話や、日本貿易振興機構(ジェトロ)に対する問い合わせも増えているという話をよく聞きますが、当社は「ユーザーとともに未来を考える」をモットーに掲げ「メード・イン・ジャパン」にこだわって、今後も国内で優れた製品づくりを手がけていきたいですね。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 三光工業株式会社
業種 精密板金加工業
代表者 中辻和夫
所在地 神奈川県伊勢原市鈴川5番地
TEL 0463-91-2222
売上高 約18億円
社員数 126名
URL http://www.sankokogyo-inc.com/
顧問税理士 吉野 太
吉野太税理士事務所
神奈川県伊勢原市伊勢原2-7-31
伊勢原市商工会館(シティープラザ)5階
0463-91-0766
URL:http://www.tkcnf.com/yoshino/pc/

掲載:『戦略経営者』2011年3月号