企業にとって、インターネットを通じた情報発信の重要性はますます高まるばかり。そんな時代の要請に応え、スカイアークシステムは、より早く、より低コストで情報を伝えるシステムを提供している。弱冠31歳の小林晋也社長と顧問会計士の竹川博之氏に、競争の激しいIT業界を勝ち抜く経営戦略と財務管理について聞いた。

ウェブサイト更新をより早く、低コストで

スカイアークシステム:小林社長(中央)

スカイアークシステム:小林社長(中央)

――主力事業の「CMS事業」について簡単に説明してもらえますか。

小林 CMSは、コンテンツ・マネジメント・システムの略で、企業のウェブサイトの更新作業などを簡単にして、伝えたい情報をより早く低コストで発信できるようにするシステムのことです。その基盤となる自社開発のプラットフォームをただ販売するだけではなく、設定代行やシステム運用に至るまで顧客のウェブ管理をトータルで支援することを目指しています。
 ウェブ社内報用システム「SKYARCSolanowa(ソラノワ)」とウェブサイト向けの「MTCMS5」の2製品がありますが、MTCMSが売上高の7割を占める主力製品となっています。

――顧客は大企業が多いそうですね。

小林 少数精鋭ということもあり当初から規模の大きな企業だけにターゲットを絞ってきました。TKCをはじめMTCMSで100社、関連ソリューションで400社に販売実績があります。

――主力製品のMTCMSですが、導入による具体的なメリットは。

小林 通常、企業がウェブサイトを更新するときには、各部署から提出された申請書に基づき広報担当者がデータをHTMLというウェブサイト用の言語に書き換えなければなりません。そのファイルを今度はサーバーにアップデートして初めて更新作業が完了します。
 MTCMSを使うことによる最大のメリットは、これらの作業を大幅に簡素化できることです。各部署が原稿をシステムに登録することによってウェブ上で申請/承認のやり取りが可能になり、テキストのHTML化やサーバーへのファイルアップデートもすべて自動化されます。当然、メールや電話などコミュニケーションコストの削減にもつながるでしょう。大規模サイトへの導入実績が評価され2010年の「マイクロソフト・イノベーション・アワード」で優秀賞を獲得するなど、各方面から高い評価を得ています。

――他社との差別化をどう考えていますか。

小林 CMS市場は、大企業向けでは数百万円以上、小規模事業者向けでは数万円からと金額にかなり幅がある市場で、無数の企業がしのぎを削っている状況です。確かに高価なシステムは掘り下げた機能がたくさんありますが、担当社員の負担もそれだけ増えてしまう。MTCMSは、大企業の使用に十分耐えうる機能を幅広く持ちながらウェブ管理の工数を削減できるのが特徴です。
 ソフトウェア単体の価格も80万円(インストール数無制限の「MTCMS Enterprise5」は210万円)と、これまであまりなかった中間価格帯であることも市場で評価されている理由の一つではないでしょうか。また、MTCMSをプレインストールしたホスティングサーバー「CMSホスティング」の販売も好調で、大企業のウェブサイト全体を管理するような大きな仕事も多くなってきています。好調な販売と竹川先生のご指導もあり、第6期は増収増益かつ過去最高の利益を達成することができました。

業績管理の重要性痛感した2年目の大赤字

――創業と同時に『戦略財務情報システム(FX2)』を導入したとか。

小林 はい。生まれ育った北海道の帯広で起業したいと考えていたところ、行政書士を通じて竹川先生を紹介されたのがきっかけです。

竹川 小林社長は偶然にも私の小中学校の後輩でした。初めて話した時は、キラリと輝く、人を惹き付ける魅力を感じたことを覚えています。

――初めから業績管理の重要性を把握していたわけですね。

小林 実はそうではないんです。当時の所長(竹川会計士の父・竹川正之氏)から「まず1年間は帳簿を自分でつけてみなさい」と言われていたのですが、「注文を増やせば業績は伸びる」と単純に考えていたので、だいぶサボっていました。案の定、忙しくなればなるほど利益が出ない。1年目はかろうじて黒字を確保しましたが、受注が伸びていたにもかかわらず2年目に大赤字を出してしまいました。そこからですね、竹川先生の厳しい指導が始まったのは(笑)。

竹川 受注価格を安易に下げていたことが赤字の要因の一つでした。社長が東京から実家に帰ってくる土日を利用して経営について喧々諤々の議論を続けたのを思い出します。損益分岐点分析や適切な工程管理の重要性、スポット受注への過度の依存を避けるため継続的な売上が必要なことなどをアドバイスしました。

――どのように黒字転換を?

