事務所経営

中堅・大企業支援に取り組み「攻め」の事務所経営に挑戦しよう!

中大研会員が語る

現在、約1,200事務所の会員を擁する中堅・大企業支援研究会(中大研)。発足6期目に入り、2,000グループ超の中堅・大企業に対する支援実績を積み重ねている。中大研発足当初から中堅・大企業支援に邁進している2名の会員に、支援のポイントや留意点について、経験談を交えて語っていただいた。

出席者(敬称略・順不同)
 小川はるか会員(TKC近畿京滋会)
 岩崎博信会員(TKC九州会)

オブザーバー/中堅・大企業支援研究会代表幹事
 小形文夫会員
司会/同研究会新サービス開発プロジェクトリーダー
 畑中孝介会員

座談会

ロボットにできない「挑戦」が事務所経営の大きなテーマに

 畑中 まずは、お二人の事務所の概要と地域特性を教えてください。

小川はるか会員

小川はるか会員

 小川 税理士法人アチーブメント(代表:佐藤正行会員)の小川です。京都の桂に事務所があり、職員数が現在19名。関与先は法人・個人合わせて約230件です。今年1月から創立18年目に入りました。
 事務所の経営理念は、「われわれは、税理士の使命を貫徹し、社会の要請に応えることにより、①中小企業の繁栄に貢献します、②租税正義の実現に貢献します、③税理士の地位向上に貢献します」。私たちアチーブメントのスタッフは仕事をする上で、この3本柱の理念を最も大事にしています。
 地域特性としては、2つの「京都ブランド」が挙げられます。一つは「観光都市としての京都」。世界的に見ても訴求力・魅力のある街の一つといえます。もう一つは「ものづくり都市としての京都」。京セラ、村田製作所、堀場製作所など世界に名だたる企業もあれば、1200年の京都の歴史と伝統技術を活かした伝統産業都市としての顔も持ち合わせています。どちらかというと量産型ではなく高付加価値型の会社が多いのも特徴だと思います。
 一方で、伝統産業は斜陽産業でもあります。工業地域や産業集積地域もそれほど広くなく、かつ地価も高いので、京都市から撤退する会社や廃業する会社もあるのが実態です。
 7000プロジェクトが京都で活況なのも、伝統地場産業がなくなっていくことに対する危機感があり、金融機関を含めて皆で地元企業を支えていこうという意欲の表れではないかと感じています。

 岩崎 税理士法人岩崎会計の岩崎です。職員数が20名、関与先数が230件。開業は昭和49年で、先代の父から平成16年に事務所を承継しました。おかげさまで先代の時代から残ってくれている職員も4人おりますので、若手からベテランまで、幅のある事務所になっています。
 事務所のある福岡県北九州市は、よく福岡市と比較されるのですが、福岡市は割とサービス業が多く、起業する人も多い街。一方、北九州市は八幡製鉄所に代表されるように、もともと製造業の街。新日鉄住金、安川電機、TOTOなどがあり、また老舗企業が多いのも特徴の一つです。私ども岩崎会計でも、建設業・製造業のお客さまが35%ほどあります。
 現在、私が事務所経営で最も大事にしていることは「挑戦」です。というのも、今後20年足らずで現在の仕事の半分はロボットに置き換わるといわれていますよね。それで最近ずっと、「人間にしかできない仕事は何か」ということを考えていて、気付いたのは、ロボットはプログラムされたことは緻密に正確に早く答えを導き出すことができるけれども、挑戦をしないということ。私の事務所にもお掃除ロボットが3台あって、完璧に掃除してくれます。だけど、彼らは「今日は階段を上ってみよう」とか、「今日は壁を這って掃除してみよう」という挑戦はしないんですよ(笑)。
 でも、人間は新しいことを「やってみようかな」と思って行動しますよね。そこがロボットとは決定的に違うところだと思います。コンピュータが賢くなって、事務所業務の付加価値もどんどん低くなってきている時代ですから、「新しいことに挑戦しよう!」というのが今後、会計事務所経営の大きなテーマだと思っています。

