システム移行

安心感のあるTKCシステムに移行して経営者の親身な相談相手になろう!

コンプライアンスの重要性が高まる中、法令に完全準拠したTKCシステムへの移行を目的に入会する会員が増えている。TKCシステムへの完全移行を進める3人の会員が「すべてのシステムを活用することによって相乗効果が増す」「遡及訂正ができないので金融機関や税務当局からの信用が高まる」などの優位性を熱く語った。

出席者(敬称略・順不同)
 ・渡辺正樹(神奈川会県南支部)
 浅野雅大(中部会岐阜支部)
 ・竹内 誠(中部会豊橋支部)

司会/ニューメンバーズ・サービス委員会副委員長
 山下明宏(東京都心会)

座談会

業務品質に対する危機感を覚え
記帳代行と決別するためにTKC入会

 ──本日は他社システムからTKCシステムへ移行されたお三方にお集まりいただきました。まず、自己紹介からお願いします。

 渡辺 昭和47年に開業した事務所の2代目です。父が所長の時代は違うシステムを使っていたのですが、平成18年に代替わりをしまして、私が所長になるのと同時にTKCに入会しました。関与先数は法人が約70件、個人が約20件、職員は正社員が4人、パートが4人です。

 浅野 私はもともと銀行員で、銀行の中で税理士資格を活用したかったのですが、もっとお客さまに喜んでもらえるサービスがしたいと思い、開業を決意しました。平成13年2月にTKCに入会、同年3月に開業したので事務所は10年目に突入しました。会計事務所に勤めていた父とともに開業し、私が所長を務めています。関与先件数は、現在、法人が約50件、個人が約40件です。職員は男性3人、女性3人の計6人で、うちパートは1人です。「お客さまの喜びが私たちの喜び」という理念の下、親身なパートナーとしてお客さまに貢献し、地域社会に笑顔の輪を広めるためにスタッフ一丸となって業務に取り組んでいます。

竹内誠会員

 竹内 税理士登録と開業は平成10年6月で現在12年目を迎えています。TKC入会が平成11年9月です。その前は現事務所と同じ愛知県豊橋市にあるTKCの会計事務所に10年ほど勤務していました。お客さまは法人100件、個人が100件です。職員は私を含めて男性4人、女性4人の8人体制です。平均年齢が28歳で比較的若いスタッフでお客さまの細かいニーズにお応えしようという方針です。まもなく大学を卒業する息子が税理士を目指しているので、現在、跡継ぎの育成を視野に入れています。

 ──TKC入会のきっかけを教えてください。

 渡辺 私は父の会計事務所と別の事務所で修行していましたが、平成14年に父が交通事故に遭ったことをきっかけに勤めていた会計事務所を急遽辞めて戻ってきました。父は回復したものの事務所にあまり来ることができなかったので、何もわからないままいきなり一職員から経営をしていかなければならない立場に変わりました。最初は無我夢中で事務所を回していましたが、次第に今後のことを考える時間ができてきて、漠然と「このまま記帳代行を中心業務にしていいのか」という不安が沸き起こりました。

 そのころ、横須賀の先生にTKCについてお話を聞く機会があったのですが、それまでの記帳代行とまったく違うので驚きました。月次巡回監査なんて聞いたことありませんから「何じゃそりゃ!」という感覚でした。

 また当時は電子申告に取り組み始めて必死だったのですが、TKC会員はすでに当たり前のように実践されていたのが驚きでした。

 このような経緯から「業務品質を上げなければまずい」という危機感を覚え、記帳代行と決別するためにTKCに入会しました。

 浅野 私の場合は実は開業ギリギリまで、勤務時代に使っていたシステムの導入を考えていました。しかし、最初で最後の機会なのでいろいろなシステム会社の方にも話を聞いておこうと考えてTKCに連絡しました。私からの電話を受けて、当時の岐阜SCGサービスセンター長が事務所に来てくれたのですが、入会を強く勧めるわけでもなく「租税正義を貫ける人しかTKC入会を勧めません」と言われ、心にズシッと響きました。それに加えて、TKCにはBAST(『TKC経営指標』)があり、それまで難しかった同業他社比較も可能で経営指導をするにはもってこいということで入会を決めました。脱税を許さない開発思想と充実した研修制度も決め手となりました。

 竹内 開業したときに友人が「事務所見学会があるから一緒に行こう」ということで、浜松の坂本孝司先生の事務所にお邪魔させていただいたことが入会のきっかけになりました。そのときにFX2の自計化をかなりの比率で進められているということと、生産性が普通の事務所の倍はあるのでかなり驚きました。そのような事務所経営を目の当たりにして、これからは自計化で1人あたりの付加価値をあげて生産性を高めていくしかないと考えて入会を決意しました。