小林 定期的な売上が見込める保守サービス「プレミアサポート」の積極的な提案活動をはじめました。第3期には数十万円しかなかった保守費用ですが、今では売上の約30%を占めるまでになっています。とにかく利益率がみるみるうちに伸びました。

――部門別管理を活用しているそうですね。

小林 はい。主に製品マーケティング、製品開発、新規顧客開拓などを担当している「コンテンツ・マネジメント・サービス(CMS)グループ」と、既存顧客の保守サポートを主な業務とする「ソリューショングループ」の2つに分けています。
 CMSグループは広告宣伝費や製品開発の減価償却、開発の外注費などが発生し利益率が悪化しますが、多少利益が少なくても大企業の新規顧客獲得につながれば会社全体にとっての貢献度は大きい。片やソリューショングループはほとんど内製化しているため確実な利益が出ます。このようにまったく利益の出方が違う2つのグループで部門別管理をしています。

――前月のデータはいつごろ確定するのでしょうか。

小林 市販の営業支援システム(SFS)でリアルタイムの受注動向や請求書の発行管理などを行っています。そこでまとめられた前月分の数字を毎月第2営業日までにすべてチェックし、『FX2』への入力、第3営業日の月次決算、試算表作成を経てその週の土曜日には経営会議を実施するようにしています。

――社長はどんな帳表に注目を?

小林 《変動損益計算書》と《予算実績比較表》、《部門別利益管理表》の3つが基本ですね。現在、2年後ぐらいをめどに無借金経営の計画を進めているのですが、その決断を下すためにも『FX2』は必須です。財務体質の変動も毎月チェックすることができますから。

――限界利益率の管理を徹底しているそうですね。

小林 70%という社内目標を掲げています。今期計画では新規顧客の獲得を拡大するため昨年度より悪くなっていますが、昨年は69.8%とほぼ達成できました。ソリューショングループでは全プロジェクトの原価計算を1時間単位で計算し、利益率の悪い案件がリアルタイムで把握できるようにしています。

午後8時の強制退社で人時売上高を意識する

――予算の作成方法について教えてください。

小林 まず、既存顧客に対する顧客別の提案金額を決めます。受注率から売上高を算出し、人員を割り出したうえで予算を作成します。CMSグループは、問い合わせからの受注率で売上高を計算し、外注費と仕入れを考慮して最終的な経常利益を出しています。

――財務や労務管理にも気を配っているのだとか。

小林 流動比率が気になります。170~180%であれば健全な会社といえるのでしょうが、個人的には200%を維持したいですね。
 それと、社員採用に当たっては、1人あたりの月間売上高が120万円を切らないようにしています。実は業界平均は82万円ぐらいなのですが、当社の場合、1人当たり120万円だと大体経常利益率が10%を超える水準になります。
 さらに、午後8時の強制退社で残業をコントロールすることによって、社員一人ひとりが時間当たりの売上高を意識できるようにしています。一人当たりの売上高を向上させつつ、限界利益率を70%に近づけることで、今期は経常利益率を15%まで伸ばすことを目標にしています。

――最後に今後の抱負を。

小林 CMS事業を今後3年間は全速力で愚直に取り組みたいと考えています。デバイスの多様化が予想されますが、時代がどのように変わろうと、人と人とのコミュニケーションが取りやすくなるきっかけをつくる技術を提供し続けたいですね。当社は企業理念で「帯広から世界へ」とうたっていますが、「IT大国北海道」が実現できるような、100年、1000年続く企業にしたいと考えています。

(本誌・植松啓介)

会社概要
名称 株式会社スカイアークシステム
業種 ソフトウェア開発、システムインテグレーション
代表者 小林晋也
設立 2004(平成16)年9月
所在地 北海道帯広市西八条南16丁目2-5
TEL 0155-26-0834
売上高 約2億円
社員数 18名
URL http://www.skyarc.co.jp/

CONSULTANT´S EYE
社員全員が常に目標数値を共有
監査担当 喜来聖子
税理士法人竹川会計事務所
北海道帯広市東1条南27丁目2 電話0155-22-3600
URL:http://www.tkcnf.com/takekawa/pc/

 株式会社スカイアークシステムさんは現在7期目を迎えられ、社員の方々も若く常にエネルギー溢れる会社です。そのエネルギーの源はもちろん小林晋也社長であり、社長の仕事(会社経営)への情熱が社内だけではなくクライアントや提携企業へも伝わり、発展を続けている要因となっています。

 本社が帯広、支店が東京と遠隔地である状況ですが、社長は毎月往復され各地にパワーを振り撒いています。

 初年度から『FX2』をご利用いただいておりますが、現在は月次決算の数字を翌月5日前後までにまとめ社内会議に活用するほか、『FX2』専用PC1台を設置しデータ閲覧出来るようにすることにより、社員全員で常に目標数値達成を意識するアイテムとして活用していただいております。

 現在力を入れているのが部門別管理なのですが、「販売部門」「製造部門」等のように明確な区分けが難しい現状や、社長が必要としている計数管理のための区分けをどのようにしたら良いか等、スタートである部門分けに試行錯誤し、今年度は「ソリューショングループ」と「CMSグループ」の2つの部門で管理を進めています。始めてみたものの「欲しいものとは違うのではないか」と疑問が生じ、期の途中で部門や数字の振分け方法を変えたりと常に分析が必要ですが、その時々に社長が必要な資料を提供できるよう相談は続きます。

 以前社長が数値分析の強化を要望された時、『FX4』導入も検討したのですが、会社の規模に見合わないと導入が見送られました。順調に売上を伸ばし社員数も増え、会社規模が大きくなっていくなか、経営状況の把握には今まで以上の分析が必要と考えられるため、『FX4』導入も視野に入れ、今まで以上に良きパートナーとして協力し続けられるよう、努力していきたいと思います。

掲載:『戦略経営者』2011年2月号