スピーディーな対応を重要視 メールは小見出しをつけて回答

 畑中 マイナンバー制度もスタートしましたし、AI(人工知能)もすさまじいスピードで進化していますから、記帳代行や決算書・申告書作成業務がなくなってしまうという時代がすぐそこまで来ていますよね。岩崎先生がおっしゃるように、人間らしく、新しい取り組みにチャレンジしていかないといけない。そこで税理士にとっての新しい市場である、中堅・大企業市場の業務拡大・関与先拡大が必要になってくる──といえるのではないかと思います。
 そうした中、お二人は以前から先進的に中堅・大企業支援に取り組まれていますが、現在の関与状況を教えてください。

岩崎博信会員

岩崎博信会員

 岩崎 上場企業グループに対するTKC連結納税システム(eConsoliTax)TKC税効果会計システム(eTaxEffect)のシステム・コンサルティングをきっかけに、同グループ内の子法人1社と税務顧問契約を締結しました。そして昨年、ありがたいことに同じ企業グループの子法人11社とも新たに顧問契約をいただくことになりました。

 小川 大企業グループの親法人に対する連結納税コンサルティングをきっかけとして、親法人と子法人1社から税務顧問契約をいただきました。さらに、まだ確定ではありませんが、同グループの子法人1社について税務顧問の打診を受けているところです。それから別グループの親法人1社で、法人電子申告システム(ASP1000R)の運用コンサルティングをきっかけに税務顧問契約をいただきました。

 畑中 順調に業務拡大・関与先拡大をされているお二人ですが、中堅・大企業支援において、最も重要視しているのは何ですか。私はレスポンスのスピードかなと思っているのですが。

 岩崎 私もスピードですね。中堅・大企業とは基本的にメールのやりとりが中心になりますが、例えば、金曜日の夕方に先方の担当者から長文メールをいただいた時、「これはメールを送ってすぐ退社したな」というのは分かったとしても(笑)、「○日頃の回答になります。ご了承ください」という返答だけはすぐにするようにしています。具体的な回答は後になっても、とにかく最初のレスポンスを早くする。これは鉄則です。

 小川 私もスピーディーな返信を心掛けています。「何でも気軽にすぐ聞きたい」というのが私に対する要望の一つなので、スピード対応をしないと存在価値がなくなってしまいますから。親法人には税務顧問の先生が別にいるのですが、「小川さんには気軽にふわっと聞けるからありがたい」と言われました(笑)。そういう、身近な存在として私を見てくださっているのはありがたいですね。

 岩崎 それから、回答時にはお互いの認識レベルを一致させることも重要だと思います。目線合わせというのでしょうか。ハイレベルな質問をいただいた時に初歩的なことから回答し始めたらかえって相手に失礼になりますし、一方で税務課に配属されたばかりの方に数年間の積み重ねがある前提で話をするのも難しい。お互いの前提と認識レベルをそろえてから話を始めたり、メールで回答したりするクセをつけるのが重要だと学びました。
 時々、「どこまで把握されているのかな」と少し不安に思うご質問をメールでいただいた時は、確認事項を含めるので返信はどうしても長文になりますね。具体的には、「前提条件の確認」というタイトルにして、メール本文には「前提」「質問内容」「回答」と必ず小見出しを付けます。先方がすべてきちんと把握されていれば、「前提」「質問内容」は飛ばして「回答」だけを読んでいただければいいので。そういう、行き違いを極力なくすための配慮は必要です。

 小川 私も、こちらの思いが誤解なく的確に伝わるようにというのは常に心掛けていますね。岩崎先生と同じように、「質問」「前提条件」「回答」「根拠条文」と小見出しを付け、何通りにも読めるような書きぶりにならないよう範囲を絞ってお答えするようにしています。もし誤解を与えて先方が間違った選択をしてしまった時は、想像できないくらいの金額の影響を与えてしまう可能性がありますから。