ある社長の「FX2は経営者のためのシステム」の一言で全面移行を決意

 ──TKCシステムに全面移行するにいたった転機は何だったのでしょうか。

 渡辺 お恥ずかしい限りですが、全面移行の目処がついたのはごく最近です。実際入会して2年くらいの間、移行できたお客さまはほぼゼロでした。

 というのも、TKCからいろいろな情報が届き、自分のなかでも優先順位がよくわからなくなってしまっていたのです。当時は事務所を変えなきゃいけないのに何も変わらないので焦ってばかりいました。それでSCGに相談したところ「神奈川会の他の先生も移行を経験されていますよ」と言うので、無理矢理お願いして、個別で事務所見学に行かせてもらいました。この事務所見学によって迷いが払拭され、全面移行の覚悟を決めました。

 浅野 開業時に勤務していた会計事務所の所長からお客さまを暖簾わけしていただいたのですが、そのほとんどが年1決算でした。本来は年1のお客さまも含めてTKCシステムに乗せるべきでしたが、当時は従量制の計算料がネックとなり、すべてのお客さまを移行する決断ができず他社システムを併用していました。このころは2つの会計システムの使用方法を覚えなくてはいけないため、職員も大変だったと思います。私自身も開業して数年経っているのにTKCシステムに完全移行していないということを、いつも引け目に感じていました。

 そんなとき、ある会員から「最後は所長の決断しかない」と諭されました。この言葉を契機に決算の到来したお客さまからTKCに全面移行しました。

 竹内 TKCに入会したばかりのころは意気込んでFX2の導入に取り組んでいたものの「あなたの代わりに自分で帳面を作るのだから報酬を下げてくれないか」とお客さまからたびたび言われるようになり、いつしか移行が進まなくなっていました。やがて入会時の決意も風化してしまって、せっかく10社ほど導入したTKCシステムを他社システムに全部戻し、不良会員に成り下がっていました。

 あるとき、以前にFX2を導入していたお客さまから「FX2は経営者のことを考えて作られているシステムなのに何でいまのシステムに戻したんだ!」と言われ、そのときにFX2を単なる入力マシンとして捉えていた私の視点が違っていたことに気づきました。

 それからというもの、法人のお客さまには決算終了後、全面的にFX2の導入を半強行的に進めてきました。今では継続MASと連動させて経営者会議、決算検討会を開催することによってFX2の付加価値が最大限になるように努力しています。お客さまにシステムを勉強するきっかけをいただいたことはありがたかったです。

「なぜTKCシステムなのか」毎日朝礼で訴えて職員を説得

 ──TKCシステムへの移行に向けて、どのような方針を決めて推進されたのでしょうか。

渡辺正樹会員

 渡辺 TKCに入会した当時は6人ほど職員がいたのですが、職員1人につき2件、ボリュームの少ないお客さまからとりあえずシステム移行を進めてくれという話をしました。しかし1人2件は導入できたもののそれ以上はまったく進まない。要は私の思いが伝わっていなかったのだと思います。そこで職員に納得してもらうために、事務所見学会で学んだことや「なぜTKCシステムなのか」を毎朝の朝礼で訴え続けました。

 システム移行が進み出したきっかけは、職員が入れ替わったこともあります。新しい職員は併用している2つのシステムの使い方を覚えるよりもTKC1つを覚えたほうが楽ですから、入所したばかりの職員を中心に一昨年前くらいから移行をどんどん進めてきまして、最近になってようやく終わりが見えてきた状況です。

 浅野 月次巡回監査へ移行したお客さまからTKCシステムへの移行も順次行っていきましたが、移行後当分の間は報酬を据え置きにしました。これがお客さまからの大きな反対がなく月次決算体制、そしてTKCシステムへと移行ができた理由だったと思います。全面移行を決断した後は、お客さまの決算時に粛々とTKCへの移行を進めました。トップダウンでしたが、移行が始まっても職員からの不満めいた反対もこれといってありませんでした。お客さまには過去との業績比較だけでなく同業他社比較ができ、経営上のメリットがある点などをご説明して理解をいただきました。

 竹内 いままでは決算報告会のときに「そろそろFX2を導入しましょうか」という話をしていましたが、それだと導入が1年遅れてしまうので、現在では、決算3カ月前の検討会の際にFX2の導入を促して、決算終了後、最初の月からFX2が立ち上げられる方向に持っていっています。

 また、月曜の朝礼時には、職員に立ち上げ支援の進行状況を必ず報告してもらっています。報告義務がありますから1週間の間にきちんとやってきます。

遡及訂正ができないゆえに
金融機関や税務当局からの信用が高まる

司会/山下明宏副委員長

 ──各事務所ともさまざまな方針で移行を進めてこられたわけですが、TKCシステム活用のメリットは何でしょうか。

 渡辺 やはり安心感が絶対的に違いますね。たとえば、何かしようと思うとたいていそれができるツールが用意されています。以前は「経営計画を立てたい」っていわれても「どうやるの?」っていうレベルでしたが、いまでは「では継続MASでやってみましょう」と積極的に働きかけられるようになりました。TKCシステムを活用するようになって可能性はずいぶん広がりました。