全担当者が支援できるよう月間標準スケジュールを作成

司会/畑中孝介会員

司会/畑中孝介会員

 畑中 ここで事務所内の体制について伺います。専門チームや、専担者はつくられているのでしょうか。

 小川 事務所内では特殊業務という位置付けで、今のところ私1人が専担者というかたちです。ただ繁忙期には、税理士資格を目指している若いスタッフにも手伝ってもらっています。「こんな会社も見られるんだ」というモチベーションアップにもつながっているようです。
 ただ今後のことを考えると、複数名体制で支援できるのが企業への安心感という意味でも、理想かなと思っています。

 岩崎 企業ごとの主担当・副担当はいますが、現在では巡回監査担当者ならば全員が中堅・大企業支援ができるような体制を整えています。
 中堅・大企業支援開始当初は数人の特定メンバーだけが取り組んでいたのですが、今回、子法人11社の税務顧問契約をいただいたことをきっかけに、ノウハウや知識は事務所全体で共有させた方がいいと考えました。そこで、もともと所内には職員の評価基準として400項目に及ぶ「力量評価項目」があるのですが、今後、ここにプラスアルファの力量として、連結納税の項目を加えていこうと考えています。
 もう一つ、全員支援体制づくりの一環として月間標準スケジュールを作りました。月初に研修受講など「仕入」を済ませ、6~7営業日あたりは四半期決算、その後は通常の巡回監査業務を行い、25日くらいから月末までに月次決算を終わらせるというものです。最初はスケジュール通りに進めるのが難しかった職員も、意識することで前倒しできるようになっています。

「すぐに伝わる文章力」が重要 相手の立場・忙しさにも配慮を

 畑中 中堅・大企業支援において、注意していることや「ヒヤリハット」事例などがありましたらご紹介いただけますか。

 岩崎 メールもそうですが、文章や資料の表現力を高めることは大事だなと感じます。初めての連結納税コンサルティングでは、職員が苦労しながらも一生懸命検証報告書を作成してくれたんですね。私もレビューを繰り返して、装丁やフォント、余白など、細かいところにまでこだわって検証報告書をまとめました。
 その甲斐あってか、検証報告書を提出しに行った時、経理のしかるべき地位の方が報告書を開いて、ぱっと見て、すぐにマーカーを引き出したんですよ。その瞬間、「やった!」と思いました(笑)。書いてある内容がすぐに相手に通じたわけで、これはうれしかったですね。

 小川 文章力や、相手にすぐに伝わる内容になっているかどうかというのは本当に重要ですよね。私の場合、初めての検証報告書を作成した時は、張り切って電話帳くらいのボリュームのものになったんです。それで、自信満々で「どうだ!」と思って提出したら、先方はちらっと見た瞬間に「で、要点は何でしょう」と(笑)。ページを開いてもくれない。「全部読んでいる時間はありません。要点を教えてください」と言われて一瞬頭が真っ白になりましたが、すかさず「申し訳ありませんでした」と謝って、なんとか答えて事なきを得ました。この時は冷や汗をかきましたが、最初にはっきり言ってくださったおかげで、とっても勉強になりました。

 岩崎 相手への配慮は必要ですね。例えば、初回訪問時に気合いを見せようと思って大人数で行ったんです。そしたら、「できたら次回はもう少し少人数でお願いします」と言われました(笑)。上場企業はセキュリティーが厳しいので、あまり大人数で行くと、登録手続に負担がかかるようなんですよね。

 畑中 セキュリティーというと、情報管理の面ではどうでしょう。所内でのルールなどはありますか。

 岩崎 インサイダー取引に抵触しないよう、職員全員からの念書はもらっています。株そのものの購入・保持を制限しているわけではありませんが、常に自覚を持つようにということは厳しく言っていますね。

 畑中 確かに、上場会社では組織再編が多く、億単位の数字が動きます。「偶然知ってしまった」では済みませんから、関与している企業が子会社であっても、その親会社の株は買わないなど、注意は必要になりますね。

座談会

人事異動の多さが信頼関係構築のチャンスにも

 畑中 もう一つ、中堅・大企業ならではのこととして、頻繁なジョブローテーションが挙げられますね。信頼関係構築・維持の難しさを感じることはありませんか。

 小川 上場企業グループの異動の多さが、逆にチャンスになると感じたことがあります。昨年2月に子法人向けの税務セミナーを初めて開催して、隔年開催しようというお話をいただいていました。それが子法人からの要望で、毎年3月初旬に開催することになりそうです。
 上場企業グループでは子会社も含めて異動がすごく多いので、毎年メンバーが替わりますし、知識や経験が不足している人が配属されることもあります。そうした中、グループ全体で一定のレベルを保ちたい、けれども親法人が全子法人をサポートするには物理的にもコスト的にも限界がある──という背景があるようです。
 こちらとしても、毎期どの子法人の担当者が替わり、どれくらいのスキルをお持ちなのかが税務セミナーの反応を通してある程度分かるので、5月の入力相談会で重点的なサポートが可能になります。それに定期的に子法人との接点を持てるのは、子法人との関係づくりの面でも本当にありがたいことだと感じています。実際、昨年の税務セミナーでの対応がきっかけで、子法人への税務顧問就任のお話をいただきましたから。

 畑中 上場企業グループでは縦・横のつながりが結構強いですから、親身な対応を続けていると、口コミで業務拡大・関与先拡大へと発展していく可能性があるということですね。

四半期ごとの意見交換会が「本音でのお付き合い」に発展

 畑中 その他、上場企業グループを支援される中で気付いた点がありましたら教えてください。税理士の活躍しどころなどについてはどうでしょうか。

 岩崎 厳しい話ではありますが、税理士の顧問料や社内人材育成の費用までを含めた、グループ全体の税務コストを最適化しようとする大きな流れを感じています。「そこまで切り詰めるのか」と内心驚きましたが、地元税理士さんとの良好な関係性やすでに走り始めている計画があったとしても、いったん白紙に戻して徹底的に検討し直す。それでも全体の税務コストが下がればいいということです。
 また、「社内では今いる方は定年まで活躍してもらうけれど、それに次ぐメンバーはもう育てません」とはっきり言われました。属人化を排除する流れも手伝って、一般的な業務はシェアードサービス会社に移管し、専門的な部分は岩崎会計さんにすべてお願いしますと。仕事量もきっちり最適化しようというわけです。私にとっては、専門家としての存在感の発揮を期待されているわけですから、うれしい反面、非常に厳しい世界だなと思いました。
 現在は、子法人11社への関与準備として、シェアードサービス会社の方と打ち合わせをしながら、グループ全体の基準統一に向けた検討を重ねているところです。上場企業グループですからスキルが高い方ばかりなのですが、グループ子会社間で基準が少しずつ違ったり、地方税の申告内容が間違っていたりしたこともありましたので。交際費の判定基準や、消費税の課税区分などを少しずつ整理しています。

 小川 作業量や人件費など、常にコスト対比をしながらアウトソーシングしようという傾向は私もすごく感じます。親法人の場合、税務顧問は別にいますので、セカンドオピニオンとしての立場で意見を求められる時はありますね。逆に子法人の場合は、税務顧問契約をしているので一緒にルールづくりから考えてほしい、と言われることも。要求される役割が親法人と子法人では全然違うのを感じます。