 浅野 TKCシステムはしっかりした開発思想に基づいて作られているので、安心してスタッフに使用させられます。

 また、毎月、会計データを締め切って月次決算を行っていく決まりがあるのでお客さまも私たちも甘えることなく緊張感を持って月次決算の数字に向き合えますし、遡及訂正ができないシステムのため「金融機関や税務当局からの信用も高まりますよ」と自信を持ってアピールしています。

 最大のメリットはTKCシステムはシステム間で連動が可能なので、複数のシステムを連動して活用することによって相乗効果が増すということです。FX2TPS1000(法人決算申告システム)の連動、さらには電子申告までの一気通貫など、すべてのTKCシステムを使い切ることが事務所の基盤強化、効率化につながると思っています。

 竹内 いまお2人がお話しされた安心と信頼、これが1番だと思います。私たちの作る決算書における金融機関からの信頼感はかなり高いと思います。

 また電子申告についてもTKCシステムでなければ私は100%無理だったと思います。そういう意味でメリットを痛感しています。

 ──基本業務である巡回監査やKFS推進にどのような影響があったのかを教えてください。

 浅野 毎月の巡回監査の指導により、経理担当者の経理能力も向上し、監査が効率化され、空いた時間で継続MASのグラフなどの資料を用いたビジュアルでの報告が行えるというような望ましいスタイルができあがってきました。

 いままでは書面添付がなかなか伸びませんでしたが、しっかりとした月次巡回監査が行えるようになり、職員も徐々に書面添付に対する自信がついてきたように感じます。今後は巡回監査支援システムを活用した書面添付を増やしていこうと考えています。

 竹内 業務の標準化ができたということと、巡回監査の精度が向上したということの2点に尽きます。予算は組めていないところもありますが、業績検討会では必ず継続MASを活用しています。

 渡辺 TKCに入会して巡回監査をするようになり、些細なことでもいいから情報提供しようと努めてきて、職員もお客さまとコミュニケーションが築けるようになって自信を持ってきたと思います。それまでの記帳代行から、お客さまから与えられた宿題を一生懸命調べて情報提供させていただくという流れに変わり、職員の事務処理能力が上がりました。

 ──私も先輩会員からよくいわれたのは「所長には所長の仕事がある」ということです。つまり所長自らが巡回監査をしているうちはTKCシステムの本当のよさはわかりません。TKCシステムは実務を行う職員にとって最適なツールとして存在するのです。

「銀行から事務所を紹介してもらいました」と言われるようになった

 ──ほかにも職員や関与先等に何か変化はありましたか。

 竹内 TKCシステムの活用によって結果的に自由な時間ができました。その時間でお客さまと職員の会話も増え、些細な変化もいち早く気づけるようになってきました。

 また、地元の金融機関で経営革新のセミナーを開いている関係で支店長からお客さんを紹介していただいています。たまに直接企業の方から連絡が入るのですが、理由を聞くと「銀行さんからお宅の事務所を紹介してもらいました」という言葉をいただきます。成約するかしないは別にしてそういう話が最近入るようになってきています。

 渡辺 システム活用によって時間的余裕ができ、毎月の巡回監査で試算表を説明したり、税制改正の情報を提供したりと、いろいろな意味で職員が積極的になりました。お客さまからもこっちを向いて接してくれている姿勢がすごく伝わってくるので安心感を持っていただいているのだと実感しています。

 これからは金融機関や関与先に対して「記帳適時性証明書」もしっかりアピールしていきたいと思っています。

浅野雅大会員

 浅野 毎月金融機関を訪問しているのですが、TKCから入手した情報を提供し続けていると、支店長が替わっても、それまでと同様に、しっかりとした信頼関係が保たれたまま新しい支店長と話ができるのでTKCは本当にすごいと実感しています。やはり「記帳適時性証明書」をアピールしていますが、金融機関の方には興味を持っていただいています。

 ──最後に夢や事務所経営のビジョンをお聞かせください。

 渡辺 地元の横須賀市でお客さまの親身な相談相手としてナンバーワンのサービスを提供できる事務所づくりをしていきたいと思います。

 これから全面移行を目指す方は先輩会員やSCGに何でも相談して移行を推進することをお勧めします。

 浅野 事務所の経営理念にある通り、私も職員もお客さまの喜びが自分の喜びと感じられる人材にならなければならないと感じています。それが実践できればおのずとKFSも実践できるでしょうし、お客さまの親身なパートナーとして認められ、一層の充実感を持って仕事に取り組めると信じています。1社でも多くの会社に1年でも長く事業を継続し、さらには発展してもらい、関与先の社長が退任されるときには「浅野会計事務所に関与してもらって本当に良かった」と言っていただけるよう、サービスの向上に努めていきたいと思います。

 竹内 経営者の方々にとっての町医者的な存在になるのが私の夢なので、これからも「何かあったらすぐに竹内事務所に相談に行けば解決できる」と頼られる事務所にしていきたいと思います。

 今後はTKCシステムをフル活用してお客さまを啓蒙していくと同時に、セミナーや研修会も積極的に開いていきたいと思っています。

TKC出版 渋田正和)

(会報『TKC』平成22年6月号より転載)