 岩崎 もう一つ気付いたのは、上場企業グループにとっては月次巡回監査が歓迎されないケースがあるということ。子法人11社への関与のお話をいただいた時、最初は月次巡回監査を提案したのですが、先方はそこまでのサービスを望まれていなかったんです。相手の要望をヒアリングしながら提案内容を徐々にそぎ落としていきましたが、もし中小企業と同じように「月次巡回監査が前提です」と押し通していたら、交渉のテーブルには着けなかったと思います。
 上場企業であれば専門知識を有している方は必ずいますし、内部統制もできているし、税務コンプライアンスへの意識も高い。飯塚毅TKC全国会初代会長が言われた「巡回監査省略の三要件」が満たされているということで、最終的には私も納得しました。

 小川 ただ、巡回監査をしない分、サービスの不足を感じさせないようにどうお付き合いしていくかは課題の一つではありますね。サービス内容を限定して、これ以上はすべてオプション料金をいただきます、という契約形態であれば明確ですが、そうでない契約の場合はどうタッチしていくのが一番いいのかなと。

 岩崎 確かに、巡回監査をしない分、企業との関係性は疎遠になりがちです。ですから、懇親会や反省会など、あえて接点を増やす機会を作った方がいいと感じますね。
 そこで、私の事務所では、四半期決算後にシェアードサービス会社の方3名に事務所に来ていただいて、反省会をしています。PDCAの「CA」をとって、「CA会」と呼んでいます。これは、もともと見積工数と業務内容とを検証する機会として年1回開催していたものですが、いまでは四半期に一度、業務内容の見直しや改善策などについて意見交換する場になっています。意思疎通もよく取れるようになり、本音でのお付き合いもできるようになりました。

組織再編・M&Aの経験が中小企業の相談にも活きていく

 畑中 中堅・大企業支援に取り組んで得た成果としては、どういったものがあるのでしょうか。

 岩崎 事務所全体の自覚とレベルが上がっています。地元経済の中心企業の成長に携わることができている、というのは皆誇りに思っていますね。事務所収益としては、中堅・大企業支援業務で月次報酬の20%を占めるまでになりましたから、今後はもっと拡大させていきたいと思います。

 小川 私個人のことでいうと、以前は組織再編にかなりの苦手意識があったのですが、今関与している企業グループは子法人が40社超あり、毎年必ずどこかが再編しているので、自分にとってのハードルはかなり低くなったと感じます。それから大企業の人たちと税務の話をするのは、ある種の情報戦のようなもの。情報収集能力や、新鮮で正確な情報をどれだけ分かりやすく伝えるかというスキルは上がってきたと思います。
 事務所全体では、中堅・大企業支援業務で培った私の経験や知識を、他の関与先の相談案件に活かすことができるようになってきました。
 例えば、中小企業でも、高収益体質の企業には金融機関や証券会社、コンサル会社などからM&Aや組織再編にまつわる提案書が舞い込むことが多くなっています。社長から巡回監査担当者にご相談があった時、巡回監査担当者の相談に乗ったり、提案時に私も同席したりするようになっています。巡回監査担当者の武器が増えていくことにもなりますので、良い相乗効果が生まれているといえますね。

新サービス開発プロジェクトを中心に会員への支援体制を強化

 畑中 お二人から先進的な事務所の支援事例をお話しいただきました。地方創生が叫ばれていますが、雇用維持も含めて今後カギになっていくのは地方の中堅企業ではないかと考えています。そこで、上場企業支援で培ったノウハウを中堅企業支援にも活かせる常勝集団となるべく、中大研では、「新サービス開発プロジェクト」において業務拡大・関与先拡大に向けた支援策を今後講じていく予定です(下記表)。
 最後に、これから中大研に参画しようとお考えの皆さまに向けたメッセージがありましたらお願いします。

 岩崎 中大研の研修会や勉強会は充実していますし、実際にしっかり勉強している方は多いのですから、あと必要なのは所長の意欲と勇気です。たくさん勉強しても、実務で活かさなければもったいないです。
 それから、TKCからシステム・コンサルタント就任のご紹介をいただいた時、断ってしまう方もいると聞いていますが、声掛けをいただいたということは「できる事務所」と評価されていると思って取り組んでいただきたいですね。それに、100%準備が整っていないと依頼を受けてはいけない、というわけでもないと思うんです。7割くらい用意ができていれば十分だと思いますし、あとはTKCの社員や私たち中大研会員の仲間もできる限りサポートしますから。

 小川 いち会計事務所だけで行う中堅・大企業支援は砂粒の一つに過ぎないのですが、全国で中大研に参画される方が増えて、中堅・大企業支援に携わるTKC会員の数が多くなればなるほど、TKC全国会の存在感も大きくなっていくはず。そうすれば、大規模税理士法人にも負けない組織力と訴求力が発揮できるはずだと信じていますし、それが私の原動力にもなっていますので、ぜひあとから続く方にも同じ志を持って頑張っていただきたいなと思います。

 小形 現在、約1,200人の中大研会員が2,000グループ超の中堅・大企業を支援しています。ただどうしても東京近郊が多いので、多くの方に中大研に参画いただき、中堅・大企業支援の輪が全国に広がっていくようにしたい。数自体は順調に伸びていますので、今後は質の向上も重要です。中大研としても、新サービス開発プロジェクトを中心に会員への支援体制を強化していきますので、2件目、3件目と積極的に手を挙げていただき、ノウハウの蓄積・共有に努めていただければありがたいと思います。

■新サービス開発プロジェクトにおける業務拡大・関与先拡大支援活動■

対象 活動方針・内容
大企業の
子会社
システム・コンサルティング業務で信頼関係を構築し、課題のある子会社との顧問契約締結
→上場親会社にPRするツール(支援事例、困っていることはないかという課題解決PRリーフレット)作成。『TKC会報』での関与先拡大事例紹介。システム・コンサルタント情報交換会等でのノウハウ共有。
中堅企業の親会社 日本政策金融公庫様(中小企業事業)、中小企業投資育成様との協業による相互紹介
→支援事例の紹介(TKCグループHP)。事例勉強会の開催を中心に地域展開する中で、経営者の会や投資先向けの営業セミナーへの講師派遣。

面倒だからこそチャンスがある 目に見えない副次効果は大きい

 岩崎 最後に一言だけ、いいですか。私は事務所経営において「採算がとれるかどうか」といった短期的な視点であまりものを考えないようにしています。
 確かに、この中堅・大企業支援業務は手間がかかるし、面倒くさいと思う時もあります(笑)。すぐに関与先拡大・業務拡大という成果に結びつくかどうかは正直未知数ですが、面倒と感じた時がチャンスだと思ってほしい。自分が面倒だと感じているということは、皆面倒なんですから。そんな時こそ、一日も早く取り組んでほしい。その方が、経験値とノウハウが事務所に蓄積しやすいはず。新たな分野に積極的にチャレンジして、事務所の付加価値を高めていきましょう。

オブザーバー/小形文夫会員

オブザーバー/小形文夫会員

 小形 いまの言葉は本当に的を射ていて、たとえ現時点では収益に見合っていなくても、仕事を通じて報酬をいただきながら多くの経験が得られるのですから授業料ですよね。この感覚は「自利利他」の理念に集うTKC会員ならではのものです。それに、いまは中小零細企業でも、将来上場を目指したいと考えている経営者は多いはず。企業の成長過程や理想像を考えていくと、やっぱりわれわれ税理士が指導者としての立場で、中堅・大企業支援の話もできないといけないですよね。

 畑中 TKC会員だからこそ、ちょっと頑張ればできるはず。目に見えない副次効果は大きいですから、先行投資だと思って取り組んでいただきたいですね。

 小形 まさにそう。それからお二人を見ていると思うけど、やっぱり元気と前向きさが大事ですよ。企業だって元気な人に見てもらいたいですよね。一人でも多くの元気なTKC会員に、私たち中大研のお仲間になっていただくことを願っています。

(構成/TKC出版 篠原いづみ)

(会報『TKC』平成28年3月号より転載)